手洗いした麻のパジャマと枕カバー、何枚かのTシャツ。

 

洗濯機で回したバスタオルや靴下、その他諸々の衣類。

 

それら全てをステンレス製の物干しタワー(キャスター付き)に、

干し終えた私はダイニングテーブルの椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。

 

朝とも昼ともつかない時間帯にただ家にいる。

 

開け放った窓から入ってくる風がレースカーテンを静かに揺らす。

 

部屋中に広がる洗濯物の清潔な匂い。

 

守られている、そう思った。

 

幸せが何なのか、ずっと分からずにいた。

 

それじゃあ生きてることに張り合いが出なくて困るなぁって、

数がうんと少ないものを手にすることが幸せなはず、と自分の魂を引っ叩いて頑張った。

 

幸せはいつも何となくそばにあって、だけどやっぱり遠くにあった。

 

でも、もう大丈夫。

 

幸せは目で探している間は決して姿を現さない。

 

何処にでもあって、とてもありふれているから、急いで生きている人の目には写りにくい。

 

心で探し始めた時、それは強い光を放ちはじめる。

 

 

 

ダメかも、もう無理かも、って気弱になる瞬間にあなたを励ますのは何ですか?

 

そう尋ねられて、脳裏に浮かんだのは、

麻のパジャマと靴下、その他諸々の衣類が干されている部屋だった。