あまりにも歪められた沖縄辺野古基地問題の報道 | 西陣に住んでます

あまりにも歪められた沖縄辺野古基地問題の報道

沖縄県知事




実は、引っ越し準備の合間を見て、おとなしくこのブログタイトルのエンディング記事を書こうと思っていましたが、その前にどうしても沖縄辺野古基地の建設事案に対する理不尽なマスメディア報道について書きとめておきたくなり、筆をとっちゃった次第です(笑)。


2015年3月23日、辺野古基地建設に関連して、翁長雄志沖縄県知事が基地建設反対活動家の侵入防止用ブイの設置のための海底ブロックの一部が岩礁の一部サンゴを破損したとして地質調査作業の停止を沖縄防衛局に指示しました。


辺野古:沖縄県 作業停止を沖縄防衛局に指示
[毎日新聞 2015年03月23日]
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設を巡り、沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は23日、現場海域の全ての移設作業を7日以内に停止するよう沖縄防衛局に指示した。防衛局が指示に従わない場合は来週にも岩礁破砕許可を取り消す考え。沖縄県は許可が取り消されれば今月12日に再開された政府の海底ボーリング調査はできなくなるとしているが、政府は移設作業を続行する方針だ。知事は法廷闘争も視野に入れており、政府と沖縄県の対立は先鋭化している。


沖縄知事、辺野古海底作業停止を指示 手の平返した県
昨年は図面・協議「不要」 「知事の意くみ豹変」県幹部指摘

[産経新聞 2015年03月24日]
共通認識を持たせる会合が必要だったのは、岩礁破砕許可の取り消しを「無理筋」と指摘する県幹部が少なくないからだ。許可に際しての事前調整で、防衛省はブロックの資料を提示したが、県水産課副参事(課長級)が許可申請書から削除させ、協議も不要と回答していた。内実を知る県幹部は「訴訟では明らかに県に不利な材料だ」とみる。


辺野古:沖縄防衛局が審査請求 知事の作業停止指示に不服
[毎日新聞 2015年03月24日]
沖縄防衛局は24日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、翁長雄志(おなが・たけし)知事が現場海域でのすべての作業を停止するよう指示したことを不服として、行政不服審査法に基づき農水省に審査請求した。(中略)海底へのコンクリート製ブロック設置は許可手続きの対象外だと県から説明を受けたことなどを理由に、作業停止指示は「違法性が重大かつ明白で無効」と反論した。


辺野古基地建設問題の報道は、近年プレゼンスが著しく低下しているマスメディアにとって恰好のコンテンツといえます。なぜなら、辺野古基地建設に反対の論調を示すだけで、詳しい事情をほとんど知ることがない「本土の人々」*に対して、人権保護・民主主義の堅守・反戦平和・環境保護などに取り組んでいるかのようなスタンスを安易に主張できるからです。


*正確には沖縄本島も日本の「本土」と定義されていますが、この記事では多くの沖縄の人が慣用的に呼んでいる「沖縄本島以外の本土」を「本土」と呼びます。


そもそも、沖縄報道を通して日本政府をヒステリックに批判することが日本のジャーナリズムのメインストリームであるかのような先入観が一部のマスメディアに存在し、こぞって辺野古基地建設の反対活動家を英雄視すると同時に、日本政府を極悪人のように批判するというのが報道の基本パターンとなっています。特にテレビメディアのアンカーにこの傾向が強く、古くは「NEWS23」筑紫哲也氏、「ニュースステーション」久米宏氏、現在では、「NEWS23」岸井成格氏、「報道ステーション」古館伊知郎氏、「サンデーモーニング」関口宏氏などはその典型で、「ジャーナリストになりたかった」というみのもんた氏も自分は沖縄に強い関心を持っていると番組で自慢していたほどです(笑)。これらの人物に共通しているのは、けっして包括的視点に立つことなく、ただただ個別の事案の負の側面のみを指摘し、視聴者の感情に訴えるかのように基地建設の反対を述べていることです。その主たる内容は以下のような言説に集約されます。


右矢印国土の0.6%の沖縄に在日米軍基地の75%が集中している
右矢印日本政府は沖縄のはっきりとした民意を無視している
右矢印地上戦で多大な犠牲者を出した沖縄にもう新基地は作らせない
右矢印ジュゴンが住む辺野古の美しい海が破壊されようとしている


