えー、前回記事でピケティの『21世紀の資本』のレビュー記事を書いて、さっそく続きを書きたいのですが、意外と書くのが大変なので今回はもうちょっと柔らかい話題で、いわゆる成功哲学、自己啓発の類の本のレビューです。とは言っても、この本『残酷すぎる成功哲学』はそれまでの成功哲学や自己啓発の本いわゆるナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』や一時期流行して日本でも話題になった『ザ・シークレット』などとは一線を画する内容、というよりむしろこれらの書籍の内容を科学的なエビデンスを用いて否定する内容の書物となっています。

 

 この本の目的は、科学的な調査によるエビデンスを用いて、それまで巷間言われてきたような成功法則というものの実際の効果を検証するということです。

 

 私、以前『世界の経営学者はいま何を考えているのか』という本を読んだのですが、コチラの本では「現在の経営学の目的を簡単に説明すると、いわゆるサラリーマンの居酒屋談義的な企業経営の成功法則を実際の調査データを分析することでその妥当性を検証することである」といったことが書かれていたのですが、この『残酷すぎる成功哲学』は企業経営の成功法則ではなく、個人の成功の焦点を当てたものと言えます。ただし、企業経営の成功というものが、利益や売り上げや株価の上昇といった客観的な数値データで測定しやすいのに対して、個人の人生の成功といったものはそのような単純な数値データで客観的に測定することが不可能です。たとえば、幸せな結婚生活を送ることと、社会的金銭的な成功を得ることと、後世まで評価されるような偉大な芸術、もしくは文学的な作品を残すことなどといったことを比較してどれが最も個人の成功において重要であるか?に関して客観的な数値データを用いて比較してもほとんど意味はありません。ですので、個人の成功や幸福の基準においては、客観的な数値データ以上に主観的な価値基準といったものが非常に重要になります。

 

 実は私は学生時代には、自己啓発本を読み漁っていたという黒歴史(?)があるのですが、そんな私にしてみると自己啓発も雨乞いみたいなニューソートの思想から、ここまで科学的な分析対象になっているという事実自体に感慨深いモノを感じさせるのですが、同時に、この本の面白いのが、特定の分野で卓越した業績を残した人物の紹介をしながら、同時に現代の60億人との競争に勝ち抜かなきゃいけないインターネット社会においてナンバーワンを目指すことの不毛さを説いてる点です。

 

 例えば、古い時代の村社会であれば120人程度のグループで一番になれば自分の能力に自信を持てたので誰でも何かしらの能力で村で一番の能力を持つことが出来ましたがネット社会ではいかなる分野でも60億人と競争しなきゃならないから、凡人がナンバーワンを目指すのは絶対不可能とのこと。そうなると重要なのは、如何に競争に勝ち抜いて卓越した能力を獲得するかということ以外に(あるいはそれ以上に)、如何に世間の情報や価値感に影響されて不毛な競争や努力に時間や労力や金銭を浪費しないか?ということが限定されたリソースを分配する自分自身の人生を充実させるための重要な要素であり、そのためには他者に

影響されない自分自身の価値感や価値基準を確立することが必要であると説きます。

 

 つまり、この本をこれまでの通俗的な自己啓発本と違ったものにしている特徴としては、客観的な根拠を欠いた個人的な主観を思い込みに基づいた偽の成功法則を否定し、同時に、「個人の能力や可能性は無限大で条件さえ満たせばアレもコレもなんでも思い通りに手に入ります!!」といった非現実且つ空想的、誇大妄想的な成功哲学も否定し、どこまでも欲望や可能性を拡充していくのではなく、自分自身の価値感を確立しその価値感に基づいて不要なモノを切り捨てていくという現実的かつ賢明な態度を推奨していることの2点が挙げられます。

 

 ちなみに、細かい具体的な内容は次回以降で解説する予定ですが、一つだけ具体的な内容について触れると、先に名前を挙げたナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』や『ザ・シークレット』で推奨されている「成功した自分の姿」を思い浮かべる方法は完全に否定されています。どうやら心理学や脳科学の研究で明らかになったことは、人間の脳は自分が成功したイメージを描くことと、実際に成功することの区別がつかないらしく、自分が成功したイメージを強く思い浮かべると、脳は実際に自分は成功したのだと勘違いしてしまい、リラックスして現実に成功を手に入れる努力を実行することが困難になり、成功を遠ざけてしまうとのことです。では、何故現実には成功を遠ざける偽の成功法則がこれほど流行したのかと言えば、成功したイメージを強く思い浮かべること自体に一種の麻薬的な快楽を伴うので、そのような快楽を目的として人々は自分の脳内に成功したイメージを思い浮かべるそうです。この本では書かれてませんが、おそらくは、自己啓発セミナーなどで集団的にそのような成功したイメージを思い浮かべることで個人の思い込みや信念はより強固になり、より強烈な快感を集団的に体験するのでしょう。

 

 しかし、所詮それは麻薬的な快楽に過ぎず、ひとたび心地良い白昼夢のような集団的妄想から醒めれば、そこに現れるのは、多額のセミナー受講料の支払いによって空になった貯金通帳か、もしくは借金だけです。

 

 ところで、実は私がブログを書き始めた当初の理由は自己啓発セミナー批判であり、自己啓発セミナーによって騙されてデマを垂れ流すセミナー屋に搾取される被害者を減らしたい、という想いからネット上で文章を書き始めたんですね(そういう意味では、今現在、詐欺師のような政治家や評論家に騙されないための啓発活動を行っている現在の活動と結構モチベーションは似通っているように思います)。そのように一貫して自己啓発や成功法則なるものを批判してきた私自身の直感や実感とも適合する内容で、また、私が直感的に感じてきた自己啓発の「胡散臭さ」が客観的な数値データを用いて論証されているところが面白いと感じました。

 

 ちなみに、この本はkindleのアンリミテッドのサービスに登録されており、アンリミテッドのサービスに登録している方であれば無料で読めます。なるほど、となれば搾取されることもなく安心して読めますので、内容解説はしますが、まあ実際に読んでみると非常に面白いですよ。

 

 

↓先日の放送のアーカイブ動画です、出来ればチャンネル登録もオナシャス(。-人-。) 

 

『channel kattann』

 

 

↓応援よろしくお願いします(σ≧∀≦)σイェァ・・・・・----☆★

 

↓新しい動画投稿しました!!高評価ヨロです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)◞