報道倫理を著しく逸脱した古賀茂明氏のイスラム国報道における言説(1) | 西陣に住んでます

報道倫理を著しく逸脱した古賀茂明氏のイスラム国報道における言説(1)

古賀茂明氏



民放連の放送基準には、報道の責任において「ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない。」と規定されていますが、今回のISILによる邦人殺害事案に関するテレビコメンテイターの古賀茂明氏の言説の一部は、個人の憶測に基づくものであり、報道倫理を著しく逸脱した危険な扇動が含まれているものと考えます。以下、4つのテレビ番組におけるその言説を2回にわたる記事で検証したいと思います。まず、この記事では、最初の2番組について詳しく見ていきます。



メモ2014/09/26 テレビ朝日「報道ステーション」
国境に迫る「イスラム国」 トルコから見た”その姿”



男の子古舘伊知郎キャスター


古賀さん、クルド人の方々は、トルコにもシリアにも国境関係ない状態で暮らしていらっしゃるから、ああいうふうに親せきがシリアにいる、イスラム国がどんどんどんどん侵攻しているというところで、クルドの人達が駆けつける場面があるんですね。


男の子古賀茂明氏


我々が普通考えている「国と国」っていうような感じではないですね。前提を変えて見ないといけないと思うんですけど、(1)今我々はヴィデオにあったように「悪魔のようなテロ集団、イスラム国に対してアメリカがヨーロッパとアラブの有志と集って連合して空爆する正義の戦いをやってます」というのを我々は見せられているわけですよね。そこには一貫して「これはアメリカがアメリカの敵と戦っているんじゃないんですよ」、あるいは「アメリカがキリスト教の敵と戦っているわけでもないですよ」、「そこには地域と宗教を超えた全世界の敵、イスラム国と戦う地球連合軍」みたいな、そういうストーリーを見せられているわけですね。それでこういう戦いっていうのが、そういうふうに見えるというのは、実はちょっと注意して見なければならなくって、(2)これはかなりの部分がアメリカの世論対策っていう性格があるわけですね。そうしないとアメリカとしては国内で選挙もあるし、国際的にもそういう世論対策が必要であるということで、そこに相当気を使ってやっているということだと思います。で、中東のメディアであるアルジャジーラとか、ああいうもの見ていると、かなりちょっと違った絵が見えるんですけれども、特に今よく考えてみると、世界中で言われている「国家の枠組みを超えた戦い」っていうようなこと言ってますね。で「そういうテロが出てきた」と。で、ただよく考えてみたら、「国家の枠組みを壊したっていうのは誰なんだろうな?」と。


男の子古舘伊知郎キャスター


(3)アメリカじゃないですかね。


男の子古賀茂明氏


ええ、そういうふうに私には思えるんですね。(4)イラクで間違ってっ戦争してフセイン政権倒しちゃって国の枠組みが壊れちゃっていると、あるいはリビアのカダフィーもいなくなっちゃったし、今シリアで同じようなことが起きているんですけれども、国家が流動化しているみたいなところまでやってしまうと。結局今起きていることっていうのは、実はなんだかんだ言ってもアメリカの戦争なんじゃないんですか?というふうに私には見えるんですね。で、今日本は集団的自衛権っていうのは使えませんから、ある意味ラッキーという感じもするんですけど、(5)もし集団的自衛権が来年実現してアメリカから要請されたらどうなるのかな?と、断れないんじゃないかな?とちょっと心配があります。こういうふうに正義の戦いだと、アメリカが造っているんですけど、でも世界の正義の戦いに来ないんですかといわれて、断れるのかな?と。やっぱり単純に正義というのをこれだというふうにつかまえてそこに乗っていくということはやっちゃあいけないと思うんですよね。でも何もしなくてもいいのかというとそうではなくて、やっていいことは、(6)例えば難民に対する支援ですね。これはケチケチしないでできることはどんどんやってもいいと思います。だけど、アメリカの正義っていうものに乗っかって戦いに行くと何が起きるかというと、おそらく日本もテロの対象国となって、東京ももちろん危なく、日本人も危なくなりますし、世界中の日本人が狙われる。テロに日本人がそんなに強いかっていうと、とてもそうも思えませんので、そういうこともよく考えないといけないんじゃないかなって思いました。