以上の言説は、事情を詳しく知らない人にとっては、もっともらしい主張に聞こえる可能性がありますが、実際に事態はこれほど単純ではありません。この記事では、これらの言説の合理性について分析してみたいと思います。



1国土の0.6%の沖縄に在日米軍基地の75%が集中している


この言説は過去から現在に至るまで耳にタコができるくらい繰り返されているものです。


1994/07/28 TBSテレビ「筑紫哲也のNEWS23」

「沖縄には、日米安保体制に基づく在日米軍基地の75%が日本の国土の0.6%にあたるところに集中しています。自分の本来の土地も、空も、海もこの体制に縛られて自分たちのものになっていないということがあります」


2014/11/17 テレビ朝日「報道ステーション」

「よく言われることですけれど、日本全土の面積の0.6%の沖縄に何と七十何%の基地が集中しているということが、あえていいますが、凄み、これをですね、ひしひしとあらためて知って、今まで何だったんだ自分はということを痛感させられるんですね。」


2014/11/23 TBSテレビ「関口宏のサンデーモーニング」

「日本の国土のわずか0.6%に過ぎない沖縄にアメリカ軍基地のおよそ74%が集中するという過剰な基地負担の状況・・・」


もし日本にある基地のうち、面積比率で3/4が沖縄に集中しているとしたら、それはあまりにも過酷なロードであることは間違いありません。実際にそうかといえば、それは事実とは異なります。下表を見てください。


日本の基地面積比率

  (防衛省・自衛隊websiteのデータから作成)


在日米軍の「米軍専用施設」という観点では、沖縄が占める基地面積のシェアは確かに75%です。しかしながら、自衛隊が一部供用する「米軍一時使用施設」を含めた「米軍施設」という観点では、沖縄のシェアは22.6%であり、さらに自衛隊の専用基地も含めた「米軍+自衛隊施設」という観点から言えば、沖縄のシェアは16.9%ということになります。基地があることによる実害という点では、米軍施設であっても自衛隊施設であってもほとんど変わりはありません。したがって、より公平な観点に立てば、沖縄が占める基地面積のシェアは16.9%というべきであると言えます。マスメディアの不正確な言説は、沖縄住民に過度な被差別感を与えると同時に本土住民に過度な罪悪感を与えるものであり、裏を返せば、沖縄以外の地域における米軍専用施設以外の基地負担をまったく評価していない言説ともいえます。


ただし、国土の0.6%の面積に過ぎない沖縄が「米軍+自衛隊施設」の16.9%の基地負担をしていることは紛れもない事実です。ここで、その施設の内訳について見てみたいと思います。


沖縄基地内訳

     (防衛省・自衛隊websiteのデータから作成)


沖縄には、横田飛行場や厚木飛行場のような市街地の飛行場である嘉手納飛行場と普天間飛行場があり、横田や厚木と同様に日々の騒音被害や事故リスクが存在しています。その一方で、沖縄にある米軍基地の2/3の面積は、北部訓練場、キャンプシュワブ、キャンプハンセンを中心とする広大な山林に設置された演習場です。これらの土地は、日本政府が沖縄の自治体や個人の地主に賃借料を払って借りているもので、仮に返還されたとしても利用できない土地が大部分であると言えます。


沖縄基地マップ


ここに一つ驚くべき事実があります。2011年9月、米軍のキャンプハンセンの162ヘクタールの土地を名護市などに返還する合意が日米で交わされたのですが、基地建設反対派の稲嶺名護市長と名護市議会は、「この合意は一方的で強権的である」として、その返還延長を要求しました[NHKニュース]


基地負担が大きいと抗議している側が、基地返還を拒んだわけです。この跡地利用が困難な原野が名護市に返還されると、市に定常的に入ってくる1億3000万円/年の借地料収入がなくなるためです。しかも、この返還延長要求は今回が初めてではなく、過去に3度要求があり、すべて認められてきました。米軍が土地を使用していないにもかかわらず、15年以上にもわたって日本政府から借地料が支払われてきたわけです。国家や地方自治体の税金のムダを声高々に調べ上げるマスメディアが、累計すると20億円にものぼる明らかな税金のムダを見て見ぬふりをしているというのは、まさに偏向そのものと言えます。


