どーもです。

これ……………よ、読みますか………?


ちなみに、ぽてとは、アメリカのことはわかりません!エッヘン(`・∀・´)←←←





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久遠 ver.





俺が出演しているドラマ、『Come out of dream』。

そのドラマの共演者のダグラスは、先月2人目の子供が産まれたところだ。そのため、最近は特にこのような酒の席には現れない。だが、今夜はドラマのクランクアップの打ち上げということで、仕事の一環だと言って参加していた。普段はどちらかというと硬派で物静かな印象。だが、本日は酒も入ったことと、2人目が産まれていたことで、彼の心には何かしらの波があったのかもしれなかった。


だからきっと、きっと……………。



実はその時点で、俺もかなり出来上がっていた。好調な仕事への達成感、一仕事やり遂げたあとの解放感、その代償として恋人のキョーコとは会えない現状。目の前には上等で旨く、どんどんと進む酒。そのせいか、俺の感情はひどく不安定で。それはもうとてつもなく、キョーコが恋しかった。それで、先程キョーコに電話をしたばかりだった。

日本とは13時間の時差。仕事中かもしれないキョーコに電話をすると、すぐに電話に出てくれた。今日は突然のオフだという。オフか……俺達がこんなに離れ離れでなければ会えるのに……。そう思って、だから『寂しい』と言った。『キョーコがそばにいなくてとても寂しい』と。『会いたいよ、朝まで抱き締めたい』と熱を込めて囁いた。キョーコも『私もだよ』、と応えてくれた。その声に……………たまらなくなった。脳裏に、あたたかなキョーコの体をこの腕におさめた感触がまざまざと甦り、どうしようもなく俺の体が疼く。心も体も悲鳴を上げていた。キョーコが欲しくてしかたなかった。

でも、明日もまた仕事だ。衝動に任せて飛行機に飛び乗るわけにはいかない。

こうして、キョーコと遠距離恋愛になるとわかっていて、クオン・ヒズリとしてアメリカで仕事をすることは俺が決めたことだ。キョーコはそれを受け入れて応援してくれている。だから、俺が仕事を投げ出すことも、マイナスな言葉を吐くことも絶対にするわけにはいかなかった。


そんなやるせなさと、キョーコへの恋しさに胸を焦がしていた時。たまたま、俺と社さんがローテブルを囲むようにソファに座っていたら、そのメンバーの中にダグラスがいて、彼が話しはじめたのだ。

「俺の嫁はさ、当時、それはもう女神みたいに光り輝く美しさで………まあ、今もなんだけどネ、ふふ。……………で、俺達は付き合ってはいたけれど、まわりは馬の骨だらけで。だから、彼女はいつかその中から彼女に相応しい誰かの手をとるんじゃないか、俺は捨てられるんじゃないかって、俺はいつも怯えてた。」
呻くように呟くダグラス。

『馬の骨』……………そして、『自分が恋人に捨てられる』……………そんな危惧には、俺は悲しいほどに共感できた。

突如始まったダグラスの独白はしかし、ジンという俳優が「俺も結婚願望が出てきた」と軽口をたたき、「そういえば、ダグラスは既婚者で子持ちだったな、家族ってどうだ?いいものか?」と問いかけたのがきっかけだった。

数人だけの輪は、常ではない様子の、ダグラスの話に聞き入った。


「でもさ、突如……………できた……できたんだよ……………彼女のお腹に子供が。」

「え、君達授かり婚だったっけ?」
その輪の中の一人……ジャクソンがダグラスに問いかけた。

「………ああ、そうなんだ。俺は元々そんなつもりは全くなかったなのに…………と言ったら嘘になる、けど。そりゃあ思ってはいたよ?意図せず子供ができたとしても、彼女の価値観なら、きっと堕胎はのぞまない……………産もうとするだろう…。そうすれば、お腹の子供の父親である俺と…結婚してくれるだろうって……………。…でも、彼女には未来がある。モデルとしても女優としても旬の彼女を、妊娠出産育児で縛っていいはずがない…。…………いや、それは綺麗事だ……本当はそんなことは思ってない…。……俺が、嫌だったんだ。彼女の光輝く未来を潰した男として、彼女に恨まれるのが…………。」

