闘いから闘いへ

一方ヨナ達はスウォンらと共に次々に沈められていく敵船を港から眺めています。リリはヨナの傷を心配して、元気な自分よりヨナの護衛をしてあげて欲しいとスウォンに言います。断固拒否するヨナ。スウォンはヨナが太刀傷を負っていることに驚いた様子。

そこへヨナに顔を斬られた事を深く恨んでいるヒヨウの部下の矢が飛んで来ます。誰よりも早く矢の気配に気付くゼノ。皆に注意を促し迷わずヨナの前に立ち盾となります。

その二人の前に立ち塞がるスウォン。更にその前に出たジュドが矢を切り落とします。自分を庇ったスウォンに驚くヨナ‥。

更に飛んで来る矢。スウォンも狙われているのがヨナだと気付きます。地面に刺さった敵の矢を取り、射返そうとするヨナの手をスウォンが押さえます。

「やめなさい。頭をぶち抜かれますよ」
「放して」
「それにこの矢‥。やはり毒矢です。矢尻に触れない方がいい。下がっていなさい」

スウォンはジュドらに指示を出し、自らも敵の方へ駆けて行きます。

ゼノと共に物陰に隠れるヨナ。ゼノはヨナの頭をなぜなぜします。

「‥‥なあにゼノ」
「あの兄ちゃんといると、娘さんはちょっと冷静じゃないから。兄ちゃんがさっき弓を止めたのは娘さんの背中の傷を気にしたんだよ」
「‥‥ありえないわ」
「んーと、ゼノが言いたいのはね、
   今、娘さんの敵は一人ってこと。
   娘さんは賢い。娘さんが動くべきとちゃんと判断したならゼノも手伝うよ」

敵を切り倒していくスウォン。しかし胸を斬られたくさん血を流しながらも立ち上がってくる男‥。目つきもまともではない。ヒヨウにより麻薬漬けにされ、痛みを感じないようです。

「あなたも昔は穏やかな水の部族の民だったのですか‥?」

そう問い掛けながら最後の一太刀を浴びせるスウォン。そこへ別の建物の屋根から矢が射られます。それをかわすスウォンの目に映ったものは、屋根の上の敵を射倒すヨナの姿。一瞬目が合うふたり‥。さっきの借りは返したから‥といった表情のヨナ‥。

敵をあらかた片付け戻ってきたジュドは、ヨナの自ら矢を射る姿を見て勝手に動くなと言います。その言葉はヨナに跳ね返されますが‥

あなたの死を願ったことなど、一度もない
どこか遠く、俺の目の届かぬ場所で生きのびていてくれたらと、思っていた‥

動揺するな
スウォン様を主君と決めた俺が、この方への情など残していいはずがない‼︎

スウォンやヨナを幼い頃から知っているジュド‥。ここまで決意したワケって何ですかね。『この方への情』って‥?

港の人々も沖の船の様子や港の乱闘に気付き始めます。スウォンの方も片付いたようで、戻ってきて引き続き辺りを警戒しています。

しかし沖で部下の大半を失っているはずのヒヨウが港にも戦力をぶつけてきたことに違和感を感じるスウォン。ヒヨウ自身も港へ来ているのではと思い当たります。

ヨナも辺りに自分に向けられた強い殺気を感じます。ヨナへの恨みに取り憑かれたヒヨウは、自ら短刀を手にヨナへと迫っていました。ヨナを背に隠して守るゼノ。

誰もが身動きを取る間も無い、一瞬の出来事でした。

しかし剣先はゼノではなく、その瞬間ふたりの前に現れた別の人物の腕に刺さります。その人物とは‥

船上で闘っているはずのハク‥‥

ハクは腕に刺さった短刀を抜きもせず渾身の力でヒヨウの顔を殴りつけます。たった一撃で動かなくなるヒヨウ‥。

その場にいた者も、ハクに続いて戻ってきたジェハ達も、目の前の光景、尋常ではないハクの様子に驚きます。

ハクは腕から短刀を引き抜き血がボタボタ流れます。

「ハク‥血が‥」

声を掛けたヨナはハクの怒りに満ちた視線の先に気付きハッとします。その視線の先の人物も真っ直ぐにハクを見据えています。ヨナに会ってしまった時から想定できた状況です。

「ス‥‥ウォン‥‥」

先王イルを弑虐したスウォン‥。父を失った悲しみと、それが思い人の手によるものだった衝撃で魂の抜けた人形のようになってしまったヨナ‥。今では逞しい程に成長しましたが‥。

