【放射性物質汚染対処特措法の解説】国民の責務とは?地方公共団体の責務とは? | 福島原発事故★自主避難者として生きる

福島原発事故★自主避難者として生きる

福島原発事故の原因や汚染の現状、放射能や放射線の健康被害や影響。避難は必要か?など福島原発事故を判断する材料になる資料を集めました。

「放射性物質汚染対処特措法」という法律が2011年8月30日に公布されました。そのなかに記載されている6条(国民の責務)の条文の解釈について、ツイッターなどでどう読んでいいのかわからない、という意見がけっこうあるようですので、一応、私も法律家の端くれですので、ツイッターで問題視されている3~6条に特化して解説させていただきます。


■主な登場人物(5人だけです)


1・国

2・地方公共団体(都道府県や市町村のこと)

3・関係原子力事業者(東京電力のこと)

4・原子力事業者(東京電力以外の原子力発電やってる電力会社)

5・国民


■法律の目的


「放射性物質汚染対処特措法」は、福島第一原発事故によって生じた汚染に対処するために、上記登場人物のそれぞれの立場&やるべきことを定めることで、汚染が人の健康や生活に及ぼす影響を少なくすることを目的として制定されました。



■条文を読む前に!


これから3~6条の条文を読んでいきますが、前提として【義務規定】と【努力規定】の違いを理解する必要があります。


・【義務規定】とは、あなたの意思とは関係なくやらなければならないことです。


条文での表現

~しなければならない」←強く義務づける場合の表現

~するものとする」←弱く義務づける場合の表現



・【努力規定】とは、努力さえしてくれれば、やらなくてもいいことです。


条文での表現

努めなければならない


※努力規定は強制力がない為、定めてもほとんど意味がありません。まあ、日本人は、努力規定と義務規定をごっちゃにしている人が多いので事実上の強制力を伴うなどとも言う人もいますが。努力しようと1秒でも思えば、努力したことになります。


少し寄り道して、健康増進法25条の超抜粋を読んでみましょう。


「飲食店は、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」


福島県にいた時のこと。


あるコーヒーショップが、健康増進法が施行(日本国内に効力を生じること)されてからすごいことになっていました。そのコーヒーショップのオーナーは、ヘビースモーカーなんです。


大手ファミレスチェーン店は、施行にかこつけて全面禁煙にのりだしたところが多くて(だってタバコ喫われると空調やエアコンとか全部くさくなっちゃうからね)、ヘビースモーカーの人がそのコーヒーショップに集まるようになって、火事かと思うほど煙が充満していました。


話題は、健康増進法。そのオーナーいわく「1秒だけ受動喫煙を防止するために努力はしたんだ、でもわかったんだ。タバコ吸うやつしか、この店を利用していないってこと」法律的には、これでOKなんです。ちなみに、私はタバコは喫いませんよ。


■条文


3条(国の責務)
国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、必要な措置を講ずるものとする


4条(地方公共団体の責務)
地方公共団体は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、国の施策への協力を通じて、当該地域の自然的社会的条件に応じ、適切な役割を果たすものとする


5条(原子力事業者の責務)
関係原子力事業者は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、誠意をもって必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力しなければならない


関係原子力事業者以外の原子力事業者は、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力するよう努めなければならない


6条(国民の責務)
国民は、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力するよう努めなければならない


■解説


というわけでこの法律は、国会で官僚と国会議員が作りましたので、彼らは、一番悪いのは東京電力だと考えているわけです。5条が強い義務付けをしていますから。一番がんばれと。


次に、国。その次が地方公共団体。で、なぜか、関係原子力事業者以外の原子力事業者と国民が同列扱いされています。私が、頭にきているのは、この部分ですメラメラ


責任の重さのまとめ。


関係原子力事業者地方公共団体国民関係原子力事業者以外の原子力事業者


■個人的意見


なんで原発の専門家である「関係原子力事業者以外の原子力事業者」と素人の国民が同等の努力義務を負わなければならない。この部分のバランスが悪すぎる。


国民には、原発推進派の国会議員を選び続けた道義的責任はあっても、汚染については一点の曇りなく純粋な被害者。


放射性物質が降った個々の国民が持つ、不法行為における損害賠償請求権を保全する意味で、本来ならこの法律で、国民には請求権・形成権などの権利規定を設定すべき。もちろん原状回復のための除染行為は、加害者たる東京電力自身が行う旨、義務を加重して。