みんな、じっとしている。

「だから俺は、彼女を妊娠させたいと切に願いながらも、彼女が妊娠しないように、細心の注意を払っていた……………。」

「じゃあ、なぜ?」
話の発端となったジンが、疑問を口にした。

じゃあ、なぜ彼女は突如として妊娠したのか?……………俺も思った疑問だった。


「……………うん、……………彼女が……あの夜…言ったんだ…………今日は大丈夫だって……………安全日だから、だから大丈夫だって……………」

「へ………ぇ……」
ジンは、かなり驚いたようだった。

「彼女は俺に言ったんだ。安全日だから、気を遣うことはない。あなたの好きなようにしてくれてかまわないと………、そう……………」
ダグラスは、それを自嘲気味に話す。

「……………そ、そうか……………」
俺の隣で、社さんは、相槌を打っている。

後に社さんは、俺に教えてくれた。ここは、『そうかよかったな、……………で?つけずに思う存分ヤッたんだな!』と、茶化すところなのか?それとも、『君はなんでそんな辛そうにそのことを話すんだ?』と真面目に突っ込むところなのか?、と。一瞬悩んだのだと。

で、その場での社さんは、こう言っていた。
「ダグラス君……………ねえ、君はなぜ、そんなに辛そうに話すんだ………?」と。

ダグラスは社さんを見やると、相変わらず自嘲気味に笑って、応えた。
「その日は……………安全日なんかじゃなかった。」

「え?」

「彼女は何をどう間違えたのか……………その日は本当は、危険日ど真ん中だったんだ。」

「…………え〰……………、」
社さんは、小さく驚きの声を出した。

「でも俺は、柔らかく笑っている彼女に、その誤りを訂正することをしなかった。」

「……………あっと、じゃあ………」
ジャクソンが先を促す。

「俺は当時、もともと安全日だとか危険日だとか、そんなことは考えてなかった。なぜなら、いつでも危険日のつもりで………彼女だってそうだったはずだ。……なのに……安全日だから大丈夫だと言われて……………俺は…………このまま……子供を……………作ってしまおうと思った。このチャンスを逃すものかって……………!その頃、彼女は様子がおかしかったんだ。いつも何かを考えているようで………俺に何かを言いたいのに迷ってるみたいな………。……それが、怖くて怖くてしかたなかった……………だから、俺は……………」

皆、じっと固まっていた。

「……………結果……………子供ができた。」

「…………………………そのとき……彼女は……………なんて?」
ジンがきいた。

「彼女?………彼女、は…………『あなたの子供を妊娠しました。だから、お互いに責任はとりましょう。』……………と。彼女は少し取り乱した様子だったけれど、そう言われて……………。俺は、……………………妊娠させたことを…彼女に謝らなかったんだ……………」

「謝らなかっただって?」
ジンの声が、少しずつ棘のあるものになっていく。

「元々、前回の生理開始日から計算した安全日といわれるものなんて、あやふやなもので……………だから、妊娠がわかった時には、計算に誤りはなかったかどうかには言及しなかったんだ。……………結局、俺達の暗黙の共通認識として………あの日はたまたま彼女の周期が乱れた……………そういうことに……………。だから、俺も彼女も悪くない………そうやって………俺達は結婚した……………。」

「……………悪くないだって……………?そんな、だって、彼女は過失でも……君は故意だったんだろう……!?」
ジンが身を乗りだし、責めるような口調で言った。

「……………………………………………………そ、うだけど、……………でも、そこで俺が彼女に謝ったら………俺の……醜い思考がバレて、……………彼女に嫌われてしまう……………。」
ダグラスは、悲しげに答える。

「…………………………そ、んなっ、そんなことって……………!!」
ジンがたまらないとばかりに立ち上がった。

…と、両隣にいたジャクソンとトニーが、ジンの肩を軽く掴みポンポンとたたいた。輪の中の皆は、ジンの不穏な様子に薄々気づいていた。そのため、大事にならないように、ダグラスに飛びかからんばかりの雰囲気を醸し出しているジンに注意を払っていた。

