☆あらすじ☆
父ジュンギの命によりスウォン陛下に斉国の件の御礼のため緋龍城に赴いたリリとアユラ・テトラ。町で単独で行動するスウォンを見掛けたリリはその後を追います。
スウォンが入って行った横道の奥は不穏な空気が漂う裏町。心配でついて来たアユテトですが、リリは麻薬に侵された町はもっと陰気だったと平気な様子。
絡んできたガラの悪い男たちにも
「私のアユラとテトラに触らないで。宦官にされたいの?」
などと凄んでみせます。
テトラが男に肘鉄をくらわし、アユラがもう1人の男の喉元に剣を当てたところでスウォンが登場。リリたちがスウォンの知人と分かり一気に場の緊張が解けます。
そこの親玉っぽいひとは過去話で登場したオギさんでした。スウォンは今だに身分を隠しウォンとしてここで情報収集をしているようです。
オギさんとスウォンの話題は斉国の密売人について。密売人は一斉に身を潜め始め今はナダイの入手が困難とのこと。
もうひとつオギさんはある噂話を。それは戦場に四龍が現れるというもの。高華国の至る所でその化け物じみた連中の目撃情報があり、その四龍と共に赤い髪の女が現れ
るとのこと。
まるで神話の緋龍王のようだというオギさん。その話を聞いて顔色を変えるスウォンとリリ‥。
緋龍城に戻ったスウォンとリリ。オギさんの語った噂話はヨナたちのことではないかと言うリリ。さらにもうヨナを追う気も殺す気もなく生きていて欲しいんじゃないかとスウォンに問います。
リリの口を手で塞ぎ言葉を遮るスウォン。城でヨナの名を出すなと‥。
城でなければ話してくれるのかと問い詰めるリリに背を向けてスウォンはあなたに語ることなどないと言います。どんどん先を歩いて行くスウォンを絶句して見つめるリリ‥。
☆☆☆
ヨナ一行。
斉国の国境沿いを歩き風の部族領に入った様子。シンアが何かの気配に気付きます。黒いマスクをした隠密のような男たちに囲まれるヨナたち。
「我々は真国からやって来た」
「お前たちは高華国の化け物か?」
☆感想☆
まずはオギさんの再登場、嬉しかったです。あの昔話大好きなんで‥。
番外編のような話の登場人物が本編で登場するスタイルは大好きです。
あの時風の部族長(ムンドク)だの空の部族長(ジュド)だの出てきちゃったから、スウォン(裏町ではウォン)が王族だってオギさんたちにバレたと思ってたんだけど、今だにオギさんたちはスウォンの正体を知らないんですね。あの後スウォンがうまいこと言いくるめたと推察します‥。
最近はヨナ側とスウォン側のからみが多くて楽しいです。長いこと別々に進んでいてあれスウォンて何してんの?でしたから。
平行に進んでいた話がナダイの問題や斉国での共闘やリリの存在によって絡まりつつ進行するようになって、物語の終盤に入ってるんじゃないかって心配もありますが、まだ解決してない問題がたくさんあるので大丈夫ですよね‥?
そもそも何を考えてるのかよく分からないスウォンではありますが、描かれている人物像からは想像しにくい不自然な部分があります。
イル前陛下のゆるい外交により弱体化した高華国を以前のような強国に建て直したい。これは納得。スウォンなら出来る気がする。今回の記述によりそれがカタチを成しつつあるのが分かります。
斉国があっさり属国にしちゃいましたから。都合良すぎてびっくりしましたが、そこは気にしないとして‥。
王様を自ら亡き者にしてまで玉座をもぎ取ったのが理解しにくい。命を取らずとも失脚させることもスウォンなら可能に見えます。
それでもヨナやハクとの関係性は崩れることにはなると思いますがそれも覚悟の上ならむやみに命を奪うこともないはず。
大胆な作戦を立て自らも行動するのはスウォンの持ち味ではありますが、だから尚更他にも方法があったように思えます。
もしかしたらいるかも知れないイル王派の人たちに再びひっくり返されることを懸念してでしょうか。後の面倒を回避するために命を奪ったにしても自ら手を下すこともないはず。
その辺のスウォンの言い分はイルが父ユホンを殺したというもの。
これを鵜呑みにするとスウォンという人が更に分からない。スウォンのように聡明な人がおよそ誰も信じないようなことをなぜ信じているのでしょうか。
自分がその現場を見た、スウォンにとってかなり信頼できる人が見た、イル自身がそうだと言った、ぐらいしか思い付きません。
物語の冒頭のあの事件にはまだ描かれていない事情があると私は思ってます。
もうひとつ、神や四龍といったものに対する態度‥。存在を認めてはいるのに頑なに拒絶していること。
前回のハクの回想で、ハクはスウォンのことをこの様に見ています。
〈こいつは平等に人が好きで、人どころか物にも平等に興味があるのかもしれない。
俺には苦手な人間がたくさんいて、許せない事も多いけど‥。お前はもっと、遠くを見ているんだな。〉
この当時は人にも物にも平等だったのに、今は神や神懸かりなものに対しては明らかに拒絶しています。
数年の間にスウォンが変わってしまったのでしょうか。私は変わってないんだと思ってます。
本当の気持ちを偽って神や神懸かりなものを拒絶する態度をとっていると思います。
ヨナやハクに対してと同じ。大切に思っているが自分には必要のないもの、と言う態度を演じ通していく覚悟のように思えます。
前回ピックアップされた例の簪もそういう意味合いじゃないでしょうか。
ハクはイルを殺しに行く前にヨナに簪を送ったことが許せないと言っていますが、スウォンにとっては逆なんじゃないでしょうか。ヨナと決別するケジメとして簪をヨナに託した‥。
あの簪は神や緋龍王にまつわる重要なもので、例えばゼノが持っている緋龍王の紋章みたいな。
妄想は尽きませんが‥。
まとめると、
①目的は分かるがイルを自らの手で殺した浅慮さ。
②人にも物にも平等な性格に反した神への拒絶。
このふたつの違和感は物語の重要な秘密の伏線なんじゃないでしょうか。
ともあれ真国の隠密のような人が登場しましたからね、今後は対真国の展開になりそうです。できればナダイはもうかんべんして欲しい‥。さらに言うならそろそろテジュンの登場も期待したいです。