先月の事なのに、まだその余韻にグッと浸れる演奏。
 
1月17日はバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会、
 
メンデルスゾーンのオラトリオ『エリアス』に出演。
 
 
本来、ソリストは全員外国人キャストが来日する予定でしたが、
 
新型コロナによる入国規制の影響で、急遽来日叶わず。
 
エリアス役として正式なオファーを受けたのは年が明けて、本番10日前ほど。
 
私が最も大好きなタイトルロールの1つであるエリアス役を、BCJの中で歌えるという機会はまたとない事ですので、
 
心して、そして責任を持って務めさせていただきました。
 
本来エリアスを歌う予定だったイムラー氏のエリアスは、以前ドイツで共演した際に素晴らしさを肌で感じたのもあり、日本で聴けることを楽しみにしていたのですが、
今回は彼の分も、この日までエリアスに全てを投じなければと思いました。
 
 
このコロナ禍で、
これだけの大編成のオラトリオが実現した事自体、奇跡だと思います。
専門家の先生方のご指導のもと、常に奏者同士の距離を取り、演奏中以外にも気をつける事が山ほどあったのですが、
全員が健康でこの日を終えられた事、本当に良かったです。
 
緊急事態宣言による人数制限はあったものの、当日は多くのお客様にメンデルスゾーンの音楽を生で体感していただけました。
 
遅くなってしまいましたが、改めてご来場誠にありがとうございました。
終演後も拍手なりやまず、スタンディングオベーションでのカーテンコール、とても嬉しかったですし励みになりました。
 
この状況下、残念ながら今は演奏会に足を運ぶのが難しいという方もたくさんいらっしゃることと思います。その方々の想いもしっかりと受けながら私たちは心して演奏していく必要があります。
みなさまからの想い、ステージにもしっかり伝わっていました。
きっとそのエネルギーも、あのカーテンコールに現れていたのかなとも思いました。
 
ステージにいる全員が想いを集結させ演奏に臨み、そこで生まれたメンデルスゾーンの音楽は、オペラシティの高い天井に存分に響き渡ったと思います。
 
 
 
↑終演後、今回のソリスト・マエストロと共にカメラ
 
「エリアス」は大変ドラマティックな流れとなっており、演奏中動かなくても音楽で完全に芝居となっています。
 
ソリストはステージの一番前に立ち、客席を見ながら歌うのですが、
そこには嵐や、民衆のドラマなど、色々な景色がぐるぐると見えるようでした。
素晴らしいチームワークでこの物語を堪能できた事に感謝。
 
 
 
雅明マエストロの導く音楽の中でエリアスを務めるのは、ずっと前からの夢でした。
 
まさかこんなに早く叶うとは思いませんでした。
 
この作品、冒頭、序曲の前にいきなりエリアスのレチタティーヴォで始まるのですが、第一声を出したその瞬間の興奮は、一生忘れる事が出来ないでしょう。忘れたくないものです。
 
 
エリアスの最後のアリオーゾ
 
「そう、例え山々が崩れ、
丘が陥落する事があったとしても、
主の恵みは私から離れていくことはなく、
平和の約束が地に落ちることはありません」
 
このような歌詞で、エリアスの出番は締めくくられます。
 
この歌を歌いながら、直接的に意味は違うものの、なんだか改めて日々命を与えられ過ごしている尊さを噛み締めました。
 
これからの1年も、まだ世界中が難しい状況に置かれているという現実を拭い去ることは難しいでしょう。
 
しかし、どんな時であれネガティブな思念に囚われるのではなく、常に感謝の気持ちを忘れず豊かな心を活かし続けていきたいと思います。
 
 
 
なんと、大活躍のバリトン大西宇宙くんも観に来てくれました!久々の再会にテンションも上がりました。
大学は違ったものの、学年的には同期。
学生時代からの付き合いです。
 
同じタイプのバリトン同士、同じステージに立つことはなかなか叶いませんが、またの再会を約束しました。
 
 
さて、バッハ・コレギウム・ジャパンでは、
 
今月も2月19日のサントリーホール、20日の大阪いずみホールにて、
 
バッハ《ヨハネ受難曲》のイエスを務めることになっております。
 
こちらも大役…感謝して歌わせていただきます。