しばらく前に、サンクコストの誤謬(サンクコスト効果)について、たまたまテレビ番組で観てから、頭の片隅に残っていて、あれこれ考えています。


サンクコストとは、「埋没費用」と訳されます。

既に負担・投資して、回収できないコストのことです。

このコストには、金銭だけでなく、時間や労力といったものも含まれます。


「サンクコストの誤謬(サンクコスト効果)」とは、これまで投資してきたお金や労力(埋没費用)をもったいなく感じて回収しようと躍起になるあまり、合理的な判断ができなくなってしまうことをいいます。


例えば

費用をかけてキャンペーン広告を出して、思ったように効果が出なくても、さらに広告を出し続けてしまう。


高い分厚い本を買って読み始めたけど、最初の数ページで面白くないと思っても、時間を使って読み続けようとする。


昔買ったブランドの服が今はサイズや好みが合わないのに、いつか着るのでは?と捨てられない。


パートナーに対して不満がありつつ「一緒にいることで変わるかもしれない」と思い込み、なかなか別れを切り出せない、何年も交際したことでその時間をもったいなく感じ、そのままズルズル交際を続けてしまう。


などなど。

いやいや、なんとも耳の痛いお話…。(ー ー;)


昔もですし、最近も思いあたる節があまりに多すぎて、それで意識に残ったのかなと思います。


私自身のサンクコストの誤謬で過去のことで思い出すのは、離婚の時のこと。


自分の相手に対する発言がきっかけで、いきなり「離婚しよう」という話になりました。

離婚をはっきり決断するまでの間、二人になった時の相手の対応はやはりよくない一方で、お正月に実家に行く時など対外的には普通にすごしていて、やり直せるのかもという期待をもってしまい…。

そんなことを何年か繰り返していました。


コストには、金銭的な費用や労力だけではなく、思い・感情といったものも入ります。

そのことを身をもって体感した者としては、「自分のせいでこんなことになった」という罪悪感があったことが余計に、“取り戻さないと”という気持ちを強くしていたんだなとい思います。


冷静な時や、友人のことだったりもすれば、「もうやめちゃいなよ」と思うけれど、渦中の時はなかなかそうはいかないものです。


金銭的な損切りならば、割と早くスパッと切れそうな気はしているのですが、人間関係の絡む、しかも一度は将来を共にしたいと思った相手とか、末永くやっていきたいと思っていた事柄には、強い感情や情動が絡むので、理屈でなんとかしようとしても、なかなか、「手放した方が楽になる」とは思えないものです。


その場合、罪悪感や後悔を癒す必要があり、喪失に対する悲しみや、これからどうなるのかという不安や怖さ、たぶん相手への怒りもあり、それらの感情を消化することが、前にすすむための準備になるのかなとも思います。


あとは、自分が決めたことや意思表示をしたことを変えるのは、今までの自分の行動を否定することにもつながるので、どうしても傷つきます。


私は、「何ごとにも傷つかない態度」をとる人だったので(今もありますが)、当時は傷つきは受け入れられず、受け入れられないから癒しようもなく、より長引いたのかなと思います。


そんな中から抜け出せたのは、このカウンセリングに出会い自分の問題を解決してきたことと、その結婚よりも重要なものとの出会いや、自分の味方になってくれる人々、支えてくれた人がいてくれたことが大きいかなと思います。


それでも、離婚届けを出した当日は、結婚して10年とその前にお付き合いしていた数年積み重ねた様々なものとのお別れに、涙が止まらなかったことを思い出します。

後悔はなくても、その時のことを思い出すと、感覚は蘇ることもありますが、ただそのまま受け入れることができるようになりました。


あとは、「今だったら」の対処法としては

・サンクコストについて知っておく

(知っていれば気付きやすくなるし対処のしようがあるから。知ってよかったです)

・新しい環境や新しい人との出会いに目をむける

(他に興味をもつことで、思考や感情の投資を減らす)

・サンクコストがなかったらどうするか?を考える

(これまでかけたコストが全くなかったとして今と未来に向けて自分はどうしたいのかを大事にする)


あたりかな。


最後の「自分がどうしたいのか」は、今一番の課題でもあります。


あとは、そうやってなかなか手放すことが出来なかった自分を許すことができれば、より傷つきを受け入れやすいのかなとも思います。


その上で、手放したとして、全てが損失だった訳ではなく、その経験から得られたものもあります。

相手からしてもらっていたこともあることに気付き、そこへは、ごめんなさいとありがとうを送ろう。


そうして、よかったこともそうでないことも思い出にし、過去は過去にして、今を生きることを大切にしよう。


そんなことを考えた週末でした。



余談ですが、先週思い立って、ジョギングを始めました。


朝日が綺麗。

台風14号が早く通りすぎて欲しいですね。



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公認心理師   横内慶子

HP こころの庭