緋龍城から来た者だけがハクの怒りの理由を知っています。剣を構えスウォンに近づかせまいとするムアとギョク。

ハクは振り下ろされたムアの剣をかわし、強烈なラリアットを叩き込み相手を数メートル先へ吹き飛ばします。

更に振り上げられたギョクの手を片手で掴み‥「ゴキ」と言う鈍い音‥。腕をへし折ってしまったようです。

すかさずジュドの双刀がはしり、さすがに避け切れずにハクの胸から血が噴き出します。そんなこと物ともしない凄まじい形相のハクに気圧されたジュドの腹部を思い切り蹴り上げ、強烈な拳を叩き込むハク。ジュドもまた数メートル先へ吹き飛びます。

邪魔する者を片付け、ハクは血をボタボタ垂らしながらスウォンに歩み寄ります。

スウォンの眼前まで伸びた手を掴みハクを止めるジェハ‥。

凍り付いたように動かないスウォン‥。

「‥‥どけ」
「‥‥彼らと知り合いかい?
   何か理由があるのかもしれないが、彼らはリリちゃんの用心棒だ。今回の闘いにも協力して味方になってくれたんだよ」
「味方‥‥味方だと‥‥?」
「(なんて殺気だ。本気で彼を殺そうとしている‥‥⁉︎)
    とにかく手を下すんだ。君も血を流しすぎてる。早く処置しないと‥」
「放せ」
「ハクが落ちついたら放すよ」

「はなせェ‼︎」   ドゴッ‼︎

ジェハの腹部に拳を叩き込んだハク‥。

とうとう仲間にまで手をあげたハクに動揺するヨナや仲間たち‥。

「なんて顔してんだ‥。まいったな‥。放っておけない」

ジェハは立ち上がりハク顔面を蹴り上げます。龍の足を持つジェハの蹴りを食らっても気絶するどころか倒れもしないハク‥。

「そこの人達生きてる?彼は僕が力ずくで押さえるから、その間に行くんだ」

ジェハの言葉によろよろと立ち上がる側近の3人。ジェハは行かせまいとするハクを止め、もう一度蹴りを食らわせます。しかしまだ動きを止めないハク‥。

ジェハはキジャに助力を求め、最初は躊躇っていたキジャもハクを止めるのを手伝います。

「陛下‥‥っ」

ジュドたちはスウォンを促し立ち去ろうとします。まだハクから目をそらせないスウォン‥。

「‥‥はなせ‥‥
     はなせェェェ‼︎」

共に過ごすだけで幸せだった幼い頃の日々‥‥

スウォンがヨナと婚姻を結び新王に即位したら、死ぬまでその傍にいてふたりを守ろうと心に誓っていたあの頃‥‥


「あいつは‥‥あいつだけは‼︎」


立ち去って行くスウォンたち‥。

そこへ血塗れたハクの手を押さえる小さな手‥。

「ハク‥
    大丈夫‥
    私は‥大丈夫だから」

ヨナの制止にようやく動きを止めるハク‥。



今回の敵だったはずのヒヨウはただのゲスな男で、南戒の船隊との戦闘も張り合いのないものでした‥。あんなゲス野郎に水の部族の民たちが喰いものにされていたなんて悔しいです。

言えるのは、ヒヨウにしても今回撃退した南戒の貴族にしても、氷山の一角に過ぎないという事。それがつまり今最新話で進んでいるナダイ続編につながって行くのですね。

そして本題の盛り上がりを完全に喰ってしまったハクvsスウォン‥。vs‥とは言わないかな。スウォンは全く動かなかったですから。

ハクがあそこまでああなるとは思いませんでした。緋龍城から追われたあの日より冷静さを欠いています。ヒヨウさんの『麻薬人形』とそう変わらない描写でした。時が経つにつれ憎しみが増しているのでしょうか。

ヨナは阿波の時は剣の柄を握りましたが、今回は周りを気にしたのか、攻撃する動きはありませんでした。ゼノ曰く、『ちょっと冷静じゃない』状態ではありましたが。

ハクも次に会う時には違う態度を見せてくれるのでしょうか。

そして凍り付いたように動かなかったスウォン‥。後でジュドにお説教されますが、ハクに殺されても致し方ないと感じているように見えます。まだ迷いがあるのでしょうか。ハクの顔が怖くて足がすくんで動けなかった‥なんてことじゃないですヨネ。

緊迫した場面でしたが、ひとつだけ突っ込みたい‥。ハクは自慢の大刀はどうしたんですかね。船上で闘っていた時は確かに持っていましたが、スウォンやヨナのいる港に来た時は持っていないんです。ですからジュドたちのことはみんな素手で倒してる‥。

急いでいたから重い大刀はどっかに置いてきた?でもスウォンを本気で殺す気ならアレは持って来た方がいいですよねー。持ってなかった理由がどっかに書いてあるのかな。私が見落としてるだけ?

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