指原莉乃という“魔法使い”と劇場で頑張る“シンデレラ”達の物語 | Escape - from the future - 未来からの脱出

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『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』

最初に書いておく、この映画は指原莉乃という“魔法使い”と劇場で頑張る“シンデレラ”達の物語である。

指原莉乃が「東宝映画配給史上最年少女性監督」ということで1/29から公開された博多のアイドルグループHKT48のドキュメンタリー映画。
これまでにもAKB48グループではドキュメンタリー映画が公開されてきたがそれらの大半が“過去の視点から過去を振り返る”という時間軸を追う構成になっているが、この映画は今を起点にし、今から見て過去を振り返りインタビューと映像で構成されている。
だから、インタビュー開始時点から今起きていることも追われているし、それが映画のエンディングへと雪崩れ込んでいく。
これは秋元康AKBグループ総合プロデューサーが指原監督に「マイケル・ムーア監督作品を参考に」という指示が大きく働いている。
指原莉乃という当事者が監督することでHKT48の過去と今ある問題点が明確にされていく。
また、編集作業の映像や監督の寄り添うように語りかけるナレーションにより観客一人一人が映画の編集に立ち会っている疑似体験のようになり、この作品の共同作業者のように入り込んでしまう。
だからというわけでもないが、某巨大掲示板でのこの映画の感想スレッドは公開からものすごい勢いで伸びていき、これを書いている公開5日目の時点で8スレッド目に突入し、多くの人がこの映画を語っている(もちろんアンチも含めて)。

この映画にはアイドルの苦悩が数多く記されている。
誰かが喜べば誰かが悲しむ、この我々の思っている以上の競争社会の中で彼女達はもがき、苦しみ、少しでも前へ進もうとしている。
それでもその努力が報われるとは限らない。

誰もが言う、「誰一人諦めてない」と。

それはメンバーだけでなく彼女らを応援するファンも同じこと。
どうやったら少しでも前に進めるのか?
この映画を見て初めて知る人もいるだろう。
その姿に「いい年したおっさんが何の特があるんだ?」と思う人もいるだろう。

以前、あるドキュメンタリー番組でアイドルファンの人がこんなことを言っていた。

「普通に生きてて熱くなったり泣いたり笑ったりなんてそうそうなくて、大人になればなるほどそんなことが恥ずかしいと思ってしなくなるわけだし、そういう意味では普通の同世代の人たちよりは何倍も人生、楽しめているんじゃないかなと思いますよ」

彼らを嘲笑っている人たちは不幸だ。

映画はテレビや雑誌のグラビアなどで活躍している選抜メンバーとテレビなど殆ど出ずに毎日のように劇場で公演に出てグループの活動支えているメンバーを映しだす。

劇場公演が好きで劇場公演がやりたいからHKT48に入ったと彼女は言う。
多忙故に普段劇場公演に出られない指原莉乃のポジションのアンダーを努め、指原が出演する日は本番前2時間ほど指原にレクチャーする、指原曰く“先生”だという。
彼女は言う、「劇場で頑張っていれば見ている人必ずいる」と。
HKT48の多くのメンバーは「腐ったら負け」だということを知っている。


カメラはある会議の現場に潜入する。

「6thシングル選抜選考会議」

指原莉乃ですら観たことのない映像が今回初出しとなった。

この映画の中で、選抜選考に関わるシーンは主に3箇所ある。

・メンバーへ選抜を発表するときの選考目安の説明。ここで尾崎劇場支配人が発言した選抜の基準は以下のとおり
1 HKTの握手会の売り上げ、部数
2 HKTモバイル推しメン登録者数
3 ぐぐたす、755、モバメ
4 HKTのイベント、企画への積極的な参加
5 AKBグループのイベント、総選挙の順位など

