https://www.sankei.com/wired/news/210509/wir2105090001-n1.html


ビットコインの“資金洗浄サイト”の管理者が逮捕され、改めて証明されたこと



   ビットコインの資金洗浄サイトとして知られる「Bitcoin Fog」

は、過去10年にわたってユーザーの仮想通貨の出どころや

送金先を覆い隠すサービスを提供してきた。



   いまではダークウェブ経済において最も“尊敬されるべき”

組織のひとつに挙げられている。

 



   この長く続いてきた匿名化システムについて調査していた

米国の内国歳入庁(IRS)が、背後にいたロシア系スウェーデ

ン人をついに特定し、数億ドル規模のビットコインを資金洗浄

した容疑で起訴したと発表した。



   その資金の大部分はダークウェブの薬物市場に送金され、

またそこから出金されていた。

 



   なぜ彼は起訴されるにいたったのだろうか。きっかけは、

彼自身の10年にわたるデジタル取引の痕跡にあった。

 






■ビットコインの取引をロンダリング

 



   裁判記録によると、米当局が4月27日にロサンジェルスで

逮捕したのはロマン・スターリンコフ。



   当局は、スターリンコフがBitcoin Fogを運営していたとされ

る10年間で、120万ドル(約1億3,000万円)以上に相当するビッ

トコイン(決済当時の価値は3億3,600万ドル相当)を資金洗浄

した罪で起訴している。

 



   IRSの犯罪捜査部によると、ロシアとスウェーデンの国籍を

もつスターリンコフは、Bitcoin Fogのユーザーが自分と他者

の取引をごちゃ混ぜにできる状態にすることで、ビットコイン

のブロックチェーンを調べても個人の決済を追跡できない

ようにしていた。



   そうした取引から、彼は2~2.5%の手数料を受け取ってい

たという。

 



   IRSは取引が実行された当時の相場に基づき、スターリン

コフが資金洗浄を通じて合計約800万ドル(約8億7,000万円)

相当のビットコインを手にしたと推測している。


   この計算には、過去10年で高騰したビットコインの価格上

昇分は考慮されていない。



   皮肉なことに、スターリンコフがBitcoin Fogのサーバーを

開設する際に実行したとされる2011年の取引が、IRSが彼の

しっぽを掴むきっかけとなったようだ。

 



   「適切なツールをもった調査官が、仮想通貨の透明性を

利用して不正資金の流れを追跡できることが改めて証明さ

れました」と、ブロックチェーン分析企業のChainalysisの

共同創業者であるジョナサン・レビンは言う。



   Bitcoin Fogは4月27日午後の時点において稼働し続けて

いるが、いま誰が運営しているのか(運営者がいたとしての

話だ)は不明だ。



   IRSも米司法省も、『WIRED』US版のコメント要請には応じ

ていない。

 






■85億円相当がダークウェブへと流出

 



   スターリンコフの訴状に書かれている起訴事実は、11年

暮れにBitcoin Fogを開設したとされるところから始まる。



   このとき、彼は日本語で「Happy New Year」を意味する

「アケマシテ・オメデトウ(Akemashite Omedetou)」という

偽名を使ってサイトを広めていたようだ。



   このオメデトウを名乗る人物は仮想通貨のフォーラム

「BitcoinTalk」に投稿し、Bitcoin Fogについて次のように

宣伝していたという。

 



   「あなたのビットコインを、ほかのユーザーが参加する

わたしたちのプールと混ぜ合わせます。あなたの支払い

が見つかる可能性をゼロにし、わたしたちのサービスに

おける預け入れと引き出しとの関連性の証明を不可能に

します」

 



   Bitcoin Fogによる資金洗浄であるとして告発されてい

る3億3,600万ドル(約365億円)相当のうち、少なくとも

7,800万ドル(約85億円)が薬物を販売する「Silk Road」

や「Agora」「AlphaBay」といった複数のダークウェブ市場

へと流れていた。

 



