言論の自由を脅かす古賀茂明氏と仲間たち | 西陣に住んでます

言論の自由を脅かす古賀茂明氏と仲間たち

古賀茂明


2015年2月25に日本外国特派員協会で行われた「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」という会見で古賀茂明氏は、「日本の報道は機能を失いつつあり、政府の独裁と戦争に至る三段階のうち、第二段階にある」と主張しました。そもそも、日本において、表現の自由は日本国憲法第21条で規定されています。

1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2.検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

「翼賛体制構築に抗する声」という古賀氏の一派は、ISIL人質事件報道にあたってこの表現の自由が侵されていると主張し、古賀氏の言説に対してテレビ朝日の上層部に抗議の電話をした(古賀氏談)とする日本政府および4月以降の古賀氏の出演を禁止した(古賀氏談)とするテレビ朝日の上層部を批判しました。



この会見のうち、古賀氏の言説を以下に詳しく見ていきたいと思います。ちなみに、古賀氏のこれまでのISIL問題についての発言の問題点については、↓こちらにまとめてあります。

[イスラム国の術中にハマった古賀茂明氏のアイアムノットアベ発言]
[報道倫理を著しく逸脱した古賀茂明氏のイスラム国報道における言説1]
[報道倫理を著しく逸脱した古賀茂明氏のイスラム国報道における言説2]


古賀茂明氏:
古賀です。よろしくお願いします。今日本の報道は機能を失いつつあります。現在は治安維持法もありませんし、特高もないんですけれども非公式な形で報道の機能喪失というものがかなり進んでいるというのは私の認識です。報道の正しい機能が失われると独裁と戦争につながっていくというのは、過去の歴史から私たちが学んだことだと思います。いろいろな表現の仕方はあると思いますが、私は報道が機能を失うことによって独裁そして戦争へ進んでいく過程を三段跳びになぞらえてホップ・ステップ・ジャンプということで表しています。まずホップの段階は、政府の側からマスコミに対して圧力をかけたり、あるいは懐柔の手段を使って自分たちの思うことを書かせ、あるいはいやなことを書かせないということをやろうということで、政権の側からイニシアティヴをとるというのがホップですね。そして「ステップ」の段階に入ると、そうした日常的な政府からの介入にだんだん慣らされてしまった報道機関の方が自らトラブルを避ける。あるいは政権に擦り寄って権力の側にいるという利権を享受するということのために自ら正しいことを書かない。政府批判をしないというふうに自己抑制をしてしまう。自粛してしまうと、これが報道機関の側からそういう動きになってしまうというのがステップの段階です。現在はそこまで日本の状況は進んでいるという風に思っていますが、これが進むと、正しい情報が国民につながらない。したがって、民主主義の大前提である国民の知る権利というのが失われていくことによって、国民が正しい判断ができなくなるということにつながります。その結果、最終的には選挙というもっとも民主的な手段・手続き、最も民主的であるはずの選挙という手続きを経て独裁政権が誕生すると。来年の参議院選挙で自民党ないし与党が3分の2をとるのかどうかというのが、一つのポイントになってくるかもしれませんが、その最後のステップという段階はそんなに遠くない可能性があるというふうに思っております。以上です。


古賀氏は、現在を「日常的な政府からの介入に慣れた報道機関が自らトラブルを避け、政権に擦り寄って得られる権力側の利権を享受するために政府批判を自己抑制している」段階にあるとしています。もし、古賀氏のこの言説が真実であるのならば、その言説をサポートする合理的証拠を国民に開示すべきであると言えます。その証拠が合理的であれば、国民は当然古賀氏を支持するはずです。しかしながら、古賀氏はその証拠を一切開示しません。これは極めて不合理な行動と言えます。そのような不合理な行動をする理由として合理的に考えられることは、古賀氏がそのような合理的証拠を持っていないで、単なる憶測で言説を述べているということです。これは、UFOウォッチャーや宇宙人ウォッチャーと基本的に同じスタンスです。

ここで重要なこととして、マスメディアには社会的な報道の責任があります。日本民間放送連盟放送基準には、報道の責任(6章)として、「ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない。ニュースの中で意見を取り扱う時は、その出所を明らかにする。」と規定されています。つまり、もし政府やテレビ朝日上層部が古賀氏の言説を批判しているとしたら、それは「言論の自由の侵害」ではなく「テレビ放送における憶測の自由の濫用に対する注意」です。テレビ放送で事実に基づいていない憶測を自由にしていたら、例えば「古賀氏は逮捕すべき危険人物である」のような言論が事実に基づくことなくテレビで放映され、実際に古賀氏が権力に拘束されるようなことにもなりかねません。つまり「憶測の自由」による暴論の濫用が蔓延ることで「言論の自由」が侵されてしまう可能性があります。古賀氏が「報道ステーション」のISIL報道で行ったような放送基準を逸脱した非論理的な言説を批判することは、言論の自由を将来にわたって確保していくための極めて常識的な予防措置であると考えます。


