闘いの後
南戒の船団を沈めてから数日後。
ヒヨウの残党は大方捕らえられ、麻薬の回収も進んでいますが、ナダイの被害は水の部族の各地に及び、依存症患者の更生施設も不足しているとのこと。
ヨナたちは相変わらず町外れで野宿をしています。傷を負って天幕の中で休むハクに食事を運んできたキジャ。何か言いたげなキジャの頬の傷に気付くハク。ハクを止めようとしたときの傷でした。ハクの視線に気付き蚊に刺されたとごまかすキジャ。そのまま天幕を出てしまいます。
天幕を出たところでキジャの分の食事を持ってきたジェハに会います。キジャは、ハクに次は止めないと言おうとしたが結局言えなかったと言います。
今では仲間のみんながリリの用心棒が先王イルを殺したスウォンだということを知っています。ハクを止めたことを余計に引っ掻き回してしまったかもしれないと自嘲するジェハ。ジェハが守ろうとしたものも分かっていると言うキジャですが‥。
ハクを止めたことを悔いているかのようなジェハですが、違うと思いますね。次も絶対止めるでしょう。ハクの親友に対する深い情に気付いているジェハは、怒りのままに殺してしまったりしたらハク自身が壊れてしまうと感じているのではないでしょうか。
私の好きな少年漫画で相棒に『面倒見の鬼』と言う異名を付けられている少年がいます。ジェハも同じ。18巻に掲載されている番外編でも、ジェハの『面倒見の鬼』っぷりが炸裂しています。
そしてヨナが最後に止めたのもジェハと同じ理由だと思います。
薪を拾い集めているヨナの所へ現れたハク。そのまま静かに海辺を歩くふたり‥。ヨナはスウォンと対峙した時のハクの様子を思い起こします。
会話を交わすうちに、ハクがふと笑みをもらします。それを見て思わず涙が溢れてくるヨナ。それに気付いたハクに‥
「ち‥違うの。何か‥ホッとして‥。
嫌だな‥ハクには‥弱い所ばかり‥見せて‥」
ハクはヨナを胸元に抱き寄せます。
「‥何も見ていませんよ」
この人は‥
こんなになっても
私を気遣ってしまう
ヨナは両手をハクの背中に回し、強く抱きしめます。
どうか
どうか神様
ハクの傷を
とりのぞいてください‥
ヨナはスウォンへの憎しみよりも、ハクの笑顔の方が大事なんですね。後でリリに語ったようにハクの悲しみが癒えることはないと感じているヨナ。とりのぞいて欲しい傷は『心の傷』でもあるのでしょう。
緋龍城に戻ったスウォン。負傷したムア、ギョクを医務官に治療させるよう指示を出します。ふたりになった所でジュドがスウォンがハクに対して剣を抜かなかったことを厳しく叱責します。
スウォンに全てを捨てる覚悟があったから、それを信じてあなたを選んだと言うジュド。スウォンは力無げに次は斬りますと答えます。
五部族会議を執り行う旨、各部族長に伝令するよう指示を出すと、ジュドは無言で立ち去ります。
スウォンの傍らにいた鷹のグルファン。スウォンが遊んでおいでと声を掛けると、グルファンは勢い良く飛び立ちます。空高く舞い上がったグルファンを見上げ、幼い頃三人で見上げた思い出を重ね合わせてしまうスウォン‥‥。
何かを変えることのできる人間がいるとすれば、その人はきっと‥大事なものを捨てることができる人だ。
化け物をも凌ぐ必要に迫られたのなら、人間性をも捨て去ることができる人のことだ。
何も捨てることができない人には、何も変えることはできないだろう。
私の好きな少年漫画の名セリフです‥。国を変えるために、友人も、思い出も捨てたはずなのに、あの時足を止めてしまったスウォン‥。
全てを捨てるまでしなくても、スウォンが成そうとしていることは出来た気がするんです。上述の漫画のように『化け物』が襲ってくるわけじゃないし。隣国も思ったほど強くない。今のところですが。
あの時なぜ動けなかったのか‥。迷いや後悔があると言う事なんでしょうか。スウォンの心情ってホントに描かれないのでよく分からないです。
この緋龍城の場面も会話と描写のみ。心の言葉が出てくるの、戴冠式の時ぐらいじゃないですか?もっとスウォン目線の話、やらないのかな。すっごい待ってる‥。
闘いから数日後、仙水を発つヨナたちですが、前夜リリや水呼からリリを迎えに来たアユテトを呼んで食事会をします。ヨナとハクの正体に気付いているアユテトですが、ジュンギに報告したりしないようです。
雨に降られ天幕でヨナとふたりになるリリはヨナの正体を確認したり、困った時は私が必ず守るから、とか言ったりします。なんだかんだで初めて本当の友達が出来たみたいで良かったです。
翌日リリの前に父ジュンギが現れます。リリは権力の象徴とされる水の金印を勝手に持ち出し兵団を動かした責を負うため、水呼城からの追放を言い渡されます。本来なら極刑を免れない大罪なのだそうです。
リリに似合いの牢獄を用意したと言うジュンギ。しかし後で分かったことですが、仙水に用意された牢獄とは庭の池に鯉が泳ぐような快適な屋敷。
仙水を離れるまでに、中毒者たちの治療施設や新しい守備隊の手配もして行ったというジュンギ。テトラ曰く、ジュンギの心を動かしたのリリ。最後までやり遂げろとリリの背中を押してくれたのだと。分かりにくいと文句を言うリリでしたが‥。
スウォンの招集により行われた五部族会議。スウォンは高華国北西部の領土返還を求め、南戒へ進軍すると宣言します。静観するジュンギに対し、ケイシュクが水の部族はこの戦に無関係ではないと言います。南戒の船隊の攻撃を迎え撃ったことを追求したいようです。
「水の部族は今回の軽率な行動の責任を負うべきではないですか?」
「言われずともそのつもりだ。ケイシュク参謀。だが‥‥」
ジュンギはいつも閉じている目を開き、ケイシュクを睨み付けます。
「部族の誇りを守り、この国を守らんが為必死に闘い血を流した我が民に対し、軽率であったなど君に評価して欲しくはない」
ジュンギに怒られたケイシュク、いい気味です。スウォンがその件に深く関わっていることも知らないくせに。ケイシュクはスウォンが連れてきたっぽいですけど、なんであんな奴そばに置いてるかナゾです。
今迄静観を続けていたジュンギ将軍がこの戦で動く意思を示し、驚く他の部族長たち。
(五部族がようやくまとまりつつある‥)
(これは動くぞ。時代が。)
飛び立つ渡り鳥の群れ。
それを見上げるゼノ。
何かを感じている様なゼノの横顔‥。
ゼノはヨナの呼び掛けに応じ、仲間の元へ走って行く‥。
ゼノはなぜ足を止めて空を見上げたのでしょう。遠い地で行われている五部族会議で将軍達が感じた『時代が動く』と言うのを、ゼノもまた感じたのでしょうか。
昔は神の声が聞けたと言うゼノ。今は聞こえないとのことですが、今でもたまにこんな不思議な行動をします。テジュンにも予言らしいこと、言ってました。
ああ、テジュン‼︎懐かしい‼︎
今の件が片付いたら、次はぜひテジュンの近況が知りたいです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
間も無く次号の発売日。ヨナとリリが無事である事を祈ります。