現在、沖縄基地全体の借地料収入は、約900億円/年という莫大なものです。単純に比例配分できませんが、演習場となっている沖縄の山林が年間に数100億円の収入をもたらしているのは事実です。ちなみに、国は沖縄県に手厚く、沖縄県に対する国庫支出金は、人口一人当たりでは全国トップ(H24年度決算ベース・東日本地震被災3県除く)です。それに対して、最大基地面積を有する北海道は沖縄の2/3の額であり、市街地に多くの基地施設を持つ神奈川県は全国最低レベルで沖縄の1/3の額です。下図を見てください。


国庫支出金

(総務省 H24年度都道府県決算状況調&市町村別決算状況調から作成)


地方交付税というのは、財源の偏在を調整することを目的としたものであり、客観的な計算式にしたがって決定されるものです。それに対して国庫支出金というのは、基本的に地方が国に要求して国が支出するものです。地方交付税と国庫支出金の間には一定の正の相関関係がありますが、全国の都道府県で沖縄だけは、地方交付税に対する国庫支出金の金額が極めて多く、本来、人口一人当たり12万5000円くらいの支給のところを10万円近く多く支給されていることがわかります。


もちろん、16.9%の基地が偏在する沖縄の負担によって安全という利益を得ている日本国民は、沖縄のロードに対して相当分の補償をすべきであると私は強く思います。ここで重要なことは、一部マスメディアが提示しているようなゴマカシの数値を参照するのではなく、正当なデータを基に合理的な補償を行うべきであると考えます。



2日本政府は沖縄のはっきりとした民意を無視している


日本は民主主義に基づく法治国家です。そんな中、法令に則って手続きを経た事案を、議会による法令の改正もなく差し止めた場合、それは法治国家とは言えず、人治国家であると言えます。その意味で、翁長雄志県知事の行った強引な権力行使は極めて危険な行為であると言えます。


集団に属する構成員の合意形成のための手段である民主主義の本質は「多数決の原則」「少数意見の尊重」にあります。一部マスメディアはこの「多数決の原則」と「少数意見の尊重」という背反する概念を巧みに使い分けて、偏向報道を行います。たとえば、2014年12月に行われた衆議院選挙においては、2位の民主党にダブルスコア以上の票を獲得して自民党は大勝しました。


衆院選結果

  (総務省websiteのデータから作成)


しかしながら、一部マスメディアは、有権者得票率(投票率×得票率)を基に「投票率が50%の中で小選挙区の得票率が50%であったので25%の国民にしか支持されていない」「有権者は自民党に信任を与えたわけではない」「少数意見を尊重すべきである」とするような言説を盛んに流しました(TBS「サンデーモーニング」、テレビ朝日「報道ステーション」など)。


2014/12/21 TBSテレビ「サンデーモーニング」
田中秀征氏「だから何ていうかね。有権者の半分が投票してその半分を自民党がとったんですよね。得票率48%というね。そうすると、有権者の1/4が支持をしたと。4脚ある机が1脚で支えられるということになるんですよね。これは政治的に成り立たないですよね。絶対君主の政治でも皇帝の政治でも1/4の支持ではね、僕は成り立たないと思うんですよ。」


2014/12/28 TBSテレビ「サンデーモーニング」
寺島実郎氏「永田町の論理と国民の論理とに大きなギャップがあるということだけははっきりしたと。というのは投票率52.7%と半分の人が投票に行かなかったと。僕が大事だと思うのは、自民党がとった比例区の得票率だと思うんですよ。33.1%なんですね。単純な算数で52.7×33.1でなんと17.4%です。つまり有権者に対する自民党の支持率って言うのは、投票率って言うのはですね、つまり17.4%で6割以上の議員が獲得できるっていうメカニズムに対して国民の引いた気持ちっていうかですね。」


2014/12/15 テレビ朝日「報道ステーション」
恵村順一郎氏「得票率は48%に過ぎないわけで、投票率が戦後最低の52%でしたから、有権者全体の得票率でみると25%で、1/4の得票率で75%の議席をとってしまっているということなんですよね。」


一方、沖縄における名護市長選挙沖縄県知事選挙衆議院沖縄選挙区選挙においては、いずれも基地反対を唱える候補が勝利しました。一部マスメディアはこれには「多数決の原則」を適用して「完全な勝利」と称賛し、「沖縄のはっきりとした民意」と評価しました。


2014/11/17 TBSテレビ「NEWS23」
膳場貴子氏「沖縄県民、はっきりと意思を示しましたけれども、国はこれを正面から受け止めていないようですね。」
岸井成格氏「やっぱりこれだけ民意がはっきりした以上、私はいったん白紙に戻すというのが筋だと思うんです。」


