すっかり日焼けした肌。そういえば、さわやかだが、その領域ではない。

 小麦色でなく、浅黒い土色。

 細い目は何とか笑っているのだが、その瞳の奥は決して笑えてはいない。

 体だけでなく、顔もゴツゴツとした男の白い歯がみえた。
 
 「きみ、ラグビー部にはいんの?」

 高校に入学したばかりのときのことだ。

 やっぱり、歯の真ん中が抜けていていた。

 つい視線がいってしまう。
 
 「これ、タックルしたときに折れたんや」。

 もっと笑ってみせるのだが、やっぱり目が笑えない。ただ、なぜか誇らしげなのだ。

 正直、ラグビー部にするか、ヨット部にするか迷っていた。
 
 ヨット部の先輩は言うのだ。
 
 「ラグビー部は歯が抜けるぞ。先生に授業中に質問されたとき、こんなこと言ってた。『歯が抜けてるんで息が抜けて、うまいこと話せません』。そんなんでいいの」。
 
 そんな脅しに、簡単にびびった私。
 
 でも、なぜか、さわやかなヨットマンより、はぬけの男の魅力にひかれました。
 
 気づけば、高校だけでなく、大学でもラグビーをしてました。

 10年近くたちましたが、ごくまれに質問を受けるのです。 
 
 「歯は、どうかしたんですか」
 
 前歯の真ん中がかけ、治療したのですが、ちょっと色が違うのです。
 
 「実は、昔、ラグビーをしていて、トンガ人にタックルしたら、折れたんです…」

 伏し目がちに話しますが、でも口元が緩んでしまいます。

 トンガ人へのタックルで歯がぐらぐらしたのは本当です。ただ、実際はボールペンをくわえたときに、前歯が完全にかけてしまったのですが。
 
 それでも、そんな「武勇伝」を語るとき、はぬけの男は、なぜだか誇らしげなのです。 

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