今回は、「ザ・フォーミュラ~科学が解き明かした「成功の普遍的法則」~」(著 アルバート=ラズロ・バラバシ)という本のレビューです。

 

最近、比較的難解な本を多めに読んでいたので、久しぶりにサラッと読めるような自己啓発本。ただ、内容としては、比較的しっかりしていて、単純な「こうすれば人生上手くいきます!!」みたいな内容とは少し違った感じです。

 

著者の専門は、ネットワーク理論。元々は、物理学者だったようですが、当時注目され始めていたネットワーク理論に鞍替えし、そこから、「成功者は如何にして生み出されるか?」といった問題を統計やネットワーク理論を用いて分析したのがこちらの本です。

 

私は、以前、「残酷すぎる成功法則」(著 エリック・バーカー)という本のレビュー記事を書いたのですが(「『残酷すぎる成功法則』著エリック・バーカー レビュー①~成功哲学も科学的分析対象へ?!~」「『残酷すぎる成功法則』著エリック・バーカーレビュー②~成功における内向性と外向性~」)、内容やコンセプトは似ています。

 

どちらも、成功や成功者について分析する上で、個人的な主観や思い込みを排して、膨大な研究事例を集めたうえで、統計などの手法を駆使して、科学的かつ客観的な「成功法則」を見出すよう努めています。

 

ただ、印象としては、「ザ・フォーミュラ」の方が、より科学的に精密な分析を行っているように思えます。「残酷すぎる成功法則」は、比較的広範な成功や成功者を研究対象にしているのに対して、「ザ・フォーミュラ」は、定量的に分析可能な分野に分析の対象を絞った上で、成功に関して、「個人的な精神的充足」といった主観的な要素を排して、名声の獲得という「社会的成功」に限定して分析します。

 

つまり、分析を対象を、客観的に定量化できる分野に絞り、成功の定義を社会的に限定することで、より厳密な分析を行っているんですね。

 

序文では、「成功で重要なのはあなたではない。社会なのだ。」と書いているのですが、まあ、そもそも成功の定義を社会的な名声の獲得に絞っているので、「個人ではなく、社会や周囲の環境が成功の重要な要素」という結論になるのは、当然といえば当然かもしれません。

 

ただ、著者がこのような分析をしたことにも、やはり理由はあって、一つは、著者がネットワーク理論の研究者であること、それから、もう一つは、何故、非常に、まじめで勤勉で、才能もある努力家がなかなか成功できない一方で、幸運に恵まれた凡庸な取るに足らない人間が成功することがあるのか?という問いから、研究をスタートしているので、やはりこうした分析には一定の意義があるように思えます。

 

で、まあ、長々と、前置きを述べたのですが、本書の分析は、具体的な、ネット上の検索回数などを成功の基準とします。なので、まあかつて流行した「幸せな小金持ち」ですとか、あるいは社内での出世などといった、個人レベルのささやかな成功や幸福は、分析の対象外となっています。

 

とはいえ、ここで分析される社会的な現象と、より小さなコミュニティでの名声の獲得には、共通点も多数存在するでしょうから、必ずしも一般人には無縁で役に立たないということはないでしょう。

 

そして、この本では、能力と成功を切り分け、そこからさらに、テニスや短距離走の成績のように、定量可能な能力と、音楽や芸術のような定量困難な実力を切り分けます。

 

そして、テニスや短距離走といった定量可能な能力が求められる分野では、成功に必要なのは、能力であり、音楽や芸術のような実力が定量化できない分野では、実力ではなく、社会的な評判や、有力者とのコネクションといったネットワークの力が個人に成功をもたらすとしています。

 

まあ、こうまとめてしまえば当たり前のことが書かれているだけなんでけどね。ただ、このように成功に必要な要素を分類することで、「ひたすらまじめに頑張って努力すればいつかは報われる」といった幻想からは解き放たれ、報われることのない無駄な努力のために貴重な時間や労力を浪費させることを回避することができるでしょう。

 

また、気が向いたら、より具体的な内容について書いてみようかと思います。