動き始めた選手によるチーム自治。
まさか今のチーム状況で上位の名古屋に勝てるとは思っていなかったので、今年一番ワクワクする試合内容となりました。
ヴィエイラさんの怪我でトップ筆頭に躍り出たのは、雄也くんでした。
ここで、彼をトップに持ってくるということは、彼もこの一週間、そのように過ごしてきたのだろう、と思いましたし、のっけからその結果を見せつけてくれました。
それは、ゴールという結果よりももっと前、試合が始まって初めて雄也君にパスが付けられた瞬間でした。
2人にマークを付けられながらもボールを自分の懐に収め、前に向いていくことができていたのです。
正直、驚きました。いままでの彼ならパスが来た時点で足を出してしまい、その勢いを止められないか、自分の前方に置いてしまい相手に取られてしまってチャンスをゴールにつなげることがほとんどできていませんでした。
彼がゴールに絡むときは、それも彼のいいところなのですが、ポジショニングがよくて、シュートはうまいですからスペースがあってシュートも余力をもって打てるときということになります。
そもそもサイドの選手ですから、MFのパスフォーム、クロスのフォームをFWのシュートフォームに変えないとならないところからのコンバートです、そう簡単にはいかないのはわかってそこに居るとおもっていました。
ですが、今回は、大きな自分改造をしたのだと思いますし、やはり彼は、できる男なのです。
一週間であのボールの囲い込みをマスターし、相手を振り切り、シュートしてゴールという結果をだしたのですから。
その片鱗が試合直後のワンプレイから見て取れたこと、そして、何度か攻め込むことができたことから、なんと、試合始まって10分も立たないうちにあおちゃんが
「勝てるよ!この試合勝てるよ!」と声を上げたのです。
その時は、いやいや、あおちゃんそれは、早すぎるって、と笑ってしまいましたが、いま改めて考えてみると、今週、一番の懸念点は、「雄也がボールを持てるか」ということだったと思うのです。
雄也君の試合後のコメントに「一週間、アオさんと監督と飛び出しのところについて話し合った」と言っていたように雄也君の技術、ポジショニングには、何ら問題は、ない、しかしオフサイド気味になるところ、ボールの持ち方について、それだけ行けるようになれば、たとえトップの雄也君が点をとれなくても相手DF陣を引き付けておくことができるから、誰かがゴールを取ってくれる、という確信があおちゃんにあったのだと思ったのです。
トップのプレイに自信が見えるとトップ下もボランチも奮い立たされるものがあるのでしょうか?
若いサイドも負けませんし、コーセーさん、私は、今のプレイは、キャリアハイのプレイだと思うのです。ほんとうに頼もしい。
後半になってこちらが押されてきた場面がありました。
相手の交代で前線がフレッシュになったとき、ピンポイントで当ててくるFWに冷や汗をかきました。
1点物のシュートをどんどん打ってくる、荒木君が顔面でブロックしなかったら1点、というシュートもありました。
そんな中、ふと、監督は、「外から行け、外から行け」と指示を出し、そういうサイドの動きになるのですが、前に行っても相手がしっかりとブロックしているわけです。
それでも追加点を狙って攻撃にでるサンフレッチェ。しかしその時タクトさんが「アオ!中を絞れ!」という声をかけるのです。
攻撃的な場面においても相手の守備がそろってしまい、こちらは外からしか行けなくなっても、ロストした時に備え前に行きつつも相手が奪ってから通そうとする道筋は、先に埋めておくというリスク管理を後ろからの声掛けで行っていた、というところにも、この無失点での勝利の理由があったと思うのです。
攻守混在、という中でのタスクというものをそれぞれが両方持つのは、難しいので、ひとによってシーンによってタスクの切り替えをはっきりさせる、ということをするようになったのだと思いました。
この体制になって4年目、いくらシーズン序盤に勝っていてもこの時期になると勝てなくなっていたサンフレッチェがこのシーズン終盤になってチームになってきたように思います。
私は、選手の間にリーダーがいなかったと思っていました。
確かに監督がチームを采配するものなのでしょうが、やはり選手と同じ目線や同じ仕事をしているわけではないので、監督がチームを作る、ということには限界があるのでは?と思っていたし、この何年かのサンフレッチェにはリーダーがいなかったと思うのです。
寿人さんがいた時、寿人さんがリーダーシップをとってチームをまとめていました。
寿人さんがいなくなった後は、千葉ちゃん、そしてもんちゃん。サンフレッチェは、この4年で「リーダー」と思われる選手を失い、選手のチームとしての自治権を失ってしまいました。
監督としては、そういうチームであるほうが自分の思う通りの采配ができ、思うように結果を出せるとおもったのだと思います。
しかしチーム自治を失ったサンフレッチェはちょっとでもバランスが崩れるとすぐ負けが込んでしまうような繊細なチームになってしまいましたし、どうも、それをまとめる人もいないんだなと思いました。
あおちゃんが、これまで、そんなにリーダーシップを取ってこなかったのだと思います。
キャプテンだった時でも今ほどのリーダーシップは発揮してませんでしたし、まずは、自分がよりよくサッカーができるように、というところが主だったと感じています。
それが、今年、うまくフィットできていない自分、連戦になるとスタメンからベンチ外にされる自分になにかふがいなさを感じたのかもしれません。
中断期間を終えた時、それまでのあおちゃん、チームと同じだったら、降格まっしぐらだなと思っていました。
だけど、声を出し、仲間に指示を出し、鼓舞し、しあう、そういうチームを見た時「これは、踏ん張れる!」と確信しました。
やっと、選手による、チーム自治が帰ってきたと思いました。
今の監督がこれまでしてきたこと、ほかのクラブでもしてきたこと、もしかすると、大きくひっくり返されるようなことが起きているかもしれません。
もしも、監督がそれを感じているのならば、ここから最終節まで、監督も変われる、選手も変われる、という「いい方向」に向かうサンフレッチェが見られるかもしれません。
それくらい、大ぶろしきを広げたくなるような試合だったと思いました。