「努力に勝る才能なし」

これは私の師匠でもある野村克也さんがよく使う言葉である。まさにその言葉の通り 「努力をする」という才能があれば成功者になる確率は高くなるだろう。

何事にも努力ができる人間は素晴らしい。もう56歳になった私ができる事は限られているが 若けりゃ若いほど 色んな選択肢があり、そこに「努力をする」という才能を持ち合わせれば未来は明るい。

私はこの「努力をする」という才能を伸ばせなかった。大学時代も含めて、現役時代を振り返ると、もっと努力していれば良かったと思う事が多々ある。ああすれば良かった、こうすれば良かったと悔いても悔やみきれない思いに駆られる。

年甲斐もなくこんな女々しいことを言うのは自らの恥ずべき部分である事は自覚しているが、これが何とも治らない。ただ、残りの人生は 悔いの残らない人生にしようと強く心に思うのである。

そんな中、最近、強烈に興味深い話に遭遇した。たまたまいろいろな分野の成功者に密着するドキュメンタリー番組を観ていた時である。その日はアパレルブランド「ビームス」の社長、設楽洋さんの特集だった。

その番組で設楽さんは「努力は夢中に勝てない」というご自身の座右の銘というか持論を紹介していた。彼曰く、「努力の上が夢中なんですよ。だって 努力をしてますって、ちょっと重いでしょう。でも 夢中になってますって、楽しそうでしょう」と笑顔で話していた。

なるほど!! 目からうろこである。
さらに、設楽さんは言う。「私は 今も 昔も この仕事に夢中なんです」と。それは実に楽しそうに。何とも爽快である。

その言葉を聞いて、すぐに野村さんの顔が浮かんだ。そして今度、野村さんに会ったら是非この話をしてやろう、と。

あれだけ「努力」「努力」と話していた野村さんがこの話を聞いてどんな顔をするのか見ものである。会うと必ずお説教を頂く私だが、たまにはこちらから一泡吹かせたい。努力の上がある事をお話しさせて頂き、少しだけ得意げな顔をしてみたい。

その結果どうなるかは、またこのブログ読者の皆さんにご報告します。


さて、そう言えば、タイガースの若トラ達はみんな「努力してます」っていう雰囲気を出している。「苦しい事にも耐えます」っていう雰囲気が全面に出ている。

あの設楽社長のような楽しそうな感じとは程遠い。一方で、西武ライオンズや広島カープの選手は楽しそうに野球をしているように見える。「隣の芝生は青い」かもしれないが 伸び伸び 野球をしているように映る。

是非とも、若トラ達にも野球を「夢中」でやって欲しい。彼らが楽しそうに野球をする姿が見たい。

野球にミスは付きものだ。バントミスも、サインの見落としも、エラーだってあるだろう。そんな時、暗い表情をしたって何の解決にもならない。もっと喜怒哀楽を素直に表現したら良いと思う。嬉しい時は嬉しそうに、悔しい時は悔しそうに、素直に表現する事が 応援する我々にとっても楽しく見えるのではないだろうか。

とにかく「重い」のだ。あくまで私の主観ではあるが、最近のタイガースのベンチが映し出されると、何しろ重い。

私は何もバカ騒ぎをしろ、と言っている訳ではない。

タイガースのOBの下柳剛が座右の銘としている「前後際断」という言葉がある。過去にも未来にもとらわれず、今この時に集中せよという意味で、これは沢庵禅師が説いた禅語だが これも若トラには ピッタリの言葉だ。

「失敗したら どうしよう」なんて思ってプレーしていても良いパフォーマンスができる訳がない。「打てないと2軍行きかもしれない」なんて思って 自分の力が出せる訳がない。瞬間瞬間に集中し、相手チームと戦うのだ。決して、ベンチと戦っているのではない。
まだまだ、シーズンは長い。必ず、巻き返せる。まずは 「夢中」になって野球をして欲しい。


さて、先週のタイガースは 2勝2敗。ロッテのサヨナラエラーも有り 何とか 2つ勝つことができた。ただ、「貧打」である事は間違いない。また、糸井の守備が不安定で、それに加え 雨天中止の影響も心配の種だ。唯一、先発投手陣が安定しているのが好材料だ。

そんな中、新聞には新外国人助っ人の「ナバーロ」を獲得する、という記事が出ていた。「一時しのぎ」という印象は拭えない。メディアのナバーロ評は高いようだ。

しかし、今まで前評判の悪い助っ人を獲得した事例はない。往々にして前評判は高かった。ましてやロサリオは 2月までは 最強の助っ人だと評価した評論家も大勢いる。私もそのひとりだ。

そんなロサリオがこんなになってしまった原因は 間違いなく「修正の失敗」である。調子を落とした3月初旬、何か間違った修正法を選択してしまったと私は思っている。

具体的にはあんなに左足に体重を移動してしまえば変化球なんて打てる訳がないのだ。変化球を打つ為には「ためる」「待つ」「呼び込む」という動作が必要になる。その為には右打者は右足に体重が残ってないとできないのである。

この時、左足は拇指球で地面を捉え、左足に3~4、右足に6~7の体重配分になる。この体勢で「ためる」「待つ」「呼び込む」という動作をするのだ。人によってはこれを「間」と呼ぶ。つまり、この「間」がないと変化球は打てず、ストレートしか対応できなくなるのだ。

2月のキャンプ時には確かにロサリオに「間」はあった。見事に変化球もストレートも打っていた。そのことはキャンプを見に来たファンの方々も ご存知だろう。

ところが 3月の中旬にはその「間」は無くなってしまった。もう一つ付け加えれば、この「間」というのは左打者より右打者の方が重要なのだ。左打者は入ってくるボールが多く、右打者は逃げるボールが多い為、この「間」が左打者より重要なのである。

ロサリオには 何としてもあの「間」を取り戻し、2月のようなバッティングをして欲しい。それができれば、まだまだ、優勝はあるのだ。これだけ 先発投手陣が安定しているのだ。日本一だって 大いにあり得る。

確かに「ナバーロ」が、かつてのヤクルトの助っ人、「ボブ・ホーナー」クラスの実力があるというのならば、話は別なのだが……。そこまでは期待できまい。

兎にも角にも、若トラには「夢中」で野球をして欲しい。今週のタイガース、週末にイーグルス戦がある。イーグルスには、大変申し訳ないが ここで3連勝すれば、交流戦最下位は無くなるだろう。

低レベルな話だが最下位だけはなってくれるなと密かに願っているのだ。そして、日ハム戦の初戦の先発は「斎藤佑樹」だという。今週のタイガース、大いに期待している。