   IRSは、19年には秘密捜査員も動員してBitcoin Fogで

取引を実施したようだ。



   あるケースでは、エクスタシーの売り上げを資金洗浄し

たいという明確なメッセージをBitcoin Fogの管理者に送っ

ている。



   Bitcoin Fogはそれに返信することなく、そのユーザー

の取引を完了している。

 






■いまや追跡可能になった台帳



   だが最も注目すべき点は、ブロックチェーンの分析を

スターリンコフ自身のサービスで無効化できたはずが、

この技術によってIRSが彼を追い詰めたことだろう。



   訴状によるとスターリンコフは、いまはなきデジタル

通貨「Liberty Reserve」を利用し、11年のある時点で

Bitcoin Fogのホストサーバーに利用料を支払ったと

されている。

 



   このときに使ったLiberty Reserveをスターリンコフ

はビットコインで購入しており、その際の証拠がブロ

ックチェーンによって示されている。



   彼はまず、仮想通貨の取引所として老舗だった

「マウントゴックス」でユーロをビットコインに換え、

そのビットコインをいくつかのアドレスを通じて移動さ

せた。



   そして別の取引所でLiberty Reserveに換金し、

その資金でBitcoin Fogのドメインを取得したという。

 



   こうした一連の取引の追跡を基に、スターリンコフ

の家の住所と電話番号が登録されていたマウント

ゴックスの口座を突き止めたのだと、IRSは説明して

いる。



   また、ビットコイン決済をわからなくする方法がロシ

ア語で記されたGoogle ドライブの文書が保存されて

いたGoogleアカウントも特定したという。



   その文書では、スターリンコフが使ったLiberty Re

serveの購入手順とされるものが正確に説明されて

いた。



   ビットコインはかつて、追跡不可能な匿名取引を

実現する強力なツールになると広く信じられていた。



   しかし今回の事案は、多くの事例において実態が

その正反対であることを改めて示している。



   ビットコイン創成期以降のすべての取引が記録さ

れているブロックチェーンの台帳は、いまや相当に

古い取引まで追跡するための手段になり、ときに法

執行機関の道具にもなっているのだ。

 





■あらゆる活動は台帳に永遠に残る

 



   ブロックチェーンの分析によってBitcoin Fogの

管理者が逮捕されたことは、「金の流れを追う」と

いう基本的な手法によって調査員がどこまで時間

をさかのぼれるのかを示していると、ユニバーシテ

ィ・カレッジ・ロンドンのコンピューターサイエンティ

ストのサラ・ミークルジョンは指摘する。



   なお、ミークルジョンが13年に発表した研究は、

ビットコインを追跡する手法の先駆けとなった。

 



   「ブロックチェーンの分析についてわたしたちが

繰り返し指摘しているのは、『活動のすべてが台帳

に永遠に残る』ということです。10年前に何か悪事

を働いていれば、それが原因で今日にも逮捕され

る可能性があるのです。IRSが今回の取引を暴い

たことには大きな意義があります」

 



   一方でミークルジョンは、管理者が逮捕された

Bitcoin Fogがなぜ稼働し続けているのか、頭を

ひねっている。



   法執行機関は過去にもダークウェブの犯罪活動

を密かに摘発したことがあると彼女は指摘するが、

Bitcoin Fogがそうした事例のひとつであるなら、

なぜスターリンコフの訴状が公開されているのだろ

うか?

 



   「いまの時点で自分の取引を隠したいと思う人が

いるなら、Bitcoin Fogのサービスには欠陥があると

思わなくてはならないでしょうね」と、ミークルジョン

は言う。



   つまり、匿名の保証がある状態でビットコインを

使ったり受け取ったりすることが、今後は少し難し

くなるということなのだ。







ビットコインが、マネーロンダリングの温床だと、言う

事は、知ってました。が、これを止める事は、出来な

い。だろうと、思っていました。


何と言っても、暗号ですから、解くのには、時間も

掛かりますし、足跡すら残さずに、悠々と取引されて

行く事だと、思ってました。


足跡って、残るものなんですね。


それを解いた人って、凄い!としか、思えません。


今後は、ビットコインも易々とは、使えなくなるんで

すね。


それでも、まだまだ、続くのでしょう。


仮想通貨の流通。