質問者:
今回、自粛・萎縮をとにかくしないようにということなのですが、皆さんに伺いたいのは、なぜそのような自粛・萎縮がそれぞれの分野で行われるような事態を招いているのですか。具体的にそれぞれの実際の当事者達にどのような不都合が生じる、あるいは生じている、あるいは生じかねないので、皆さん、批判をすることを止めてしまっているのか。もし具体的なものがあるのであれば、それこそ皆さん、それぞれの分野でご同僚がなんか皆自粛しているということであれば、それとも漠然とした空気の支配みたいなレベルのものなのか。 そこをどなたでももしご意見があれば結構ですのでお願いします。

古賀茂明氏:
もうひとつ今の状況に特徴的なのは、各社のトップが安倍政権に擦り寄っちゃっているという状況があるんですね。これは過去と比べると珍しい状況だと思います。 トップが安倍政権支持だということが明確になっていると、当然その下の役員クラスとかそういう人たちはサラリーマンですので、あまり安倍政権に逆らわないほうが出世できるなという、報道とかなんとかとはまったく違うレベルで安倍政権批判を控えたいというふうになります。現場じゃなくて上のほうが。そしてその結果、下の方はどう考えるかというと、今までは政権からクレームが来た時に、そんなの放っておけということができたんですね。ある程度。要するにそれは自分たちが正しいと思ったことを報道すればいいんだという一番当り前な報道の姿勢というものをとれたんですけれども、それがだんだん、それをやると、上から怒られるということが起きます。たとえば、私が「I'm not abe」ということを発言したときに何が起きたかと言ったら、プロデューサーが報道局長と政治部長に呼ばれて吊し上げになるわけですね。 そんなことを年中やられたら仕事にならないわけです。そういうことが起きた。それはなぜかというと、トップが安倍にすり寄っているからなんです。トップが別に中立だというふうにわかっていれば、政権からクレームが来ても、そんなのは言っていることがおかしいから無視すればよいと、それで済むのですけれども、トップが安倍支持だということがハッキリわかって、一緒にご飯を食べたり、ゴルフしたりして、携帯電話の番号もらって喜んでいるという会長がいるんですね。実際に驚くべきことですけれども。そうなっていると、下の方は戦おうと思っても戦えない状況になっているということですね。

古賀氏は日本の報道各社のトップが安倍政権に擦り寄っている合理的証拠を見せるべきです。もし証明できれば、それこそピュリッツァー賞ものでしょう(笑)。多分証拠はないでしょうけど。それと、プロデューサーが報道局長と政治部長に呼ばれて指導されていたとしたら、それは「政権からクレームが来るような真実の報道」をしたからというのではなく、「政権からクレームが来るような憶測の報道」をしたからと考える方が合理性が高いと私は思います。古賀氏の憶測の自由の濫用は、[事実関係]を細部まで知らない視聴者に大きな誤解を与えるに十分な内容であったと考えます。また、自社の報道の問題について検討した上で組織を正しい方向に導くこと自体は、報道内容の責任者として当然の責務です。番組のプロデューサーの言い分がすべて正しいと考えていたら、それこそ言論の自由の侵害です。


司会者:
一つ追加の質問なのですけれども、古賀さんのケースというのは日本について重要なケースだと思いますので、この場ではっきりと今から報道ステーションの方は、そういった立場でクビになられたのか?そしてどういった理由が言われているのかについて、もしこの場ではっきりと言っていただければ、お願いいたします。

