どーも。

またまた、ぽてと突っ走りな出来ばえでして。色々おかしいのは目を瞑ってくださいませね。

読んだ瞬間に忘れていただきたい( ̄▽ ̄;)






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「きょ、京子ちゃんが、敦賀蓮さんの抱っこを再現…………?」

「うん、そう。再現する!私だって演技者の端くれ!どんな人だって演じてみせる!年齢性別問わず!果ては人間意外の動物だって!……………いえ、そんなのは生ぬるいわ!限界に挑戦するのなら、細菌含む生体だって!無機質だって!!なんだって!!!」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って、わかった!わかってる!……………キョーコちゃんが役者さんとしてすごいのはわかってるけど…………………………でも、さ、さすがに」
「私ね、苺ちゃんの気持ち…………わかるよ。あ、もちろん全部は無理で……………ごめんなさいだけど、でもっ、……わかる……………し、それに………なんとかしたい……………」

「京子ちゃん……………」

「私、苺ちゃんに、過去のことを克服してもらいたい。苺ちゃんが前に進めるように、私もなにかお手伝いしたい!……………そりゃあ、後ろを見てしまうのは仕方ないけど…………………でも、苺ちゃは嫌なんでしょ?負けたくないんでしょ!ね、やろうよ!私、敦賀さんを精一杯演じるから!だからどうかやらせて………お願い!」

「京子ちゃん……………」
私は、そんな京子ちゃんの熱意にほだされたのだ。


……………がしかし。


京子ちゃんは、やっぱり『京子ちゃん』だった。


京子ちゃんの、いつものスイッチオンの行為。胸元をトンと叩いて『敦賀蓮魂』を注入。そして目を開いた京子ちゃんは、なんと『敦賀蓮』だった。そのノーブルな雰囲気も、春の陽射しのような紳士然とした笑顔も、美しい所作も。でも、いかんせん。京子ちゃんは、敦賀蓮に比して小さかった。敦賀蓮と京子ちゃんとの身長差は約27cm。身長だけじゃない、私の視界に入る、京子ちゃんの『カラダ』。それは、『敦賀蓮』の肉体とは似てもにつかないもの。

オーソドックスに立ったまま抱き合った私達は、どこをどうとっても『女の子同士の抱擁』だった。

たっぷり数秒後、私の微妙な空気を感じたらしい京子ちゃんは、抱擁をバリッと勢いよく解いた。びっくりする私に、土下座を超えた『へしゃげ』をかまして、泣きながら謝る京子ちゃん。力不足でごめん、とか、今後は精一杯精進します、とか力いっぱい謝ってくれた。

ああ。京子ちゃんは、本当にいい子だなあ。

「もう、京子ちゃん。そんなに謝らないで。だって京子ちゃんは、なんも悪くないんだから。京子ちゃんが謝ることなんて何ひとつないの。」

「でも、でもっ、私なんにも……………結局何も………!」

「ううん、ありがとう!おかげでね、元気出た!」

「苺ちゃん……………」

「京子ちゃんはたくさん心配してくれた。話も聞いてもらったし……………ありがとう…………すごく嬉しかったよ。なんかもうね、なるようにしか……………ならない、かなって…………………なんとか……………ならないもんかな、あはは。」

私のそのから笑いを見て、顔を歪める京子ちゃん。

「そん、な。だって……………だって、敦賀さんの抱っこは本当に気持ちいいんだよ?セラピーなんだよ?それなのに、それなのに……………される前から恐いから仕事にならないだなんて……………せっかくのキャリアアップのチャンスを逃すなんて……………!そんなの……………そんなのって……………」

そのとき私は、京子ちゃんが私のことを真剣に考えてくれてすごくありがたいなと思うと同時に、とても気になることがあった。

『敦賀さんの抱っこは本当に気持ちいい』、ですって……………?


「…………ね、京子ちゃん。さっき、気づいたんだけど……………京子ちゃんて敦賀蓮さんの抱擁を再現しようとしたってことは、京子ちゃんは、敦賀蓮さんに抱き締められたことがあるの?」

「……………ぁ……………!、…………………………う、ん。」

京子ちゃん……………『ヤバいっ!』て顔に書いてある。

「………………ふ〰ん。で、それがすごく気持ちよかったの?」

「っぇ、……………ぁ、ぁ〰〰〰〰〰」

京子ちゃんは、目に見えて挙動不審になった。真っ赤になったり青くなったり、オロオロオロオロ……………。

「私の知る限り、二人がそういう関係の役での共演は……………ない、よね。仕事じゃ……………ないんだ?」

びくっと体を揺らしながら、「ある意味仕事…………………………だったり?……………なかった……………り?」と歯切れも悪い。

今までの京子ちゃんの言動からすると、敦賀蓮と付き合っているわけではなさそう…………………………。なのに、仕事じゃないのに、抱き締められた……………?どういうことなんだろう……………。

「………………………あ、あの苺ちゃんには、その詳細は、言えない……………というか、ま、あの色々あって、言えなくもないんだけど、……………えと、うち2回はね!私が悲しいことがあって、泣いて、で、敦賀さんが慰めるために抱き締めてくれてっ、それが、それが……………安心するっていうか、そのっ」