2014/11/17 テレビ朝日「報道ステーション」
恵村順一郎氏「これだけはっきりとした沖縄の方々の民意が出たわけですから
ここは思考停止に陥らずにですね、具体的に前に進めていく(アメリカへ県外移設案を出す)ことが必要だと思います。」


しかしながら、選挙で最も重視される得票率を見れば、「国民に支持されていない」とされる自民党と比較して、「はっきりとした民意を受けた」とされる辺野古基地建設反対候補は、明らかに対立候補と競り合っていると言えます。


沖縄選挙結果

  (総務省websiteおよび名護市役所websiteのデータから作成)


有権者投票率も自民党とほぼ同様の値です。この事実から客観的に考えれば、少数意見を尊重すべきなのは自民党よりもむしろ沖縄の基地建設反対候補であると言えます。客観的に見れば、沖縄では県民のすべてが基地反対派に投票しているわけではなく、基地建設容認派に投票した人も多く存在しているのです。


さて、基地という安全保障問題については、地方政府よりも中央政府の意見がプライオリティを持つことは、論理的な原則であるばかりでなく、世界の常識でもあると言えますが、「少数意見の尊重」という点で「地元の民意」をできる限り斟酌することも重要であると言えます。


ここで、本土に住む日本国民が絶対に知っておかなければならない事実があります。それは、辺野古名護市に属していますが、沖縄本島の西岸にある名護市街とは直線距離で10kmも離れた東岸の久志地区にあるということです。


名護市


辺野古と名護市街は、沖縄本島の中央山脈とキャンプシュワブによって隔てられているのでそのつながりは非常に低いと言えます。ちなみに、10kmという距離は航空機の音を聞くこともできないような距離です。実は私も横須賀基地のほんの近くに本籍があるのでわかりますが、基地の存在によって影響を受ける範囲というのは、それほど広範な地域ではありません。たとえば、横須賀基地において、米兵と普通に接する可能性がある範囲と言えば、汐入町・本町・大滝町といったせいぜい東西1km、南北500m位の範囲内です。名護市街と辺野古の距離感は、葉山と横須賀の距離感とほぼ同じであると言えます。つまり、名護市街は、実質的には辺野古基地で被害を受けるステイクホルダーとしての地元と言えないのは明白です。このような事実の中で注目すべきことは、名護市の人口は名護市街に偏っていて、辺野古が属する久志地区の人口は名護市の人口の1割にも満たないことです。


名護市の人口

(名護市役所websiteのデータから作成)


特に辺野古基地建設予定地に近い、久志・豊原・辺野古の人口の合計は2904人(2014年4月17日現在)であり、名護市の人口約61465人に対して5%にも満たない人数です。このことから名護市長の選挙結果をもって「辺野古の民意」とするのは明らかに現実性に欠けます。


それでは、肝心の辺野古の民意は?ということですが、次のような興味深い報道があります。


辺野古「テント村撤去を」住民763人の署名提出
[読売新聞 2012年3月3日]
日米両政府が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設を目指す沖縄県名護市辺野古区の大城康昌区長は2日、移設に反対する市民団体が座り込みを続けている「テント村」の撤去を求め、区民763人分の署名を稲嶺進市長に提出した。


移設容認派現職くじ引きで敗れる…辺野古区長選
[読売新聞 2013年03月18日]
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先となっている沖縄県名護市の辺野古へのこ区(区は自治会に相当)で17日、区長選挙が行われ、移設反対派からも支援を受けた新人と移設を容認してきた現職の一騎打ちの結果、得票同数となり、くじ引きで新人の当選が決まった。


名護漁協 埋め立てに同意
[琉球朝日放送 2013年3月11日]
日米両政府が普天間基地の移設先とする名護市辺野古沖の漁業権を持つ名護漁協は11日、臨時総会を開き、辺野古沿岸部の埋め立てに同意する議案を賛成多数で可決しました。臨時総会には名護漁協の正組合員78人が出席したほか、13人が委任状を提出しました。この中では辺野古沿岸部の埋め立てに同意する議案の賛否についてマルバツ方式で投票が行われ、その結果、88対2で可決されました。