ちなみに以上の発言は、ISILのテロの犠牲となって殺害された湯川氏がISILに拘束されたことが既に報道された後に放映されたものです。これらの古賀氏の発言について(1)~(6)の下線で示した個所を中心に詳しく見ていきたいと思います。



(1) 古賀氏は、事実の報道に対して「悪魔のイスラム国に対して有志連合が正義の戦いをしている」というストーリーを見せられていると主張しています。これは陰謀論者が批判対象の反論を無力化するために頻繁に用いる「井戸に毒を入れる論法(Poisoning the well)」という手法です。この手法によって、「悪魔のイスラム国」「正義の有志連合」というのは有志連合が造ったストーリーであり、このストーリーを支持する人物は、ストーリーを造る側に与する人物であるという印象を視聴者に持たせます。この手法の最も有名な例としては「アメリカ政府は宇宙人の存在を隠している」「アポロ11号は月に行っていない」などがあり、視聴者がその事実を直接確認できない場合に特に有効となる手法です。つまり、ストーリーを合理的に支持する報道をすべて陰謀であると言えばよいわけです。ここで重要なのは、少なくとも、ISILが繰り返している極悪非道の人権侵害自体は明らかに悪魔の行動であり[→記事] 、少なくともこれを抑制するための活動が必要であるということは自明です。それに対して、このような古賀氏の言説は、ISILのプロパガンダにとって非常に歓迎されるものであり、ISILの人的資源の増強に貢献する方向のものであることは間違いありません。


(2) 古賀氏は、井戸に毒をもった上で何を主張しているかといえば、アメリカが世論対策を目的として空爆を実行しているということです。まず、この古賀氏の主張は、完全に古賀氏個人の憶測ですが、これをあたかも事実であるかのように堂々と話しています。これは「自信満々の憶測(confident speculation)」という扇動家・詐欺師・カルト教団などが多用する方法で、視聴者を心理的に騙して自論に誘導するものです。一連のコメントを見ればわかりますが、古賀氏は自論を説明するための合理的な根拠をまったく示していません。ここで基本に戻ってみると、政治家は国民の代表であるので国民が支持する政策を実現しようと努力します。そしてその政策が実施された場合、当然世論はその政策を支持します。つまり、選挙時の公約に含まれていないようなISIL問題のような新しい事案に対して、国民の意向を汲んで政策を実現した場合でも選挙対策で政策を実施した場合でも見かけ上はまったく違いはなく、これをどちらか判断すること自体がまったくミーニングレスであると言えます。また「世論対策」という理由で合衆国政府を批判すること自体、論理的に間違っています。減税や高速道路無償化(笑)などの措置とは異なり、今回のテロリズム対策は市民に対する直接的な利益の供与にはならないため、仮に世論の支持が上昇すれば、それは合衆国市民の意思に基づく自発的選択の結果であると言えます。すなわち、古賀氏が批判すべき対象は、合衆国政府というよりはむしろ合衆国市民と言えます。


