ネガティブな状況を無理やり変えようとしない、という在り方

ご近所のハナミズキが咲き誇ってた。和むね。

「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉をつい最近知りました。精神科医で作家の帚木蓬生さんが紹介されていた記事を読んだのです。この概念は英国の詩人キーツが１９世紀に提唱したのだそうです。帚木さんの解説によると「生半可な知識や意味づけを用いて、未解決な問題に拙速に帳尻を合わせない。中ぶらりんの状態を持ちこたえる力」という意味だとか。

この頃ヒマに任せてちょこちょこと読み進めている行動経済学の本では、人はわからない話を聞いたときに自分のわかる領域に無理やり紐づけて理解しようとする、って話がありまして、それはなんともイタイなあと思って納得していたところで。つまり、わかりやすいこと＝善、わかりやすいこと＝正義、みたいになっているこの世紀の（自分も含めた）人のこらえ性のなさには、いろいろ課題があるんだろうなってことです。

帚木さんの解説によると（これがまた激痛なんだけど）「そもそも脳には、分かりたいという性質があるらしく、意味づけして理解し、分かったつもりになろうとする傾向がある」と（これはわたしがかじっている行動経済学の話でも出てきます。「認知容易性」のバイアスとかですね）。で、「わかりたいという欲求のいいなりにならないのが、知性。わからないという状況に耐え、悩むことは本来、価値がある知的な能力」なのですって。

すぐにわかりたがる。すぐに意味づけして落ち着きたがる。すぐに答えを欲しがる、そんな私たち…。

「結局何すればいいんですか！」「ほんとにそれでいいんですか！」みたいにリーダーに詰め寄ることは、知性の欠如ってことなんだとすれば、今、日々繰り広げられているのはそのものでしかないですね。そして、（大した根拠もなく）言いきってくれる人が便利にコメンテーターとしてメディアに呼ばれていて、それを聞く人たちは「わかりやすいこと」を評価してしまう。その結果「いやあ、そんなに単純には言い切れないんですよ」と深く考えている人ほど「わかりにくい」と遠ざけられる。

これは別に誰かのことを言っている、というわけじゃありません。わたしの中にも、あいまいさを保持する力が落ちてきているなあと思っているからです。

でもね、今の状況の中で明確な方向性なんてどこにもないですよ。あっちの方法、こっちの方法と、確からしいことが飛び交っているだけで、自分にとってそれが「正しいかどうか」は、自分が選んで決めるしかないのです。そんなときには「今は決めない」という方法を選んでもいいんですよ、ってことじゃないかと思うのです。選ばなくたって、今のまましばらく棚上げにしていたっていいんです（緊急性のある人以外は）。

これほどまでに先が見えなくて、誰も答えが見えないという時代は少なくともわたしには記憶がありません。だから今、この方向で行く！と決められないことは、特別なことじゃないと思っています。あいまいさを保持しながら、状況を眺めながら、時間の流れに身を任せながらただ生きている。そういう自分を必要以上に「劣っている」と責めたりしないっていうことも、大切なことなんだと思うのです。

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