総務省違法接待は菅首相の報復人事と霞が関幹部私物化が発生源、現場の国家公務員はお茶菓子も食べない | すくらむ

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 全経済産業省労働組合中央執行委員の飯塚盛康さんが、総務省幹部の違法接待問題について書いてくれたので、以下紹介します。

 総務省幹部の国家公務員倫理法違反の問題について考えてみたいと思います。

 はじめに、国家公務員倫理法における外部の者との飲食について確認すべきことは以下です。

 今回、問題になった「利害関係者」とは、――

 ①許認可等の相手方(許認可等を申請しようとする者も含む。過去に許認可したが現在も有効である者も含む)
 ②補助金の相手方
 ③立入検査、監査、監察の相手方
 ④不利益処分の相手方
 ⑤行政指導の相手方
 ⑥契約の相手方
 その他、他の省庁で予算の査定や公務員の定数の事務を行っている者も該当します。

――となっています。

 東北新社は総務省から放送事業の許認可を受けている会社なので、①に該当します。

 利害関係者と飲食を共にする時の費用の負担については――

(1)利害関係者の負担が自分と同額またはそれ以下になる場合

 ①割り勘の場合は飲食可ですが、1人1万円を超える場合は事前に飲食届け出を提出する必要があります。
 この場合、飲食後領収書等で確認し、消費税を含めて割り勘負けした場合は違反です。たとえ、事前に取り決めた金額を支払っても、割り勘負けしたら違反です。
 ②自分が全額、あるいは相手方よりも多く負担すれば飲食可。

(2)利害関係者が自分より多く負担する場合
 以下の例外に該当すれば飲食可。
 ①20名以上の立食パーティー
 ②職務として出席した会議における簡素な飲食
  簡素な飲食とは会議室における2~3千円程度の箱弁。
 ③私的な関係がある利害関係者との飲食
  私的な関係とは、家族・親族、学生時代からの友人、職場外の地域活動で知り合った者で、職員として知り合ったことがきっかけで友人関係になった者は対象外です。
 ①から③に該当しない場合は飲食禁止です。

 今回の総務省の接待は、放送事業の許認可を受ける東北新社は明らかに利害関係者であり、その利害関係者が飲食代金を全額負担したので、明らかに違反です。

 総務省の幹部は、このことが発覚してから自分の飲食代を支払いましたが、割り勘負けした場合、速やかにその分を支払わないと違反ですから、違反行為がなくなることはありません。

 会社は情報が欲しい時は実際に実務を担っている担当職員と飲食をしたいと考えますが、多くの職員は倫理法違反で将来を棒に振るようなリスクは犯さないので、断るか、居酒屋で割り勘です。会社も担当職員に最終的な権限がないのはわかっているので、高級店で飲食させるなんてコスパが悪いことはしません。会社は許認可に何らかの手心を加えてもらいたいと思えば、実務を担っている担当職員よりもっと上の者と飲食をして、その代金を全額負担すれば、「貸し」ができます。飲食をした上の者は「借り」があるので、その「借り」を返そうとするので、行政がゆがめられることになります。だから、公正な行政をすべき国家公務員は利害関係者との飲食を禁じられているわけです。

 総務省の幹部は東北新社が利害関係者とは知らなかったと言っていますが、総務省の花形部署である放送事業の許認可業務をグリップしている幹部が東北新社が利害関係者と思っていなかったとしたら、彼らに放送事業の許認可をさせてはいけません。

 また、飲食の場で放送事業のことは話題に出なかったと言っていましたが、彼らと東北新社との共通の話題は放送事業のことに決まっているではありませんか。せっかく、高いお金を出して飲食させているのに、放送事業とは関係ない釣りの話でもしていたというのでしょうか。あまりにバカバカしくて空いた口がふさがりません。

 また、どんな会話をしたかも記憶にないと言っていますが、彼ら彼女らキャリア官僚が誇れる点は「抜群の記憶力」です(これしかないと言ってもいいですが)。その彼ら彼女らが会話の記憶がないというなら、今すぐにでも脳ドックを受診した方がいいと思います。

 今コロナ禍の中で、厚労省だけでなくどこの省庁も幹部を含め多くの職員が多忙を極めています。コロナの感染を心配しながら高級料理を食べる時間より、寝る時間が欲しいというのが、本音です。

 菅義偉首相は総務大臣の時にふるさと納税に反対した局長や課長を飛ばしました。総務省の幹部には、菅首相に逆らうと報復人事が待っていることがわかっています。これは総務大臣秘書官だった菅首相の長男である正剛氏に逆らっても同じことになると思っても不思議ではありません。だから、菅正剛氏が同席する接待を断れなかったのだと思います。

 加えて、霞が関の幹部人事を握っている菅首相の長男たる菅正剛氏が同席している接待ならば問題になることはないだろうという楽観視もあったと思います。今回の総務省接待問題は、菅正剛氏の存在がなければ、起こり得なかったと思います。

 国家公務員の仕事には、許認可や検査、補助金の交付業務があります。これらの仕事をするときは、日々利害関係者と接触することになるので、飲食の誘いにはかなり気をつけています。

 たとえば、検査で企業に行った時はお茶やコーヒーは飲みますが、お茶菓子には手をつけません。昼食は外で食べるか、外で食べられない場合は事前にコンビニで弁当を買っていきます。当然、検査が終了すれば、即退社します。

 駅から遠い企業に行くときも、企業の送迎は断って、バスかタクシーで行きます。タクシーの利用も制限があるので、1時間に1本しかないバスに乗って、バス停から30分歩くなんてことも普通です。

 これくらい、現場で働く国家公務員は倫理観を持って仕事をしているにもかかわらず、幹部が接待を受けているのを見て、多くの国家公務員の士気はだだ下がりです。

 総務省の幹部は処分され、総務省の中での出世はもうないと思いますが、山田真貴子内閣広報官だけは、すでに一般職国家公務員を退職し現在は特別職国家公務員で国家公務員倫理法が適用されないため、処分の対象になっていません。しかし、山田真貴子氏が菅正剛氏らから7万4203円の接待を受けたのは一般職国家公務員のときであり、その責任は免れませんし、そもそも特別職国家公務員にも倫理法が適用されるべきです。

 内閣広報官という特別職国家公務員は政治任用ですから、その責任は政治任用した菅首相が取るか、本人が辞職するほかないと思います。一般職国家公務員を退職後、60歳で月100万円以上の給料をもらいながら辞職しないというのは、市民の怒りを呼ぶのはもちろん、60歳で再任用しても年収で300万円に届かないで働いている多くの国家公務員の怒りも呼ぶことになるでしょう。

 今回の総務省違法接待問題が起こった背景には、森友・加計問題と同じ内閣人事局による霞が関の幹部人事支配があります。内閣人事局によって菅首相が国家公務員を私物化できる構造になっているからこそ起こった問題です。行政をゆがめて腐敗させる内閣人事局を早く廃止する必要があります。

全経済産業省労働組合中央執行委員・飯塚盛康