(3) 日本の一部マスメディアの報道にありがちなのは、一言「ISILも悪いが」という文言を入れた後で、それを作った責任は大義なきイラク戦争を行ったアメリカにあるとして延々とアメリカをヒステリックに批判するという論調です。例えば、テレビ朝日「報道ステーション」では、2014年6月のイスラム国樹立宣言から日本人人質事件が発生するまでの間、ニュース解説でISILを取り上げたのは、6/16, 8/12, 8/18, 9/15, 9/23, 9/24, 9/25, 9/26, 12/15の計9回であり、このうち湯川氏が拘束された8/18とアメリカを名指ししないで間接的に批判した9/25を除く計7回でアメリカを名指しで延々と批判しています。これに対してISILを明確に批判したのは、驚くべきことに、計21分間の時間のうち計30秒程度であり、具体的には、「もちろんイスラム国がやっていることはひどいわけですが、・・・(6/16古館氏)」「イラクやシリアで残虐な行為をしているだけじゃなくて、VTRにもありましたけれども、欧米からきている兵士達がパスポート持って元の国に戻れば溶け込めるわけですから、そういう人達が元に戻った国でテロをするんじゃないかという恐怖感があって・・・(09/15恵村氏)」「こうやって5日間で14万人(難民)と、まぁ数字に表しても、一人一人の壮絶な悲しみと理不尽、こういうものはなかなか伝えづらいという、とんでもないことが国境を越えて起きているわけですが、・・・(09/24古館氏)」「イスラム国がやっていることはとんでもないことだと思います。一方で・・・(09/25古館氏)」という言葉のみであり、これらは、この後に続くアメリカ批判を心置きなく行うためのアリバイのように使われています。何よりもこのISIL批判とアメリカ批判の圧倒的な量差は著しくアンフェアであると言えます。おそらく、報道ステーションの報道は、ISILのメディア戦略が最も成功している事例であると思います。ISILが極悪非道なことを実行するたびに、この番組によってアメリカがコテンパンに批判されるからです。ごく普通の素直な目で見れば、ジャーナリズムのプライオリティーが、よく知られている「アメリカが過去に犯したイラクでの過失」ではなく、あまり知られていない「ISILの現在進行中の人権侵害」にあるべきことは明白です。


(4) アメリカ合衆国が、イラク戦争の理由として大量破壊兵器に固執したことについては、批判されるべきであると考えます。ただし、恐怖政治で長期間にわたって大量虐殺と人権侵害を行っていた独裁者のフセインが政権から退場したことは悪いことではないと考えます。古賀氏の言説は、イラクが安定するためには恐怖政治が必要であるとも受けとれるものであり、極めて無責任であるといえます。


(5) 集団的自衛権が法制化されてアメリカから要請されても、今回のように一般の日本国民に明白な危機がない事案で、日本が有志国連合の空爆に参加することは実際上考えられません。よく石油供給の停止による自衛権行使のハードルが低いと言われていますが、日本の石油備蓄量として6ヶ月分、LPG備蓄量として100日分の輸入量が確保されていること、ホルムズ海峡以外の依存度が少ないとはいえ20%あること、IEAの国際協調放出枠組を利用できることなどを勘案すると、概ね1年間は時間稼ぎをすることができます。ちなみに、経産省の官僚であった古賀氏がこのことについて認識していないはずがありません。このようなセキュリティ環境が確保されている中で、日本にとって最悪のケースであるイランによるホルムズ海峡封鎖を考えると、NATO軍による海峡奪還については1週間程度、機雷除去については1ヶ月程度のオーダーで可能であると分析されています[→分析例] 。このオーダーの経済リスクであれば、日本が集団的自衛権を行使することの合理性はまったくありません。そもそも、日本の議会で集団的自衛権の行使が承認される前に、それを行使する必要性がなくなっているものと推察されます。中東を対象とした日本の集団的自衛権のアジェンダは、あくまでセキュリティホールを埋めるためのカードとして権利を行使できる状態にしておくというのが実質的な目的であると私は思っています。古賀氏の想定には何の合理的根拠もなく、ひたすら「恐怖に訴える論証(Appeal to fear)」で国民の恐怖感を煽り、政府に反対する自論に導いているものであると言えます。


(6) 日本政府が行なった人道支援を曲解して批判している古賀氏が、この段階で、難民に対する支援はケチケチしないでできることはどんどんやればいいと発言しているのには不条理を感じます。古賀氏は人質事件発覚後に、テレビ朝日「報道ステーション」で明らかに難民支援であることを表明している安倍首相[→記事] の言葉を曲解し、イスラム国と戦うんだぞっていうのをすごいアピールしていると発言しました。夜の全国ネットのニュースショウ「報道ステーション」でのこの発言は、その後のISILの日本人人質に対する対応に誤った根拠を与えた可能性があります。


ここで、もう一度、[過去記事] で紹介した2015年1月23日の古賀茂明氏の「報道ステーション」での発言を再掲したいと思います。



メモ2014/01/23 テレビ朝日「報道ステーション」
「72時間」期限過ぎた今 政府の交渉の行方は



男の子古舘伊知郎キャスター

古賀さんに伺いたいのですが、古賀さんはイスラム国の悪逆非道な犯罪と、しかし一方で背景の問題と分けて考えることが必要だと、強く訴えられています。その辺りからちょっときかせていただけますか。