もう、皆わかっていた。ジンが、ダグラスの妻に当時横恋慕していたことを。そして、いまだにその感情を引きずっていることを。

両隣から、落ち着けと慰められているジンに、ダグラスは言った。
「ごめん、ごめんな、ジン。」

ジンはダグラスの方を見ないで、ローテーブルの一点を見つめた。

「……………アサーシャのこと……………ごめん。お前がアプローチするチャンスを永遠に奪って……………ごめん……………。」

ジンはまだダグラスを見ない。

「俺は……………汚い手を使った……………。アサーシャの一生を、『命という手段』を使って絡めとった……………。」

ジンの、強く握った拳は激しく震え、力の入れすぎで白くなっていた。

「でも、でもな、ジン…………………………これだけは言える……………。もう、アサーシャは……………本当に俺の妻なんだ……………あのときの子供は……………本当に俺達夫婦に愛されている……………俺達は、本物の家族に……………夫婦になった……………だから、許してくれとは言わない……………だけど、」

ジンの拳はガタガタと震えていて。こめかみにはハッキリと青筋が浮かんでいた。だから皆、酔いから覚めて緊張していた。ジンが本気でダグラスに殴りかかるかもしれないと。その時は、人情沙汰だけは阻止しなくてはと。

それを知ってか知らずか、ダグラスは続けた。

「だけど、ごめん…………すまなかった………。…それから……………それから、…………アサーシャは……………俺が幸せにするから……俺が一生かけて愛し抜くから……だから…もう、彼女のことは諦めてくれ………。」

そのダグラスの言葉に、俺達に一瞬鋭い緊張が走った……………


…………と、「くそっ!!」

ジンはそう言い捨て、ドカドカと足を踏みならしながらフロアーを出ていった。





残された面々は、とりあえず事なきを得たことで、一様に安堵のため息をつく。

ダグラスは、そんな皆をじっと見ていたが、「皆……………巻き込んでごめん。酒が不味くなっただろ…………。」と、申し訳なさそうに言った。「きっと……いまだにずっと……………俺を憎んでいる男達はいる………。……そのなかでも…ジンは…………俺に…敵意を隠していたけれど……………俺は気づいてた……………。」

「そうだったのか……………」
ジャクソンは、そんなことには全く気づかなかったよ、なあ皆?と軽く応えた。

「…………………………ジンにはああ言ったけれど……………、俺はやっぱり今でも、妻への懺悔の念と………彼女を想っている男どもへの恐怖を抱えている……………。」

「………ダグラス君は……子供を作って結婚したことを、後悔しているの……?」
社さんが皆の疑問を代弁して問いかけた。

そして、俺達から見ていて、ダグラスは全部吐いてしまいたいように見えた。社さんはそれを助けてあげたかったらしい。……後に、社さんに教えてもらったことだ。

「後悔……………は、している……………。普通に彼女にプロポーズをして結婚していたら、こんなに不安でもないし辛くもなかっただろう……………と、何度も何度も思った………。……でも、彼女の未来をこの手にできたことは……………本当に嬉しいんだ……。…幸運だと…思っている……………だから、もしあの時に戻れたとしても…………俺は、同じことをすると…思う。」

ふらふらと立ち上がりながら、ダグラスは言った。
「俺を……………軽蔑……………しただろう……………?」

皆で目を見合わせる。
皆の目は、『いやいやー、少し驚きはしたけどなあ』と言っていた。


「ダグラス、俺は、軽蔑はしなかったよ……………。」
俺は、本心を言った。皆も頷いた。


ダグラスは、顔を歪めて、フルフルと頭を振った。
「……………ごめん、……俺は………………………いや…いい、や。もう。…………ここいらで俺は帰るよ……………明日は……朝早くから上の子と釣りに行く約束をしてるんだ……………。」

そして、また一緒に仕事をするときがあったらよろしくな、と言い、ダグラスは店を出ていった。


輪の皆はその後なんとなく散り散りになり、俺も時刻を確認して、社さんと帰宅することにした。




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……………え?なんですって……………?


………………………………………ふむ。この話は面白くなかったと?


でへへ〰、ですよね〰(*/□\*)

でも、必要だったので仕方ないんです〰