前回の記事が(ごく一部の方にたいへん)好評だったので、再び競馬の話を書きます。わからない方はスルーしてください。

 競馬をやっていると、心にかなり強い衝撃を与えることは珍しくありません。競馬をやらない方にとっては、とても不思議な話でしょうし、何でやるのと言われるのもよくわかります。ただ、長く競馬をやっていると、そういう「衝撃」は案外一過性で、そう長くも続かないということも知っています。

 


   僕も25年以上も競馬に嗜んできましたから、そりゃあいろいろありましたよ。WINSに通っていたころは、とにかくやらかしたのがマークミス。模試や試験で一度もマークミスをしたことがなかったのに、こと競馬になると頻繁にやらかしたのは不思議です。いや、不思議ではないのかもしれません。




 本当に力と余裕のある受験生はマークミスをしません。僕が競馬になるとマークミスをしたのは、結局ギリギリで、冷静さを欠いたままに買っていたからでしょう。(ということは、受験では、という詮索はおやめいただけると幸いです。笑)




 レース間違い、馬番間違い等々。あらゆるミスをやってきたでしょうね。そうなると、本当なら「来い!」という思いで見るはずだった馬を「来るな、絶対来るな!!」という思いで見るようになるのですよ。心のコペルニクス的転回を感じながらのレース観戦はかなり複雑です。しかも、そういう馬の、来ること来ること。JRAは僕の当たり馬券を排除するための、巧妙なプログラムを組んでいるのではないかとさえ思ったものです。(笑)

 最近はネットで買うのでそういうことはなくなりましたが、しっかりチェックしてさあ送信、としたときにエラー……。これはもうどうしようもありません。もう一度一からやり直しですが、時間切れということもしばしば。ちなみに、一昨年の天皇賞(秋)はそれで不参加となりました。




 さまざまな「心の衝撃」のなかで、結構大きいのが、失格・降着に絡むものではないでしょうか。最近でこそルールが変わって、なかなか降着や失格にならなくなりましたが、以前は結構ありました。なかでも、




自分が買っている馬の進路を、もう一頭の自分が買っている馬が妨害




 これが起きたときの「心の衝撃」は、かなりのものです。自分の買っている馬Aがいい脚で上がってきて「よし!」と思って他の馬を見ると、自分の買っている馬Bも上がってきた、これはA-Bで決まる、最高の結果だと思った瞬間、Aが急に斜行してBがずるずる下がっていく……。Bよサヨウナラ。


   結局Aが1着で入線するも、審議の青いランプが点灯。しばらくしてお馴染みの場内アナウンス。




「第1位に入線した……」




 こんなことは何度もありましたよ。まあ、仕方ありません。どんなレースであろうが、1着の馬、2着の馬がいて、その馬の馬券を買っている人がいるのですから。

 そんな降着がらみの記憶は、ほとんど消えてしまいました、それなのに、いまだに覚えてるものが一つだけあります。





 あれは、1999年7月18日、いつも通り、後楽園WINSにいました。「事件」が起きたのは、函館第9レース臥牛山特別。いつも通り穴狙いの僕は、4人気田中勝春騎手騎乗クリエイトフレアーから。相手は、1人気でも仕方がないなと芹沢騎手騎乗のコマンドスズカを中心にしつつも、人気薄が来てくれたらうれしいなと手広く流しました。





 パドックを見ているうちに、クリエイトよりもコマンドのほうがよく見えてきたんです。そこで、こういう買い方はよくないなと思いつつ、コマンドからの流し馬券も追加買い。

 レースが始まり、僕の二頭は手応えよく、1着コマンド、2着クリエイトでワン・ツーフィニッシュ。何だ、1点勝負だったかと思った瞬間、審議の青ランプが点灯。率直に言って、コマンドは危ないなと。でもそうなれば、クリエイトからの流し馬券、つまりは本来の勝負馬券が当たりますから、まあいいかと。

 かなり時間がかかったように記憶しています。審議の結果が発表されました。

第1位に入線したコマンドスズカ号は……」





 やっぱりね。仕方ありません。とういうことは、2着クリエイトフレアーが繰り上がり1着だから、3着は何だったっけと掲示板を見ようとした次の瞬間、






「第2位にに入線したクリエイトフレアー号は……」




 

 何とまさか、まさかの1・2着同時降着!!!!

 僕の馬券は全て紙くずになりました。ちなみに、その後JRAにおいてもこんなことは二度と起きてはいません。





 でもね、考え方次第では、こういう経験は貴重な財産なんですよ。普通の人が「まさか!」と気が動転してしまうようなときでも、こういうこともあるんだよなあ、いくら確率が低いとは言え、と案外泰然としていられるんです。「心の衝撃」の耐性がぐんと上がるんです。




 結局、僕が様々な局面で出会ったアクシデントに、いつも割合平然としていられるのは、こういう競馬体験のなせる技なのかもしれません。





いろいろ起きるものなんだなあ、世の中は!!






 こういう悟りを得られたのは、弊害も伴うギャンブルの、正の効用だと思っています。




 それでも、買っていた二頭の同時降着はないよね。