速く、前に出る早稲田のディフェンスは通用するのかー。日本選手権二回戦早稲田対サントリー。わずか開始49秒のトライが試合の行く末を暗示していた。

 サントリーは徹底して早稲田の強みを奪い去った。前に出るディフェンスで大学選手権では格上ともいわれた東海大を撃破。深めのアタックラインをとる東海大をディフェンスで下げ続けてチャンスを与えなかった。前に出るディフェンスから逃げようとすれば、ますます術中にはまる、その典型の試合だった。

 サントリーは前に出るディフェンスを封じ込めた。開始早々に早稲田フルバックの田邊選手がカウンターを仕掛けたが、そこからターンオーバー(ボールを奪い取る)。一気にトライまで持っていった。注目したいのは、早稲田のカウンターに対するサポートの枚数。サントリーが何枚も接点(固まり)に入ってくるのに対し、早稲田の人数が少ない。サントリーが事前の研究で早稲田がカウンターでの接点に人数をかけないことを見越し、キックからのターンオーバーを狙いにいったのではないか。

 前に出るディフェンスの強みを消すには裏へのキックが有効。キックからのターンオーバーを狙う。サントリーはそこに焦点を絞ったように思える。

 サントリー・スクラムハーフの田中がラックサイドから抜けて、裏へのキックをあげた際にも、早稲田のキック処理した選手に対して、群がるようにサントリーの選手が襲い掛かった。これに対し、早稲田の選手は戻っているのに接点に人数をかけない。やはりターンオーバーされた。

 サントリーはモールを押し込んでフォワードを集めてから、ハーフからのハイパントで圧力をかけ、早稲田のミスを誘った。中盤ではバックスに回すことでボールを後ろにさげることはせず、フォワードサイドを近場で何度もついて、前に出るディフェンスの勢いをとめた。

 早稲田のディフェンスの良さを出させず、サントリーの強みを発揮した。スクラムをサントリーがコントロール。一番側をアップし、突破力がある早稲田ナンバー8の豊田の動きを完全におさえこむ。安定したボールが出せず、早稲田は自陣に釘付けにならざるをえなかった。前半19分にはサントリーが早稲田スクラムを奪ってのトライ。サントリー三番畠山が、経験が浅い早稲田フッカーの有田選手側に圧力をかけて、ボールを奪いとった。

 すべてがサントリーの計算とおり。前に出るディフェンスを封じ、スクラムの強さを生かす。挑戦者として主導権を握りたい早稲田だったが、サントリーが試合の流れを前半から大きく手繰り寄せた。