有限なのである。

 

薄々・・・、いや明確に。

このまま書いてたらGW終わっちゃう。

今日で折り返し地点くらいまで

きたようなもんじゃない?

 

あ、話を割愛しはじめたな?

そう思える部分が出てきたら、

その通り。


 今日も早起き。

お腹空いた。

なんか食べよう。


さて、続き。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌朝。

お父ちゃんは病院に行く気満々だった。

 

お父ちゃんは遠出する人じゃなかった。

しかも運転して県外に出るなんてない。

あたしの直近の記憶では、

小学生の頃に何かの用件で

京都に出向いたのが最後。

小さな社会で小さく生きるタイプ。

 

病院に向かう車内で何を話したか

もう覚えてないんだけれども。

 

他愛の無い話をしてたと思うし、

身の回りのことは自分でやってねと

あたしは躾じみたことを繰り返して

言ってたように思う。

 

途中、お父ちゃんが。

「お母ちゃんに到着時間、連絡しよか?」

と電話しようとするんだけれど、

「ギリギリまで電話はやめとき」

と、あたしは制していた。

会える保障なんかどこにもないし。

 

今でこそ。

感染者数のニュースも見ない程だけど、

当時コロナに関するニュースは日々流れてて、

病院のHPで面会禁止は知ってる。

現状を知ったら落ち込むかな?

お父ちゃんの性格を考えたりしてた。

 

「何か渡せるもんを」

途中、ブックオフで中古本を買った。

きっと、お母ちゃん。

元気なのに入院なんて退屈だろう。

本が好きで度々図書館で借りてたし。

これだけあれば十分な数を抱えながら、

また病院に向かった。

 

「お父ちゃん、ちゃんとマスクして」

病院の駐車場で病院での心得を、

指示してから病棟に向かう。

歩くのも得意で無くなったお父ちゃんだけど、

目的が明確なのか、せっせと歩いてた。

やっとついに、来れたといった様子。

 

そう。

お母ちゃんはすぐ近くにいる。

 

なんだけど。

なんだけど。

なんだけども。

 

辿り着いた病棟でお父ちゃんは固まってた。

お母ちゃんに会えない事実に固まってた。

image

 

これが今の現状やの。

言うてたつもりやけど、

なかなか受け入れ難い。


「お、、お、、・・・

 お母ちゃんに電話してみよか・・?」

「うん、連絡してみたら」

(会えないけど来たよ)を伝えても罪は無かろう。

残念やったねの次の会話を探しながら、

あたしはそう答えた。

 

電話は繋がりすぐに切ってた。

顔が見れる場所まで出てくるという。

あたしたち10分くらい待ってたと思う。

病室は直ぐそこのはずなんだけども。

 

後から、お母ちゃんから聞いた話し。

「あの日は薬で、ほんま体調が悪かったんよぉ」

 

やっとやっとで姿を見せたお母ちゃんは、

ドン引くほど精気が無くふらついてた。

(あ、これやばい状態のやつ)

(あんまり先が長くない傾向)

って、あたしも思ったほど。

 

感染防止で絶対に近寄れない

距離は勿論あるけれど、

お父ちゃんの中で

全く近寄れない距離があった。

怖いのか、不安なのか、わからなのか、

そんな距離。

近づいたら無くなってしまうと

思ってるほどの距離があった。

 

「大丈夫・・・・なんか?」

「し、しんどいんか?」

「大丈夫、来てくれてありがとう」

交わした会話はそれだけだったと思う。

 

「さ、帰るで、お父ちゃん」

あたしは急かした、何度か急かした。

 

でも、なかなかその場を離れない。

「病院に怒られるから、あかんって」

何度も言ってやっと場を離れたと思う。

今、思えば1分にも満たない時間。


やたら長く思え、急かしたのは、

あたしが耐え難かったから。

とても見て居られなかったから。

 

帰り道。

お父ちゃんは全然話さなかった。

話し出したと思えば弱音のみ。

「大丈夫やろか?」

「大丈夫と思うか?」

「わし、お母ちゃんおらんかったら

 何にもできひん、わしはあかんたれや」

帰宅してからも口数は少ないまま。


※あかんたれ=関西弁ググって。

 

「大丈夫やて、今は薬の相性を調べてるから

 あーなってるけどちゃんと退院するから」

あたしが何度繰り返しても、

お父ちゃんはあかんたれやった。


もうもう、あたしも苛ついて。

ほんまになんやねんと思い聞いてみた。

 

「淋しいぃぃーーーっ、

 淋しいぃーーーーって?

 あたしも今ここにおるし、

 弟は毎日家に帰ってくるし、

 東京にお姉ちゃんはおるし。

 全然淋しないやん???」

って、あたしが言うたら。

 

「いや、お母ちゃんがええ・・・」

 

はいはい、そうですかーーーっ。

 

お見合い結婚して50数年。

あたしが小さい頃、しょっちゅうケンカして

お母ちゃんは飛び出し、数日帰ってこなくて

「どっちに付いていく?」て聞いてきたくせに。

 

なんなんやろう?

依存とかそんなん?

夫婦とか、

連れ添ってとか、

当たり前やったとか、

他人から始まった関係やのに。

 

んで、

ようやっと。

ようやっと。

 

「お母ちゃんは大丈夫やから」

と、何度もあたしが念押しをしたので

少し気持ちが落ち着いてきたのか、

飲んでた焼酎をくいくいと空け始めた。

くどくど考えずに寝ようと思ったんだろう。

 

おろおろと立ち上がり、

寝床に向かいながら、

振り向いてお父ちゃんは

あたしに決意表明した。

 

「もし、わしが頼りないことを愚痴ったら

 なに頼りないこと言うてんねんっ!

 って、わしを叱ってくれ、なっ、なっ。」

 

「はいはーーーい」

あたしは。

呆れ声で返事したんだけども。

 

それが。

あたしとお父ちゃんとの最後の会話。

 

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