映画監督、園子温さんのエッセイ「獣でなぜ悪い」を読んだ。

 

私が園さんが撮る映画に惹かれる理由がはっきり分かった。

 

園さんの映画に出てくる女性主人公は、すごく逞しい。

いま日本で好まれる、ちっちゃくて、やわらかくて、かわいくて、とろけそうで、

癒されるような笑顔、とは、ちょっと距離がある感じ。

 

滅茶苦茶で、でもそれが最高にかっこいいと思う。

 

私は多分今時珍しいくらい厳格な家に生まれて、女の子は女の子らしく、と言われて育った。

 

実家には炊飯器が2台あり、

ご飯は少量で炊くと味が落ちる、という祖母のこだわりで、いつも人数分以上の分量でご飯を炊いていた。

 

そうすると当たり前だけど、ご飯が余る、ので保温しておく。

そして保温しておいたご飯は、炊き立てに比べると、味が多少落ちる。

 

ので結果、前日に炊飯器に残った保温されたご飯を祖母と母が食べ、

もう1台で新しく炊いたご飯を、祖父と父と私が食べていた。

 

うわーお、デンジャラス。女性は男性より一歩下がっての象徴だね。当時はそれが当たり前だと思っていた。

 

でも、祖父母の時代はそういう教えで育ってきているから、

誰も責められないし、疑問に思うことすら許されなかったんじゃないかな。

 

自分が食べ盛りの時は戦争中で、いつもお腹が空いていたからついつい多く作ってしまうの、と

子供ながらにもしんみりすることをいつかポツリと祖母に言われたこともあった。

 

その後、三人兄弟の家に預けられてからは、それまでとは間逆の生活が私を待っていた。

 

野山を駆け巡り秘密基地を作り、高い崖の上から誰が最初に川に飛び込めるか競い、

木苺や山桃、つくし、むかごの味を知った。素手で喧嘩して、噛み付いて怒られた。良く泣いて良く笑ったなぁ。

 

その時に、すごく自分の気持ちに正直になれることが嬉しかった。

 

どうして女の子は、いつも慎ましくあったり、可憐だったり、お行儀良くしてなくちゃいけないんだろう?って。

 

自分が良いと思う自分でいることが大事なんだなって、森や川や海や生き物が教えてくれた。

 

派手な髪色でショートカットでパンツスタイルの方が楽であれば、そういればいいし、

黒髪でスカートやフリルやピンク、リボンが好きなら、そういうスタイルで生きればいいんじゃないかなぁ。

 

大事なのは、しっかり自分でそうなりたいと願っていることだね。

 

清楚で、純真なものだけを愛でたがる風潮に私は疑問を感じるし、

もっとそこから女性が自由になれたらいいなって思う。

 

まぁでもそれからまた色々あって、私は中高大まである女子校に行くんだけど。

 

私が私の育ってきた環境が面白いな、と思うのが、このバランス。

 

女の子であらねば、みたいな自らが作り出した呪縛と、

それを全力で振り切りたい自分が今でもせめぎあってて、

こういうところから、アイデンティティーとかオリジナルって生まれるんだよなーって思う。

 

私は、歌詞を書く時、一人称を「僕」にする事が多い、らしい。

 

らしい、というのはインタビューの時にそのことを指摘されて、はじめて気づいた。

 

多分、女性であることを大事にしながら、

でも性を超えた自分でいたいと望む気持ちが強いんだろうなぁと思う。

 

AL「 TIME」に収録した「ファンタジー」でも書いたけど、

清楚可憐なんてファンタジーだよ。

 

圧倒的に優しいから圧倒的に残酷になれる。

 

圧倒的な優しさだけを女性に求めるのは暴力だと私は思うな〜。

 

 

さて!嬉しいお知らせ!

 

明日はパシフィコ横浜でツアーですが、

明日からツアーグッズにパンフレットが加わります!

 

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このツアーのリハの雰囲気から楽しんで貰えると思う。

 

今回はシンプルに写真で構成したんだけど、

カメラマンさんやディレクターさんとこだわって作ったから是非手にとって貰えたら嬉しいです。

 

粒子の粗さ、細かさ、全部がメッセージです。

 

明日来る人、いい夜にしようね!