
「カレログ」のトップページより(http://karelog.jp/)
総務省も問題点を検討へ
川端達夫総務相は13日、
Android搭載のスマートフォン向けアプリ「カレログ 」が、
個人情報保護法の観点から問題視されていることに会見で触れた。
「同じようなことが当然起こりうるので、一度しっかり研究したい 」
と述べ、総務省が個人情報保護の観点から
問題点を検討する方針を明らかにした。
「カレログ」は、
夫や交際中の男性のスマートフォンにインストールすると、
現在地やバッテリー残量などの情報を、
妻や恋人がパソコンで把握できる仕組み。
運営会社は「パートナーの居場所を確認できて安心」
などと売り込んだが、無断でソフトがインストールされたり、
ストーカー犯罪に悪用されたりする危険性が 指摘されている。
川端総務相は
「本人の同意が明確にあるということを
どう担保できるのかということが一番の要点だ。
サービス改善の中で検討しているようなので、
様子を見たい」と述べ、開発元の対応を見守る考えを示している。
ストーカー犯罪への悪用も?
「カレログ」は当初、「彼氏追跡アプリ カレログ」として発表された。
相手方のスマートフォンにアプリを入れると、
GPS機能を利用した現在位置や通話記録、
バッテリー残量などを把握できるものだった
(参考:Androidアプリ「カレログ」の鬼畜っぷりまとめ )
1年間1980円の有料サービスとしてリリースしたが、
プライバシー保護などの問題から抗議が相次いだため、
開発元の有限会社マニュスクリプト(東京都中野区)は、
「近日中にアプリの修正、または、
サービスの根本的見直しを含め検討する」
と表明する騒ぎになった。
カレログのサービスは、
追跡される側がアプリのインストールに
同意することが前提となっているが、
作業がスマートフォン上の画面で完結してしまい、
同意確認が不十分なのが問題点として指摘されていた。
セキュリティ専門家の高木浩光氏は
カレログの違法性を検証。
一連のツイートがTogetterにまとめられている 。
不正指令電磁的記録(刑法第168条の2第1項第1号)該当性:
「人が電子計算機を使用するに際して
その意図に沿うべき動作をさせず、
又はその意図に反する動作をさせるべき」
⇒ 端末使用者に同意がなければ該当。
「不正な指令を与える」⇒ 該当。
当 該携帯電話の電源を切ってカレログは、交際相手のスマートフォンにインストールすることで、
入れ直したときにも自動起動するようになっていれば、
カレシが電子計算機を使用するに際して
その意図に反する動作をさせるものと なることから、
インストールしたカノジョの行為は
「いつでも実行できる状態に置く行為」と言え、
不正指令電磁的記録供用罪が成立し得る。
GPS機能を使って現在地の追跡や通話記録、
バッテリー残量のチェックなどが可能なアプ リ。
何者かが勝手に他人のスマートフォンにインストールすれば、
個人情報が筒抜けになる。
「ストーカー行為に悪用されかねない」などとして、
危険性に気づ いた人権団体や一般市民からの抗議が殺到した。
マニュスクリプト社は31日、騒ぎを受けてHPにお詫び を掲載。
特 に、端末所持者本人との同意の上でとして、
利用できるサービスである旨を
再三にわたって確認するような
登録システムの採用、
並びに規約を違反した不正使用があった 場合の
強制退会措置などプライバシーの保護におきましては、
配慮をしてきたところではありますが、
「本人との合意を得たという担保が不十分である」
という 多くのご意見を賜りました。
人権についての配慮をされておられる
団体様をはじめとして、もっとアプリ使用の同意を
確認するための措置を講じるべきだ、というご意見です。
この点におきましては技術的に、
またサービスとしてどういう対応が可能か、
早急に検討、対応する所存です。
「現在、サービスの根本的な見直しを行っております」と記載した。
その後、同意確認の徹底などの改善策を打ち出すとともに、
通話記録の送信サービスを停止。
「れんあい支援アプリ カレログ」に正式名称を改めた。
スパイウェアにも認定
セキュリティ対策会社のマカフィーも、
カレログを「Android/Logkare.A」という名称でスパイウェアとして認定。
9月5日、「正規のソフト ウェアですが、ユーザーが知らぬ間に、
明確な合意を得ないまま、個人情報を第三者に転送できる機能が
組み込まれています」とHP上で警告 を発した。
ただし、バージョンアップ版については、
スパイウェア認定を見送ったという。
カレログ開発のマニュスクリプト社長の二枚舌
セキュリティ専門家の高木浩光氏は
「話題の『カレログ』、しかしてその実態は。 」 というブログ記事の中で、
カレログを開発したマニュスクリプト社が「GALAXY S2 裏活用バイブル」
という書籍の企画・編集に関わっていたことを指摘。
この書籍ではカレログに「究極のストーキングアプリ!」
