試行錯誤 (お面の作り方)
2001年のこと
新世紀を迎えたことでもあるし、以前から自分の画題にもなっている『お面』を絵に描くだけでなく、実際的にかぶれる立体造形物として制作してみようとふと思った。
しかしいざ作ろうとしても、よく考えたら作り方を知らない。
周りにお面を作っている人もいないし、頼る術も知らなかった。
なんだか寄る辺なき身の上だったので、全部自分で考えて作ることにした。
先ずは材料の吟味である。
何が良いのだろう?
なんせ加工しやすい物がよい。
木彫りのお面も考えたが
木を加工するのは容易ではないので早々に却下。
そこで思い付いたのが紙のお面。
紙なら画用紙、ケント紙、藁半紙と沢山持っていた。
当時は画家だったのだ(今もそうだケド。)
紙を細かくちぎってお湯でふやかして、弟の顔に貼付けてお面を形作っていった。
新聞紙でやったり、藁半紙でやったり、ケント紙でやったりしたがしっくりこない。
藁半紙は弱く加工が手間だし、ケント紙は固くてこれまた加工が手間だ。
新聞紙はお話にならなかった。
自分の理想の形に中々成らないでアレコレ試していたら、弟がもうお面の土台になるのは嫌だと逃げ出してしまった。
しょうがないので、土台になるような物をアレコレ探したがみつからなかった。
お鍋のフタや、丸めた新聞紙の塊や父親の顔など試したがどれも理想から遠かった。
はたして理想の形とは?
自分の顔だ。なんせ自分がかぶるお面なのだから。
自分を土台にしてお面を作ってみたが、やりにくいったらない。すぐ挫折した。
もうひとつ自分の顔があればいいのだ。
という訳で型取り材で自分の顔の型をとることにした。
何で早く気付かなかったんだろう。
歯医者さんで歯の型を採る何やらドロッとしたもので顔の型を採り(父親と弟が)、そこに石膏を流し込んで、神野翼のライフマスクをつくった。
石膏の顔は文句を言わないので非常に作業がはかどった。
素材の紙はお面に最適なのは和紙だった。
しなやかで強くなにより美しい。
和紙にも色々あるが分厚く頑丈な鳥の子和紙が良い事がわかった。
和紙を細かくちぎってお面の形にするのだが、和紙だけではもろいので和紙どうしを接着しなくてはならない。
和紙用の樹脂などがあったが保管が難しく、樹脂に硬化材を混入しなくてはならないのが面倒であるし、なにより説明書をなくして樹脂と硬化材の混合比がわからなくなってしまった。
それより繊細な作業が性にあっていない。
膠で固めたりもしたが、これも面倒な上に、ただごとでない臭いを放つので辟易してやめた。
加えて膠の主原料は動物の脂なので家で飼っている犬がお面を食べてしまった。
結果的に木工ボンドを水で薄めたものが経済的かつ扱い易いので、これに落ち着いた。
こうやって和紙のお面を作れるようになった訳だが、この和紙お面を作れるようになるまで一年を費やしていた。
傍からみたら、絵も描かず家に篭ってゴソゴソしていた訳だから、
いったい何をしているんだろう?
と思われていたようだが、
2001年は別にぼんやりしていた訳でなくお面の研究をしていたのだった。
ちゃんちゃん。
写真撮影 馬渕久美子