効率化の弊害 | 3倍早くなるためのDTP講座

3倍早くなるためのDTP講座

DTPの作業を早くするためのテクニックを綴っていこうと思っています。

mgさま、中綴千頁さま、ご紹介ありがとうございます。お二人ともブログ拝読させていただいております。

最近、能書きが多くてすみません。

能書きついでにもうひとつ。ここ1カ月以上ずっと「効率」だの「自動化」だのとほざいておりましたが、実は効率化と自動化には大きな弊害があります。

DTPも今の世の中と同じで、ムダなものを省き何でも補助してくれるような仕組みになってきています。

例えば、携帯電話のメモリー機能。登録すれば何百件でも瞬時に呼び出せ、押し間違いやド忘れすることもありません。また、グループ化などで使い勝手も考慮されています。

効率化の観点から言えば、何の欠点もありませんが、問題は人間の方にあります。メモリー機能が便利すぎて頼りがちになってしまうのです。

携帯電話が普及する前は少なくとも友達の電話くらい暗記していました。いまは携帯がないと電話をかけることもできません。

これは単純にワタクシがなまけものなだけかもしれませんが、機械が便利になれば頼り、安全装置が付いていれば注意をしなくなるのがニンゲンです(全ての人とはいいません)。

生命の危機や実損がでるようなものに安全機能をつけるのは当然ですが、それがかえって注意をしなくさせてしまうのです。

もしも環境が変わって安全装置の働かない場所で作業をした場合に、トラブルを起こす確率が高くなります。

ワタクシは人にものを教える際に、たとえボタン一つ押すだけの作業でも、その構造を必ず説明するようにしています(ブログではけっこうはしょってますが…)。

オペレーターがする作業は、「ボタンを押すだけ」であっても、ボタンを押しているのではなく、データを作っているのです。たまたま自動化でボタン1こで済んでいますが、実際にはああしてこうしてこうなっているということを理解しないと、いつまでたってもDTPのスキルは身につきません。つくのは効率の良いボタンの押し方です。

効率化、自動化をはき違えると、かえってオペーレーターの成長を妨げてしまうこともあるのです。

また、最近のDTPソフトの傾向としては、スタイルに代表されるような設定に依存するタイプの機能が増えています。これは作る側もとても便利で、データもシンプルになり効率の観点から見ればとてもよいことだと思います。

しかし、先日のエントリーの3D効果で作る地球儀や、InDesign CS4の正規表現スタイルなどは、知らない人にとってはまったく未知の領域で、デビット・カッパーフィールドが飛行機を消したのを見ているようなものです。

そんなのは使う人が勉強すべきと思うかもしれませんが、現在のDTP環境では個人だけを責めるのはかわいそうです。

現在のDTP環境はOS9、OSX、Windows、アプリケーションではQuarkXPress、InDesign、Illustrator…。主流はありますが、乱立しすぎて収集がつかなくなっています。同じ体裁の冊子でも職場の環境によって作り方は異なり、それぞれの会社が独立国のようになっています。

会社の環境はたいてい個人が口を出せるものではなく、協力会社や出力環境、はたまた取引先のしがらみなどがあって、OSXを使いたくても、セミナーに行って勉強をしても強制的にOS9+QuarkXPress 3.3なんてケースもそれほど珍しくはないでしょう。

このような背景がある以上、アプリケーション側が効率の良い機能を実装するたびに、環境による個人のスキルの差が大きくなり、オペレーターのスキルが二極化してしまう可能性があるのではないのでしょうか。

さらにもうひとつ。効率化や自動化が進めばオペレーターは必要なくなります。いま、まさに墓穴を掘っている状態ですね。できたらそこに突き落とされる、みたいな。