古賀茂明氏:
またこれ間違えるといろいろと大変なことが起きますので、これは怒られるといってもテレビ朝日から怒られるだけなんでので、菅さんから怒られるんじゃないんで、あまり怖くはないんですけれども、正確に言うと、私とテレビ朝日との間で特に年に何回出演してくださいという契約があるわけではありません。ですからテレビ朝日の立場から言えば、その時その時でお願いをしているので、別にクビにするということではないということですけれども、私が聞いているのは、来週誰を呼ぶのか、来月誰を呼ぶのかというのは、各番組のプロデューサー中心に決めるわけですが、私の場合はちょっといろいろ忙しいので3ヶ月くらい先まで決めるんですね。今まで、ですから、毎月1回出て下さいという話がベースにあって、具体的な日程は2ヶ月、3ヶ月先まで決めましょうということだったんですけれども、明確にもともと去年から報道局長が私の出演を嫌がっているという話があったということは聞いておりましたけれども、この間、1月23日の発言以降は、「4月以降は絶対出すな」という厳命が下っているというふうに。私は報道局長に直接言われてないので、直接聞いてみたいと思いますけれどもそういうふうになっている。それは、もちろんトップの意向を反映しているというふうに私は理解しています。補足しますと、なぜ4月からかというと、3月までもう日程が決まっていたんですね。私が出演するという。3月は6日と27日に出演する予定ですけれども、さすがにそれをキャンセルすると、おそらく皆さんから非常に大きな批判が出るだろうということで、4月以降は決まっていなかったので、4月以降出演禁止だということだと思う。テレビ朝日の昨日の社長会見では、記者の人から聞いたんですけれども、私の出演について「別に何も決まっていることは何もない。」というふうに社長がおっしゃったそうですし、それから「官邸から一切圧力を受けているとは承知していない」というふうに何回か聞かれてもそういうふうに言い張ったそうです。

外注先に問題がある場合、新たな業者に代えるということは健全な企業行動と言えます。特に「日本人はイスラム国と仲良くしたい」と[極悪非道なテロリスト]との友好を唱えた古賀氏を出演させないことは、行動基準で反社会的勢力との絶縁に取り組むと謳う放送局としては極めて当然な合理的判断であるといえます。


司会者:
Thank you, Koga san, we all are going to watch carefully March 27th appearance. and I hope you make a historical appearance.

外国人特派員協会の司会者が最後に述べた言葉は日本語に訳されなかったので訳しておきますと「ありがとう、古賀さん。私たち一同、あなたの3月27日の番組出演を注意深く見ようと思っています。なんかやってくれることを望みます。」ということです。ちなみに、外国人ジャーナリストは基本的に日本のスキャンダルを好む方向にあり、ネタを提供する朝日新聞や古賀氏のような人物はalways welcomeの対象です。


さて、この「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」というグループは、そもそも、「ISILの事件発生以来、現政権の施策・行動を批判することを自粛する空気が国会議員、マスメディアから日本社会までをも支配しつつあることに、重大な危惧を覚えざるを得ない。」ということで、次の3点を危惧しているようです。

(1)人命尊重を第一に考えるなら、政権の足を引っ張る行為はしてはならない
(2)いま政権を批判すれば、テロリストを利するだけ
(3)このような非常時には国民一丸となって政権を支えるべき

まず、(1)について、「現政権が足を引っ張るべき政権である」ということが合理的な言論によって証明されれば、現政権は足を引っ張られるべきだと私は思います。ただし、古賀氏の非論理的な言説をもって政権の足を引っ張るような行為をするのは極めて不合理といえます。(2)についても、政権が合理的に批判されるべき政権であるのならば、テロリストの存在ににかかわりなく批判すべきであると思います。ただし、古賀氏の非論理的な言説をもって政権を批判すれば、テロリストを利するだけであるといえます。そして、(3)についても、政権を支えるべきでない合理的理由があるのであれば、非常時であっても国民一丸となって政権を支えるべきではありません。ただし、古賀氏の非論理的な言説では政権を支えるべきではないという結論には至りません。特別に政府を否定する理由がない限り、このような非常時には国民一丸となって政権を支えるべきだと思います。国が危機に見舞われたとき、事実に基づかない不合理な議論は国を危うくします。一体何の利益があって、不合理な議論で自分たちのプレゼンスをアピールして、政府批判するのか本当に意味がわかりません。

最後に、今回の「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」という会見には、他にマッド・アマノ氏が参加していて風刺画を発表しました。

古賀茂明

もちろん、この風刺画を発表するのは表現の自由であり、誰も抑制すべきではないと思います。ただし、この風刺画を批判するのもまた表現の自由です。首相を反社会的組織の殺人者に仕立て、古賀氏をテロ事件の犠牲者に仕立てるというのは、あまりにも直接的でウィットにかけていることはもちろんのこと、被害者のご家族に対する配慮を著しく欠くものです。テロに対する国民の嫌悪感を利用している点も品がなく、典型的なプロパガンダ(扇動)です。国民の感情を弄ぶ手法は多くの国民に理解されず、「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者」が構築しようとしている翼賛体制には国民の賛同が得られないのではと素朴に思う次第です。

古賀茂明