実はわたしが失語症になったときに見た文字は平仮名の50音表だけでした。
漢字やカタカナを見る機会がなかった理由は専門家の検査を受けていないことも大きいと思いますが、わたしの場合失語症になっても話しかけられる言葉をよく理解していたからだと思います。
失語症には人によっては話しかけられた言葉を理解するのが難しくなる症状がありますが、
わたしは周囲の人たちが普段と変わらないスピードで話していても理解するのに特に問題は感じませんでした。
周囲の人たちは自分たちが話す言葉を字にしてわたしに見せる必要はなかったのです。
だからわたしが失語症になったとき、50音表の平仮名以外は理解できたがどうかについては、はっきりと言えないのですが、
50音表を見たときのあの脳の反応をみると、他の文字も理解するのはかなり厳しいものを感じます。
平仮名が理解できないからといって漢字も理解できないとは一概に言えないと思いますが、わたしがなぜ漢字も理解するのが難しいと思う理由は、また別の機会に書いていければと思います。
平仮名の50音表を見たときのことに、話しを戻しましょう。
わたしの場合、50音表の中で読み方を思い出せる文字はありませんでした。
また、50音表の平仮名の字の読み方を母に何度も教えてもらいましたが、自分から読み方を『思い浮かべる』ことはできませんでした。
わたしの症状は『思い出せない』というより
『思い浮かべられない』
……と、表現するほうがいいかもしれません。
なぜなら字の読み方を覚えられないという症状ではないからです。
わたしは母から平仮名の字の読み方を教えてもらうたび、この文字の読み方を『知っている』自分を感じていました。
わたしのような失語症を字の読み方を『思い出せない』と捉えるのではなく、読み方を『思い浮かべられない』と観るのは大事なことだと思います。
言葉や字の読み方を『思い出せない』と捉えると、皆さまは何度も教えればいつか記憶されて『思い出せる』ようになると考えるのではないでしょうか?
失語症は色々な症状がありますが、皆さまはわたしが経験したような失語症に対しても、
『言葉や字の読み方を教えること』が
この症状の最初のアプローチ方法だと思っていらっしゃいますか?
わたしは
この症状は言葉や字の読み方を『記憶』していく能力とは関係ない
……と思っていますし、
わたしが失語症になったとき一番最初にしたこと……というか、自分の心に決めたことは
(以前の記事『失語症と接客業①』でもお伝えしていますが)
『言葉を話したい』とか、『口の形をまねしたい』とか思わないようにしたことです。
わたしが経験した失語症を理解するのはとても難しいと思います。一音節も復唱できないとか、50音表で読める文字がないとか、口の形をマネしたくてもマネしようとすると口が開かないとか……とにかく症状が極端すぎるのです。この症状を理解するポイントはまずは、
言葉を記憶していく能力に問題が出ているのではなく、
言葉という音声を、
字の読み方という音声を
思い浮かべる能力に問題が出ていることに目を向けることだと思います。
字の読み方を思い浮かべられないおおもとの原因は、
『話しかけられる言葉は理解できるのに一音節も復唱できない』……という症状からきていますが、次回はわたしが母から平仮名の読み方を教えてもらったときのことを書いてみましょう。
言葉を思い出せないというよりも、言葉を思い浮かべられないという感覚が伝わればいいと思っています。
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