男の子古賀茂明氏


イスラム国がやっていることはとんでもないことなんですけれども、言っていることには結構共鳴する人たちが多いんですね。それは、例えば第二次世界大戦後にイギリスとかフランスが勝手に国境線決めちゃって民族が分断されたとか、あるいは最近であれば、アメリカのアフガンとかイラクとかの戦争でアメリカに罪のない女性や子供を含む民間人がたくさん殺されているぞと、そういうことに報復するんだと言うような主張というのは、一面では嘘じゃなくて、イスラムの中にはそれに共鳴する人がいる。で、イスラムの人も「だから人を殺していい」という人はほとんどいないんですけれども、でもその思想自体は結構共鳴する人がいるからこそ、人はまだまだどんどん入って来るということがあるというのは、一つ事実として押さえておかなくちゃいけないと思うんですね。で、私は、ただそれよりも今回一番驚いたのは、安倍さんがずっと中東歴訪してですね、エジプト・ヨルダンなどでいろいろスピーチされていました。私聞いていた感じは、「ああ、すごいパフォーマンスだな」と。要するに自分はイスラム国と戦うんだぞっていうのをすごいアピールしているなと見てたんですよ。(7)ところがこの事件のことが明るみに出て、よく聞いてみたら、実は後藤さんが人質に取られて身代金を要求されているなんて状況を政府は知ってたって言うんですね。で、これはちょっと私、でも人命第一と今言っているんですけれども本当なんだろうかと。というのは、普通人質取られて身代金の交渉なんていうことになっていたらですね、一番大事なことは犯人に対して刺激をしないとか、そういう常識的なことがあるのに、今回わざわざ現地の方に近くに行って「私はイスラム国を批判しますよ」と。で、「イスラム国と戦う周辺国に2億ドル出しますよ」っていう、まるでいかにもイスラム国に宣戦布告するかのようなことを言ってしまったと。で、これ普通に考えると、イスラム国は「交渉できたらいいな」ってもしかしたら考えていたかもしれないんですけれども、そんなことを公の場で言われちゃったら「もう日本政府だって今更お金払いますなんてできないよな」と。「じゃあこれ交渉できないんじゃないの、だったら、宣伝に使っちゃおう」、あるいは「もう思いっきり吹っかけてやろう」と、いうふうになってしまったんじゃないかなという気がしていて、私は、そこは、「安倍さん、官邸は、「そういうことで後藤さん犠牲になっちゃうかもしれないけど、でももっと大事なことがあるんだ」っていう判断をして一連の発言をしたんだろうね」というふうに思うんですね。


男の子古舘伊知郎キャスター


古賀さんこれはどうなんですか?古賀さんのお考えとしては、今日の動きを見ても、あるいは昨日あたりからを見ても、やっぱり総理、あるいは防衛大臣、有志連合のイギリス・アメリカをはじめとして、あるいはオーストラリア、それはいけないって言うんじゃなくて、空爆を敢行している人たちの方向に向いていて、これで交渉が進むだろうか、人質解放の、ということを、ちょっと気をもむ方は多いんじゃないかなというところはどんなふうにとらえますか?


