矢ヶ崎克馬名誉教授の取材秘話 | 福島原発事故★自主避難者として生きる

福島原発事故★自主避難者として生きる

福島原発事故の原因や汚染の現状、放射能や放射線の健康被害や影響。避難は必要か?など福島原発事故を判断する材料になる資料を集めました。

2014年3月11日、内部被曝研究における日本の第一人者、矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授にお会いしてきました。



福島原発事故から3年たった今、小出裕章京都大学大学院助教や武田邦彦中部大学教授以上になぜ矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授が注目を浴びているのでしょうか?その理由を探ってきました。


■内部被曝研究における日本の第一人者


あなたがもし「内部被曝と外部被ばくは別物」だということを知っているとしたら、矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授のおかげかもしれません。


ご存知のようにICRP(国際放射線防護委員会)や国や福島県は…


外部被曝=内部被曝


と考えているため被曝に内部も外部もあるか!一緒だ!という非常に乱暴な論理で長崎県や広島県の被爆者を切り捨ててきました。


矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授は、外部被曝と内部被曝では人体への影響が違うことを科学的、論理的に説明し、2003年の「原爆症認定訴訟」はじめ数々の裁判で、内部被曝を認められずに補償が受けれず苦しんでいる市民の側に常に立ち戦ってきてくれた私達、避難者、被曝者の強い味方なのです。


■その温かい人柄


今回の矢ケ崎克馬琉球大学名誉教授独占インタビューの内容は12個にわけてこちらのブログにアップされますが1個目がこの記事です→教えて!矢ヶ崎克馬名誉教授「2014年3月現在の福島原発事故の現状は?」


読んでいただくと分かる通り、先月このブログと私のツイッターで一般募集した質問にじかに矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授が答えてくれているものです。


質問は宮崎県の30代の主婦の方からで『2014年3月現在の、福島第一原発事故の現状を矢ヶ崎克馬先生は、どのようにご覧になりますか?事故収束作業は順調と言えるでしょうか。』というもので約20秒なんですが。


回答はご覧いただくとわかる通り…約20秒の質問に対して6分40秒かけて親切丁寧に回答して下さっています。しかも質問に対する論点がずれたりしていませんね。


しかも質問の内容によってはこのように図やグラフをその場で書いて説明して下さいました。



矢ケ崎克馬琉球大学名誉教授は福島原発事故後、市民の誰もが放射能や内部被曝について学ぶことの大切さを説かれていますが、だからこそ手抜きなんかしない!という、国民へ向けた熱意と愛情がひしひしと伝わってきました。穏やかな声と、柔和な笑顔が魅力の矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授ですが、芯のしっかり通った人なんだということがよくわかりました。


■奥様は沖本(矢ヶ崎)八重美さん


沖縄県に避難している人なら、誰もが決して忘れることのできない人物がいます。


昨年急逝された沖本八恵美さん、つなごう命沖縄と被災地を結ぶ会の前共同代表です。ご自分も多忙なのにも関わらず、自主避難者の生活の向上のために日夜を問わず共に戦って下さいました。


私は、沖縄と被災地を結ぶ会とは無関係なのですが、元々自主避難者ですからいろいろと助けていただいたり、逆にお手伝いしたりしてきました。


福島原発が吹き飛んでから1年もたっていないある日の出来事が私は、忘れられません。沖本八恵美さんと何気ない雑談をしている際に、ふいに東京電力を相手とする裁判の話になりました。


詳しいことはここには書けませんが、私は長年福島県に住んでいましたので東電の光も闇も見てきました。元々、反原発の立場で生きてきた私からすると、東電は非常に厄介で手強く、ずる賢く、しかもしつこい、さらに国や財界までバックについて…裁判を起こすには、かなり勇気がいる存在なのです。むしろ国や福島県を相手に裁判したほうが気楽なくらいです。


だから私は当時、こう沖本八恵美さんに話しました。「東電を相手に裁判…私は東電が怖い。東電を悪魔と言う人がいますが、私も同じ心境です」と。


その話を沖本さんは、うんうんと大きく頷きつつ聞いていましたが話が終わると、「ほほう」とつぶやいて微笑みました。


その微笑みから私は「東電が怖いのはわかった。でも私は戦う」という意味なんだなと感じ、なんで沖本さんはどんな強い奴が相手でもビビらないのだろう?東電の怖さがわからないのかな…などと当時は合点がいかなかったです。


でも急逝された後、沖本さんの友人のいろいろな人達の口から沖本八恵美さんは、お母さんのお腹のなかにいるときに広島の原爆投下の被害にあい、体内被爆していたことを聞きました。


それで納得できたんです。沖本八恵美さんにはきっと、こう考えていたんだ。


生まれる前の胎児を被曝させることは、いかなる理由があろうが正義なわけがない、原爆は間違っているし、今も原爆症でたくさんの人を苦しませる放射能も間違っている。間違っている以上、正さなければならないと。


沖本八恵美さんの一周忌で、ある出席者のかたが沖本八恵美さんのを偲んで言っていました。


「百万人が言っても間違っていることは間違っている。一人が言っても正しいことは正しい」


この沖本八恵美さんが生涯愛した人こそ、矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授なんです。