これは口頭でメンバーに説明しているため、順位は関係ないと考えられる。

・選抜選考会議のシーンで合議制なのがわかるのと持っている資料から決定枠と流動枠があることがわかる。
流動枠は博多運営(指原含む)の意見が反映される。

・ 指原が尾崎に博多運営が推薦者を決める時の基準を聞いてるシーン。
選抜メンバーの選考は売上等の具体的な数字だけではなく、ダンスの先生、ヴォイストレーナーや劇場スタッフ、マネージャーなどの意見も参考にして選ばれる。

選抜会議の段階で指標により既に決まっている固定枠があり、選抜選考会議ではこの他の流動枠が話し合いで決められている。
その際には尾崎支配人から博多スタッフで話し合った推薦枠が提示される。
博多運営推薦枠は指標や人気ではなく戦略的な人選が成される。

現在、HKT48の選抜メンバー16人のうち固定枠は11名、そこにボーダーラインのメンバー3人。
つまり推薦枠であったり運営のお試し枠は2つしか残っていないという事実。

これが公になったことは大きい。

今までファンの間では、選抜総選挙にさえランクインすれば自分たちのグループの選抜メンバーになれる、と思い込んでいたがAKBの選抜総選挙の結果はあくまで指標の一部でしか無い、ということ。
AKBの選抜総選挙はあくまでAKBのCDを出しているキングレコードの数字であり、HKTが所属しているユニバーサル・ミュージックとしては指標の一部に過ぎない。
キングの数字が良くても自分らの数字が悪ければそれは悪いになってしまう。
ユニバーサルは外資系の会社なので数字に関してはかなり厳しいのだろう。
選抜選考会議で秋元康があるメンバーを推薦したが、簡単にスルーされていた。
数字という裏付けがなければ意見は通らないということらしい。

ファンの間で長らく論争になっていた選抜選考基準が公になったことは大きい。

そして、メンバーへの選抜メンバー発表。

ここで新たに選抜入りしたメンバー、5thには選抜されていたが落ちてしまったメンバーが映しだされる。

そして、選抜メンバーお披露目の握手会の会場で新たに選抜された自分の推しメンを見て号泣し、仲間同士抱き合って喜び合うファン達。


AKB48グループの“支店”と呼ばれるグループは年に一回、“本店”AKB48のCDのカップリングに新曲を提供している。
これはキング・レコードからの発売のため、ユニバーサルの意見は大きく入ってこないのだろう、毎回選抜メンバーの何人かを指標外から入れてくる。

この映画の主題歌の選抜メンバーという形でメンバーが選考され、狭い会議室に16人が集められ発表される。

その中になぜ自分がこの選抜という“猛獣の檻”の中に入れられたのか理解できず、怯えた目をしてる。

そして尾崎支配人からの選抜メンバー発表により喜びの涙目となる。

この後のポジション(歌割り)の発表の時と合わせて“彼女”の表情の変化を見逃さないで欲しい。

指原莉乃という稀代の魔法使いがかけた魔法により“シンデレラ”は選抜という“舞踏会”に行く。

指原監督の言う“多幸感”に溢れたエンディングで観た者をハッピーな気持ちにさせる。

それは、「努力は必ず報われる」という高橋みなみ前総監督の言葉を思い出させるからだろう。

だから2度、3度と見直すリピーターも多い。


ただ、映画はここで終わるが、彼女達は今日も自分と戦っている。


そして、ファンは気づき考える。

「じゃあ、自分の推しメンをもっと上へ押し上げるにはどうしたらいいんだ?」と。

指原莉乃はファンがメンバーのポジションを押し上げたという具体例を取り上げ、“この人たちができたんだからあなた達だってできるよね?”と突きつけた。

メンバーにも“この娘ができたんだからあなただってできるよね?”と突きつけた。

選抜に選ばれたメンバーとそのファンにも“チャンスは回ってきたんだから、上に行くも元のポジションに落ちるのもそこから先はあなた達次第ね”と突きつけた。

こう考えると、指原莉乃は初監督にして恐ろしいドキュメンタリー映画を作った。


興味を持ってくれたらぜひ大きなスクリーンで見てください。