あの夜は モノクロに見えた
ふたりのこどもを抱えて
ヨガインストラクターの卵で
さっきまで 主婦だったわたしが
どうやって 故郷を離れて
やっていけるのだろうか
ここで 生活をつなぐことが
果たして 出来るのだろうか
今のわたしの 精神と身体状態で
雇われは 無理だと いうことだけは
分かっていた
けれども つなぐしかない
翌朝には 初めての大きな出展が
待っていた
けれども 午前2:00をまわっても
わたしの手は動かなかった
身体が動かなかった
呆然として 
全てがモノクロの世界に包まれた
そして いつのまにか
2時間ほど 眠っていたようだ
気がつけば 午前4:00をまわっていた。
約束に 穴をあけては ならない
わたしのちいさな可能性を信頼してくれた
相手先のことは  
どんな 火中の栗の中でも  
鉄のように 冷静な碧の冷たさで
凛と焼けずに 残っていた
出展の準備を 車に詰め込んで 
午前6:00
約束の場所に 間に合いそうだ。
今日は あの場所で
軒先を並べて  笑顔じゃなくていい、
微笑むほどで そこに 穏やかに 
立てていられたら 100点満点だ。
そうして あの時の 朝日を 見ていた。
少しダークグレーで 
どちらにも 傾きそうな 
なんともいえない湿り気の風。
まるで 今日のような日だった。
あのとき わたしは 神さまにおんぶされていた。
でなければ
あの時の強靭なまでの 行動は
起こし得なかった。
あの日から 8年が 過ぎようとしている。
わたしは ふと 伝えたくなった。
つらいときは 
神さまがおんぶしてくれるから
大丈夫だよ。
ほら いま これを読んでいる あなた。
今日も 生きている。
ごはんが 食べられた。
水道から 水がでた。
シャワーを浴びれた。
灯火に包まれた。
屋根のしたで 眠れた。
明日を夢見ることが できた。
どん底にいても
喜びにいても
いつだって  この愛のてのひらから
のがれられないように できているんだ。
だって わたしたち
そんな 光りの源から きた
愛のおにぎりの 米粒だから。