男の子古賀茂明氏


ですからそこは、人命第一ですって言うのは、私は少なくとも向こうに行くまではそうじゃなかったんじゃないかなと思うんですけれども、じゃあ何が大事だったんですか?っていうと、やっぱり今おっしゃったようにですね、イスラム国と戦っている有志連合の仲間に入れてほしいと。正式なメンバーまではなれないけど、仲間と認知してほしい。そのためには、本当は空爆したりとか、あるいはイラクに武器を供与したりとかできればいいんですけれど、これできないじゃないですか。だからもともと安倍さんが願っている目標と言うのは、本当はできないことなんですよ。でもそれをやりたい。で、それをやるために何ができるかというと、人道支援しかできないと。人道支援をあたかも「イスラム国と戦うための支援なんです」というふうに表現してしまう。で、それをおもいきり宣伝してしまうということをやっちゃったんだろうなというふうに思います。で、ある意味目標は達成したと思うんですね。アメリカやイギリスは多分、「安倍さんはもうテロなんかに屈しない」と、で、「テロと戦う人のためにお金を出します」と言ってくれるのは非常に評価していると思いますし、今はまさに「あなたは仲間ですね」と、「じゃあ最後まで屈しないで身代金なんて払わないで頑張ってくださいね、みんなで応援しますからね」って、そっちにどんどんどんどん今引き込まれている感じがするんですよ。ですけどこれは後藤さんのお母さんが憲法のことを言ってましたよ。「日本は戦争をしない国なんだ」と。で、やっぱりちょっと一回我々はそこに立ち返らないといけないと思うんですね。安倍さんは「有志連合に入りたいんだ」あるいは「そういう国なんだ」って言いたいかもしれないけれども、でもそんなことは日本は憲法もあるし、できないはずなんですよ。で、世界の人たちに今回は非常に変な宣伝になってしまって、イスラム国にうまく利用されてですね。いかにも日本というのは「アメリカの正義というのを日本の正義だと思い込んでいるんじゃないか」と、あるいは「アメリカやイギリスと一緒なんだと、そういう国だぞ」って言うふうに思われてしまいつつある。それを世界に発信されていると。それに対して私たちは「いやそうじゃないんです」と、「だって日本は今まで戦後ずっと戦争をしてませんよ」と、「憲法では、日本のことを攻めてこないような人たちのことを一方的に敵だなんて絶対思いませんよ」と、「なるべく多くの人と仲良くしたいんですよ」と、「こういう国が日本なんですよ、日本人なんですよ」っていうことを、もう一回ここで世界にアピールしていく必要があるだろうなと。今回は、そういう日本のイメージの全く逆の方に、まあ安倍さんの発言もそうなんですけど、それをイスラム国にうまく利用されてですね、そうするとみんなイスラム諸国の人たちも「いや、なんか日本って結局アメリカなのか」みたいな「Japan is the United States」みたいなですね。それに対して我々は、例えば「いや、安倍さんはそういう印象を与えちゃったかもしれないけども違うんですよ」と。「Je suis Charlie」っていうプラカードを持ってフランス人が行進しましたけど、私だったら「アイ・アム・ノット・アベ(I am not Abe)」というプラカードを掲げて「日本人は違いますよ」と、「そんなことじゃない、本当に皆と仲良くしたいんです」と、「決して日本は、攻めてない国に対して攻撃するとか敵だっていうそういうことは考えない国なんです」っていうのをしっかり言っていく必要があるんじゃないかと思いましたね。



以上の報道が「ストローマン論証(the straw man)」を中心とする誤謬によって構成されていることは[過去記事] に示した通りですが、ここでは下線部(7)に着目したいと思います。


(7)[東京大学の池内恵氏の論理的な検証] により、ISILは日本の支援が「非軍事的」であることを明確に認識していながら人質の殺害を決行したことが判明しました。つまり、極悪非道なISILは日本が人道支援のアクションを起こす段階を待っていて犯行に及んだと考えられます。したがって、ISILを刺激したということで古賀氏が安倍首相を批判するのであれば、すでに湯川氏が人質となっていることを認識した上で「人道支援をどんどんやれば」と公言していた古賀氏も同時に批判されなければなりません。ISILにとっては、「人道支援」自体が反ISILであるとの口実になるからです。


さらにISILが最初から2人の人質の殺害を前提にしていた可能性が高いという分析を含めて考えれば、その目的はメディアによる宣伝と関係国の分断にあったと考えるのが合理的であり、"I am not Abe" アイ・アム・ノット・アベというスローガンをテレビ番組で呼びかけた古賀氏はまさにISILからみれば、日本における最高殊勲選手であると言えます。


この時点で(おそらく現在も?)古賀氏にはそのような危険な発言を行った認識がまったくなく、さらにプロパガンダを続けることになります。その内容については次の記事で書きたいと思います。