ボブ・ディランによるフランク・シナトラ曲のカバー・アルバム「シャドウズ・イン・ザ・ナイト」 | 西陣に住んでます

ボブ・ディランによるフランク・シナトラ曲のカバー・アルバム「シャドウズ・イン・ザ・ナイト」

ボブ・ディラン
Shadows in the Night by Bob Dylan


アメリカン・フォークのシンガー・ソングライター、ボブ・ディランの選曲によるフランク・シナトラのスタンダード・ポップの新作カヴァー・アルバムです。

何ともミスマッチすぎる組み合わせです(笑)。
[前記事]で紹介したダイアナ・クラールのアルバムは、
フォークソングを歌ったジャズシンガーのアルバムでしたが、
このアルバムは、
ジャズスタンダードを歌ったフォークシンガーのアルバムと言えます。

世間による「プロテスト・ソングの伝道師」というレッテルを毛嫌いするボブ・ディランですが、私もボブ・ディランは「ただのオッサン」だと思います(笑)。誤解を恐れずにさらに続ければ、はっきりいって歌唱はめちゃくちゃ下手と言えるかと思いますが(ファンの方、本当にごめんなさ~い・・・笑)、いつもどこからともなくひょっこりと現れて(笑)、先入観を除けば極めて素直な歌詞を、ハーフ・トーキング&ハーフ・シンギングのヴォーカル・スタイルで聴かせてくれるのは、究極にナチュラルな最高のオッサンだと思います。そしてこのようなオッサンこそ、現代最高峰の吟遊詩人と言えるのではないかと思います。

その吟遊詩人が、その対極の存在と言えるセレブリティのフランク・シナトラをどのようにカヴァーするのか、めちゃくちゃ興味があったのですが、その内容は完ペキにぶっとんでいました(笑)。

シナトラ・ミュージックの大ファンというボブ・ディランが選んだ曲は、アルバムタイトルから連想される"Strangers in the Night"とか"The Shadow of Your Smile"などのシナトラの定番曲ではなく、ぼちぼちマニアックな曲が多く、よせばよいのに(笑)、それなりの歌唱力が要求されるバラッドの連続でした~!!!しかもバックがシンプルなフォーマットなので、バックで誤魔化すことはできず、退路を完全に断ったシチュエーションでのシナトラ曲へのチャレンジです。バラッドということで、持ち前のハーフトーキングを発揮できず、無理やり全部シンギングするもんだから(笑)、ところどころ声は上ずり、結果として生まれた作品は、大きな純白のキャンバスの端っこにクレヨンでチューリップの絵を書くような現代アートのような感じ(笑)と言えます。もちろん、音楽に対してぼちぼちオプティミスティックな私は全然くよくよしていません。オノ・ヨーコ「ダブル・ファンタジー」のようなちょっと次元の異なる聴き方で末永く楽しんでいこうと思っています(笑)。


Bob Dylan - Full Moon And Empty Arms


Bob Dylan - Stay With Me



なお、ボブ・ディランが選曲したシナトラの曲は
あくまで私の趣味ですが、
「それを選ぶ?」って思うくらい
なかなかいい曲を選んでくれています。

特に私が大好きなトミー・ドーシー楽団時代のシナトラが歌った
"Full Moon and Empty Arms"が選ばれていたのは
ハッキリ言って目頭が熱くなりました~。


1. I'm a Fool to Want You


2. The Night We Called It a Day


3. Stay with Me


4. Autumn Leaves


5. Why Try to Change Me Now


6. Some Enchanted Evening


7. Full Moon and Empty Arms


8. Where Are You?


9. What'll I Do


10. That Lucky Old Sun



ちなみに、このボブ・ディランのアルバムは、
合衆国の辛口の批評家からぼちぼち高評価を受けています。
やっぱり聴く人が聴くと違うんだと思います(笑)。
確かに言われてみれば、
"Some Enchanted Evening"や"That Lucky Old Sun"は
最高に味がある作品と言えなくもないと思います!


ボブ・ディラン