名護漁協、岩礁破砕に同意 辺野古移設
[琉球新報 2014年5月31日]
名護漁業協同組合は30日の臨時総会で、政府が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事に先立ち、海底の岩を掘削する岩礁破砕工事を行うことに同意する議案を賛成多数で可決した。7月から始まる予定の海底ボーリング調査に向け、キャンプ・シュワブ提供水域を一部見直し、辺野古沿岸での漁船操業の常時禁止区域も工事区域全体に広げるとした政府方針も賛成多数で了承した。総会には議決権を持つ正組合員87人中、84人(委任15人)が出席し、82人が賛成した。沖縄防衛局は近く県に岩礁破砕の許可を申請する。名護漁協は海底ボーリング調査についても、同意する方針を30日までに防衛局側に伝えている。


これらの数少ない資料から読み解く限り、辺野古の民意は基地容認の方向であることがわかります。また、マスメディアがあたかも地元の意見を代表しているかのように報道する辺野古テント村については、テント村撤去に763人分の辺野古住民の署名が集まった(辺野古の人口は1862人)という事実に注意すべきであると考えます。マスメディアはテント村の主張をあたかも地元の民意であるかのようにとりあげていますが、辺野古住民はテント村を問題視していることがわかります。もし、マスメディアが地元の意見を重視するべきと主張するのであれば、どこからともなく集まって来て公の場を不法占拠しているテント村の活動家の意見を尊重するのではなく、まさに正真正銘の地元住民の意見を尊重すべきであると言えます。


沖縄の軍用基地は、1945年の占領時に接収されると同時に1950年代初頭の朝鮮戦争時にも半ば強制的に接収されたという暗い歴史があります。このとき、辺野古住民は、苦渋の選択で他の地域とは一線を画して米軍基地との共存を選択し、その後に友好的な関係を築いたとされます。たとえば、辺野古住民は十の班に属していて毎年区民運動会や手漕ぎ船のレースなどで競い合っているとのことですが、このときに第十一班としてキャンプシュワブの米兵のチームを毎年招待し、親睦を深めていることが知られています(NHK取材班「基地はなぜ沖縄に集中しているのか」および[辺野古区ホームページ] )。

以上の分析をまとめると次のようなことが言えます。


(1)沖縄の民意は、けっしてはっきりしたものではない。

(2)名護市の民意=辺野古の民意とはいえない。
(3)基地反対活動家は、地元の辺野古から問題視されている。
(4)活動家やマスメディアは地元である辺野古の民意を無視している。



3地上戦で多大な犠牲者を出した沖縄にもう新基地を作らせない


沖縄が米軍によって攻撃されて多大な犠牲者が出た悲しい歴史を持っていることは疑いようもない事実と言えます。この悲惨な事実については、現在の平和を享受している日本国民全体が深く受け止めなければならないことは明らかであり、実際多くの日本国民もこの悲惨な事実を深く受け止めていると思われます。ただ、私たちに重要なのは、過去に縛られることではなく、過去を受け止め、未来の平和を築くことであると考えます。たとえば、大空襲を受けた東京も神奈川も、原爆を落とされた広島も長崎も、平和を築く未来志向で日米安全保障条約に基づく米軍施設を受け入れています。そもそもこんなことを書いている私自身、祖父を戦争で亡くしています。


ここで、本土に住む日本国民が間違えやすいことですが、辺野古基地は基本的には「新基地」ではなく、既往のキャンプシュワブ敷地内で建設するものです。1950年代から米軍が利用していた海域であるため、土地利用上の新たな問題は発生しません。計画では160ヘクタール海岸部を埋め立てることになりますが、返還される普天間基地の481ヘクタールと比較すると1/3の面積と言えます。なお、私が考えるに、この海岸を比較的広く埋め立てる現行案は事態を混迷させたと思います。辺野古において海岸部の埋め立て面積を最小限にするオプションは他にも存在したと考える次第です。具体的には現在の329号線をトンネルでショートカットさせ、現在の飛行場敷地を北北西に1km移動させるというものです。このようにすれば、岬の北側のみ埋め立てればよくなるので、環境負荷を低減することができます。プロジェクトマネジメントの失敗と言えるのではないでしょうか。


辺野古基地周辺マップ

(産経新聞から引用)


いずれにしても、沖縄の基地の中で、嘉手納飛行場および普天間飛行場は市街地の近くに位置するため非常に危険であり、騒音被害も与えていることは間違いありません。特に普天間飛行場については、基地の存在に伴う事故リスク(ハザードによる損害の大きさ×ハザードの発生確率)が極めて大きいことは自明であり、一刻も早く飛行場を騒音被害と事故リスクが低い地点に移転することが重要であることは間違いありません。賛成派も反対派も同時に認める普天間基地における喫緊の事故リスクを回避するにあたっては、辺野古移設は合理的な妥協案であると考えられます。基地移設反対運動が一体何のための反対なのかを反対政治家および反対活動家は論理的に示すべきであり、マスメディアも彼らにその理由を論理的に追及すべきと考える次第です。



