生徒が増え、小さなSTUDIOでは手狭になり、私のクラスは大きいSTUDIOにスケジュールを移された。
表のクラスである。
端から見れば『あっという間に生徒を増やした』と言う印象があったらしいが、私にして見れば、随分と長い期間、生徒集めに悪戦苦闘した…と言う思いがあった。
大きいSTUDIOでクラスが持てる!と言う事は、素直に嬉しかった。
しかし…
『出る釘は打たれる』ものである。
ある日、私は自分のクラスの生徒からこんな情報を得た。
『あのね先生…。〇〇先生がね、KAZUMI-BOYの振りにはテクニックがまるで入ってない…って言ってたよ。』
全く…親切でおしゃべりな奴である(笑)。
またある時は、インストラクター同士の会話の中で…
『男のインストラクターって特だよねぇ。生徒は女が殆どだしさぁ。男ってだけで人気稼げるじゃない?』
と聞こえよがしに言われたりもした。(当時のB.D.C.には私の他にジャズを教える男性インストラクターは居なかった)
『〇〇ちゃん、KAZUMI-BOYのクラスを受ける様になって…下手になったね。』
と言われた事もあったし…
『KAZUMI-BOYのクラスは人数だけで、下手クソな生徒しか居ない』
と言われもした…。
まぁ…叩かれた!叩かれた!(笑)。
私は、こうした『野次』が聞こえてくる度に、エクササイズに改良を加えて行った。
インストラクター仲間からの野次に悔しさを覚えたと言う事もあるが、同時に…
『確かに…一時的な人気じゃダメだ!』
と思ったからである。
私のエクササイズのベースは、以前『由来』と言う記事に書いた、私のダンスの父(師匠)から譲り受けた物である
『お前がこの先、お前自身のクラス持って教える様になったら、俺のエクササイズを使え』
と、お許しを得て現在も尚使わせて頂いている。
師匠から私への最高のギフトなのである…。
私は、師匠のエクササイズに自分なりの改良を加えながら、現在のエクササイズへとカスタマイズして来た。
『KAZUMI-BOYのクラスはレベルが低い…なんて言わせない!』
これが私の次の目標になった。
インストラクターとは、かくも生徒と一緒に成長して行くものである。
生徒を上達させる為には、自らも成長して行かなければならない。
私は、有難い野次をぶつけられる度に、少しずつではあるが、成長して来れたのではないか?と思っている。
人を惹き付ける…
これを、事も無げにやってのける人も中には居るだろう。
しかし…不動の人気など有り得ないし、私の様な凡人は、いつも何らかの目の前の目標が必要だった。
誰をも納得させるクラスなど、この世に無いかも知れないが、そこを目指さなければ意味が無い様に私は思う。
『KAZUMI-BOYのクラスはレベルが低い』
少なくともやはり、そんな事は二度と言われたくはない。
今現在、私のクラスを受講してくれている生徒達は、こうした過去の私を知らない。
躍起になってクラスを盛り上げ様と、必死だった頃の私を知らない。
現在、私のクラスに対して他のインストラクターから野次が飛ぶ様な事はない。
だが私はいまだに度々、こうした当時の悔しさを思い出す。
当時の私の闘志…と言うか、エネルギーに負けたくないからだ(どこまで負けず嫌いやねん(;^_^A )。
当時の私が、現在の私のクラスを見る事が出来たとしよう。
その時…
『なんだ?このクラスは?実の無いクラスだな!』
などと思われたくはない(笑)。
過去の私が、今の私に嫉妬する様なクラス。
それが現在の私の目標なのかも知れない。
昔の私が
『こんなクラスなら受けたい!』
と思ってくれる様なクラスなら、恐らく間違いはないだろう…そう思うからである。
あくまでも持論であるが…
『どんなクラスを展開して行きたいのか?』
と言う自問自答は、インストラクターと言う仕事を続けて行く限りは必要不可欠である…と私は思う。
現在も私は、こうした試行錯誤を繰り返しているのであった。
《完》