数年前、地元の小さなカフェバーでライブをした。


年に何度か趣味で弾き語りのライブをやっているのだが、大体いつもフォークソングを歌うことが多く、そのときも最後に歌った曲は風の『22才の別れ』だった。


伊勢正三が1974年に書いた曲である。


風の曲として有名だが、元々はその前に彼が所属していたかぐや姫というバンドの4枚目のアルバム『三階建の詩』に収録されている。


そのアルバムには、後にイルカがカバーして大ヒットした『なごり雪』も収められているのだが、これもまた伊勢正三が書いたものであった。


※タイトルの『なごり寿司』は、嘉門達夫が作った『なごり雪』の替え歌である。




22才の別れ』が女目線であるとするならば『なごり雪』は男目線の曲であり、どちらも徐々に大人になっていく女性とそれに気付く事なく過ごしていた男性の別れを描いている。


"あなたはあなたのままで 変らずにいてください そのままで"(22才の別れ)


"今春が来て君はきれいになった"(なごり雪)




ちなみにMe First and the Gimme Gimmesというアメリカのパンクバンドも『22才の別れ』をカバーしているが、やけに日本語がうまいので仕事で疲れている時にでも聴いてみてほしい。




話は戻るが、そのライブをした際、珍しく私以外にもフォークソングを歌っているバンドがいた。


※無許可でコラムに書いているので名前は風ならぬ"嵐"にでもしておこう。いややっぱり色々誤解を生むので"微風"にしておく。


そのとき微風が最後に歌った『下北沢』というオリジナル曲が妙にずっと耳に残っていた。


Emで始まりところどころB7を入れるギターに懐かしさを感じたのは、かぐや姫の『神田川』と重なったからだ。


なので私の中でその曲のタイトルは『北沢川』とインプットされている。


しかし当時私と同じく20代前半だった彼らがなぜ60〜70年代のフォークっぽい曲を歌っていたのか不思議だった。


「変な人達だな」と思った。(人の事を言える立場ではない)


それから縁あって彼らと再会する機会があり話を聞いてみると、どうやらビリー・バンバンや加藤和彦、ガロ、チューリップ、荒井由実あたりに詳しい。


やはり「変な人達だな」と思った。(決して人の事を言える立場ではない)


と同時に彼らと一緒に『青春のグラフィティコンサート』(フォークソング世代の歌手が多く出演するコンサート)に行ったら楽しいだろうなと思った。


彼らの作る曲には、フォークソングを知っているからこそ出せる哀愁感が漂っている。


22才の別れ』で伊勢正三が男の頼りない部分や女の弱さを歌ったのと同じく、彼らは『下北沢』で男の弱さや未練を歌っている。


どこか頼りなく、孤独を受け入れきれない男が北沢川を眺めながら歩く様子が目に浮かぶ。


きっと赤い手ぬぐいをマフラー代わりに巻いているのだろう。


帰る先は三畳一間の下宿か。


横町の風呂屋はまだやっているのだろうか。


そこに60年代のアメリカを彷彿とさせるギターソロが響く。


どうやらギターボーカルの人はニール・ヤングやボブ・ディランからも影響を受けているらしい。


そんな彼らの作る曲を今の1020代が聴いたらどう感じるだろうか。


フォークソングというジャンルを知らなければ新鮮に聴こえるのかもしれない。




今、私は彼らと一緒に曲を作っている。


タイトルは『隅田川』


花火の上がる音でイントロが始まり(却下される予感)、当然のごとくEmB7を多用している。


いつかかぐや姫のようになれたら


それはそれで色々と大変そうなので今はまだ竹に入ったままの状態で楽しみたい。


フォークソングのリバイバルを待ち望みながら。