4ジュゴンが住む辺野古の美しい海が破壊されようとしている


ジュゴンの行動範囲は非常に広いことが知られています。したがって、辺野古崎がジュゴンの生息環境に適わなければ、沖縄本島全体に広がる他のコーラルビーチに移るだけです。沖縄本島においては、辺野古崎だけが美しいコーラルビーチではありません。ジュゴンの個体はむしろ西海岸で多く確認されています。したがって、辺野古基地を建設したことによってジュゴンが絶滅するようなことは考えにくいと言えます。あえて、客観的に極論を言えば、移設反対というオプションは、普天間基地周辺住民の死亡リスクよりもジュゴンの死亡リスクを重視しているとも言えます。


ジュゴン生息域

(ジュゴンの生息地 Wikipediaから引用)


なお、ジュゴンの餌場とされる辺野古周辺の豊かな海草藻場は、基地建設予定地が当初と比較して移動したため、空港建設された後も破壊されることはなくなりました。日本自然保護協会という環境団体の[2002年の調査結果] が皮肉にもそのことを証明しています。


また、翁長雄志知事や反対活動家がサンゴ礁保護とジュゴン保護を辺野古基地建設の反対理由にするのであれば、同時に翁長知事がこれまで推進してきた那覇空港の滑走路増設工事にも反対すべきです。ちなみに[沖縄県の自然環境の保全に関する指針] では、滑走路設置予定地の珊瑚礁の南側(写真左部)は評価ランクⅢですが、北側(写真右部)は辺野古崎と同じ評価ランクⅠ(自然環境の厳正な保護・保全を図る区域)であり、滑走路へのアクセス道もその評価ランクⅠの珊瑚礁上に設置される予定です。


那覇空港増設

(内閣府資料から引用)


滑走路増設によって辺野古基地と同様にサンゴ礁が埋め立てられることになりますし、ジュゴンの行動範囲を考えれば辺野古基地建設と同等の影響を与える可能性があります。人治に基づく翁長知事のダブルスタンダードは、日本の民主主義に基づく法治に堂々と挑戦するものです。



メモメモメモメモメモメモメモ



この記事を通して私が言いたいのは、辺野古基地移設の可否を議論するのであれば、合理的な論理に基づくべきであるということです。辺野古基地移設問題の本質は、普天間飛行場周辺住民が受けている騒音被害を解消すると同時に高い事故リスクを回避するために、より騒音被害や事故リスクが小さいキャンプシュワブに基地機能を移転しようとするものです。この移設プロジェクトを実現するために、これまでに日米政府・沖縄県・名護市・辺野古区は長期間にわたって議論を重ね、法に則った手続きを行ってきたわけです。そのような中で、沖縄住民および本土住民の人心を過度に弄ぶことでミスリードするような一部マスメディアの偏向報道は極めて問題であると言えます。そもそも、この辺野古基地移設問題をより複雑にしたのは、鳩山由紀夫元総理と一部マスメディアであると私は思っています。彼らは沖縄住民に不当な被差別感を与えて対決を煽り、事実を正確に把握していない本土住民には不当な罪悪感を与えています。今こそ、沖縄の過去・現在を合理的に議論した上で、沖縄県民の将来にとって有益なロードマップの策定が重要であると考えます。



晴れ晴れ晴れ晴れ晴れ晴れ晴れ



さて、上記記事とは関係ありませんが・・・


事実に基づく論理的な報道が重要であるなか、とんでもない憶測報道に終始する古賀茂明氏がテレビ朝日「報道ステーション」を実質的に降板したことは、日本のジャーナリズムの将来を考えれば、極めて歓迎すべきことであると考えます。古賀氏の言説は、報道には関係のない個人的内容のもので視聴者をバカにするような内容でしたが、「古賀氏の言論の自由」は最低限保障されていたと思います(笑)。


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最後に、前回記事を書いたところ、非常に多くの方々から暖かい励ましのコメントやご連絡を頂戴しました。本当にありがとうございます。次の記事はこのブログのフィナーレになると思います。今後の抱負についてもご紹介できればと考えます。