というキャッチフレーズをつ け、以下のように紹介している。
バックグラウンドで操作を行うので、ケータイWatchは、
どのタイミングで情報を取得しているか相手には分からない。
相手のその日の行動そのものが丸わかりになってしまう。
しかもアプリアイコンが表示されないので
アプリが作動している事も悟られないのだ。
セキュリティ会社McAfeeがカレログを
スパイウェア認定したことを報じた記事 で、
カレログについて「本来、彼氏に見つからずに
監視するというコンセプトであった」と説明した。
カレログの機能を考えると当たり前の内容に見えるが、
これに対してマニュスクリプトの社長がツイートで反論 。
がーん、インプレスさ~ん自身が企画・編集する書籍では
「本来、彼氏に見つからずに監視するというコンセプト
であったため…」こんな事一言も言ってない~。
それ以外は概ね話したとおりの記事でした。
端末の持ち主に気づかれずにインストールし、
バックグラウンドで行動を追跡できることを
売りにした紹介をしていながら、
ニュース媒体の記事に対しては
そんな事実はないとしらを切るようだ。
高木氏のブログによれば、
マニュスクリプト社の社長は
「ご批判のムックについては、色々事情もあり、
多くはここでは語れません。批判は甘んじて受けます。
しかるべき説明はしかるべき場所でしてきます。」
と一時ツイートしていたそうだが、現在は削除されている。
情報化時代の落とし穴か
パートナーが浮気や不倫してないか……。
裏でコソコソ悪いことをしてないか。
男女がつきあっていれば、誰しも気になることだろう。
そういった意味では携帯電話の情報が
リアルタイムで送信されるこのアプリは
夢のような逸品だが、個人情報が筒抜けになるのは間違いない。
あらゆる情報がスマートフォンで持ち歩けるようになった一方で、
P2Pソフトやコンピューターウイルスなどによる
個人情報の流出は跡を絶たない。
情報化時代が加速する今こそ、
個人のプライバシーをどう保護するのかが大きな課題として浮上してきた。
ブロガーの反応は
情報セキュリティの専門家である新倉茂彦氏は
「カレログの位置情報を偽装するツールを見て思う
『もっと手前に考えた方がいいこと』 」という記事の中で
以下のように疑問を呈している。
名前の通り彼氏の行動をトレースするのが目的なのですよね?小林正啓氏と櫻井美幸氏による花水木法律事務所も、
位置情報やアプリ一覧、通話記録・・・って、どうなのでしょう?
何のやましいことがなくとも、ここまで管理されるのは、
私だったら無理です(笑)
アプリの存在意義に否定的だ。
「大阪発『性犯罪者追跡アプリ』はどないでっか 」で
以下のように書いている。
端 末側の承諾があればよい、というものでもなかろう。一方で、肯定的な意見もある。
「『カレログ』入れてもいいだろ?やましいとこ無いなら」
といわれて断れる若い男女はそういない。
プラ イバシーの問題はもちろん、
「カレログ」に起因するデートDVすら
具体的に想定できる以上、このソフトは法的に、
かなり問題だといわざるを得ない。
ソーシャルウェブ研究会を主宰する
アナリストのイケダハヤト氏は、
「本当にこれを使ってくれるユーザーはいるの?
という疑問は拭えません 」と懸念を示しながらも、
カレログの技術自体は高く評価。
ターゲットをカップルではなくファミリー層に広げるべきだと主張している。
例 えば「自分の子どもがどこにいるか」を
(子どもにスマホを持たせる必要はありますが…)
知ることができる「家内安全アプリ」としても活用できるでしょう。
高齢になった祖父母が元気かどうかを
リアルタイムに知ることができる「家族のつながりアプリ」
もありえる切り口です
(こちらも祖父母のスマホ利用が前提に なりますが)。
カレログ対抗アプリも登場
カレログが話題になると、それに対抗するアプリも登場してきた。
「カレログチェッカー 」は、自分のスマートフォンに
カレログがインストールされているかをチェックし、
もしインストールされていた場合は警告を出してくれるアプリだ。
「カレログ アラート 」は、
カレログが適切に利用されているかをチェックするアプリ。
同意の下でインストールしたかを確認したり、
通知エリアに常にカレログアプリが
インストールされていることを表示したりする。
「Location Spoofer 」はGPS情報を偽装することができる。
もしカレログをインストールされていても実際の位置情報が送信されない。
海外にはもっと強力なアプリも
「Cerberus 」 (ケルベロス)というアプリは
使い方によってはカレログよりも恐ろしい。
GPSでデバイスを見つけるのはもちろん、
ウェブから端末をリモートコントロール したり、
カメラを遠隔起動して撮影したり、
マイクから音声を録音したりとかなりの高機能。
ただし、このアプリは盗難防止を目的としたものであるため、
自分 の端末にインストールすることが前提。
当然ながらこのアプリは問題になっていない。