…………………………『うち2回』ってことは、抱擁は3回以上はあったってこと?しかも、『泣いてたから、抱き締めて慰める』?敦賀蓮が仕事に関係なくそんなことをしたなんて、一度も聞いたことないけど…………………………。へえ。京子ちゃんには、それをしたんだ。


京子ちゃんはモジモジしながら、「敦賀さんの抱っこはね、いい匂いで癒されてね」、とか。「あったかくてすごく安心してね、だから何も考えられなくなるの」、なんて話し続けている。


それらの、京子ちゃんと敦賀蓮の『サイン』から、私がなにかつかみかけたところで、京子ちゃんの携帯に着信が入った。。

敦賀蓮とそのマネージャーがLME事務所に来ていて、今から落ち合うらしい。それを聞いて驚いている私に、京子ちゃんから驚愕の告白。実は言いにくいので黙っていたけれど、敦賀蓮とはマネージャーを共有しているんのだと。私と初対面の時に、話の流れで私が敦賀蓮は「嫌いなタイプ」だと言ったので、なんだか言いづらくなってズルズルきてしまったらしい。

かなり驚いたけど、京子ちゃんの気持ちもわかるし、京子ちゃんにこれ以上謝らせるのも嫌なので、私は今日のお礼を言って、退室した。



ところが、LMEの正面玄関まで来て、先程の部屋に日傘を忘れてきたことに気づく。仕方ないので来た道を戻った。


先程の部屋にはもう誰もいないと思ってドアノブに手をかける。スウッと開けかけて、中から声が聞こえて私はそのまま止まった。


「敦賀さん、お願いします!」
あっ、京子ちゃんだ。

「お願い?」
そして、その声は、紛れもなく敦賀蓮の声だった。

「どうかわたくしめに、敦賀様の抱擁を伝授くださいませんか?」

「……………へ?」

「あの………敦賀さんは、小花苺ちゃんをご存知ですよね……………」
京子ちゃんは、敦賀蓮さんの抱擁を会得して再現する必要性について、要約して説明した。

私は、盗み聞きなんて、申し訳ないと思いながら、敦賀蓮の素の部分を垣間見れるかもと期待半分。先程つかみかけたなにかがわかるかもと期待半分で、ごく小さく扉を開けたまま、耳をそばだてた。


「……………あ、あ〰なるほど。小花苺さんが、俺に抱き締められるのを恐くなくするために、君の抱擁で慣らしてあげたいと……………。ずいぶん斬新な方法、だね。」
敦賀蓮の声は神妙であり、楽しげだ。

「……………はい……………無謀は承知の上だったのですが、やはり、あえなく惨敗いたしまして……………」

「え?もう試したの?」

「は、はいぃ〰〰。最上キョーコの分際で敦賀様を模すなどと、大変申し訳ございませんでした……………!!っですがっ、しかし!この方法しか!この方法しか…………!!」

「…………うん……………そこは俺も他に策があるわけじゃないし……………ところで、実際に俺の抱擁を再現してみて、最上さん自身は、どういう点が良くてどういう点がダメだと思ったの?」

「…………………………うぅっと……………情けないのですが、抱擁、そのもの……………かな、って。…………………………敦賀さんを演じるところまでは、まあ『敦賀蓮魂』に突き動かされるまま演じれたんですけど…………。いざ、敦賀さんの抱擁を想像しながら苺ちゃんを包み込もうとしたら、そこから違和感を感じて…………さらに苺ちゃんと抱き合っていたら、もう全然違うな…って……………」

「ふーん……………」

「具体的にはわからないんです…。でも、『違う』ってことだけはわかるんです。だから、あのナツのモデルウォークの時みたいに、敦賀さんに鍛えていただけないかなって……………。すみません。他に、苺ちゃんの苦手意識を解決する方法が思い付かなくて……………。」

「うん、俺も、最上さんの気持ちはよくわかるよ。……………今回のドラマ云々もだけど、小花さんがあのままでいいとは思ってない。いつまでも過去にとらわれているのは、彼女にとっての損失だからね。彼女が一歩踏み出す助力になれるのなら、微力ながら協力させてもらうよ。」


……………そっか……………。敦賀蓮さん、私のこと、そんな風に思ってくれてたんだ……………。ありがたいな……………。


「敦賀さん……………っありがとうございますっ!」
京子ちゃんも感激しているらしい。

「で、最上さん。その具体策の提案なんだけど。もっと研究したらいいんじゃないのかな?」

「研究?」

「うん、そう。俺、思ったんだけど、俺の抱擁を模すには、最上さんの実体験が絶対的に不足してるんじゃないかなって。」

「……………ぁ、はあ。……………と、言われましても……………」

「うん、だから、たくさん実体験してみよう。」

「ほ……?」

「俺が、最上さんを色んな角度から抱き締めるから……………俺の抱擁を体感して?」




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「はい、今読んだこと忘れて?」