鰯本さんと大阪のおばちゃん vol.3 | 石本幸四郎 OfficialBlog「そのまんまでうまくいく〜5%のキセキ〜」

石本幸四郎 OfficialBlog「そのまんまでうまくいく〜5%のキセキ〜」

職業=石本幸四郎。視野5%の世界を生きながら直感と笑いを大切にし、言葉や漫画、過酷なマラソンへの挑戦など、ワクワクすることで世界観を表現するアーティスト。人生こそアートだ。

【鰯本さんと大阪のおばちゃん vol.3】

 
「あの・・・ちょっと聞いていいですか?」

『なんや?おばちゃんの美人の秘訣でも聞きたいんか?』

「ボク、どうすれば元に戻れますか?」

『なんや、そんなことか。それよりお腹すいたわ。なんか食べるもんないん?』

「カップラーメンならありますけど・・・」

 
ボクは戸棚に2つあったカップラーメンをおばちゃんの前に差し出した。

 
『みそ味ととんこつ味か。あんたも食べ!まずは同じ釜の飯食うて仲良くなるところからや』

「は、はぁ・・・じゃあどっちの味がいいですか?ボクはどっちでもいいです」

 
おばちゃんは急にするどい目でボクを見た。

 
『あんた、それやで。イワシになった理由」


「えっ!?どういうことですか?」

『あんたはそうやって自分の声を無視してきたんや。ほんまはどっちの味を食べたいかわかってるのに』

「いやいや、本当にボクはどっちでもよくて・・」

『いーや!そんなことはない。あんたは絶対わかってる!目ぇ閉じて胸に手ぇあてて自分に聞いてみ!』

 
ボクはおばちゃんの勢いに飲まれ、言われるがままに、目を閉じて胸に手をあてた。

『ええか、自分の中にはいろんな声があるから、それに耳をすましてみ』

・・・・・

・・・・・・・・・・

「とんこつが好き」
「とんこつが好きって言ったらなんて思われるかな」
「とんこつが食べたいけど、おばちゃんがとんこつ選んだら譲ろう。嫌われたくないから」
「本当はラーメンじゃなくて、からあげが食べたいなあ」
「健康のためにはラーメンはやめといたほうがいいよなあ」
「とんこつを選んで、後で『本当はとんこつが食べたかった』とか言われたら嫌なので選んでもらおう」
「好きなものを選んで、悪者にされるのは嫌だ」

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・

いろいろな思いが浮かんでくる。

でもそれを必死にかき消そうとする自分もいる。

 
『どや?内側はいろいろやかましいやろ。でもそれをかき消そうとしてるやろ?』

 
 
 
・・・あまりにも図星すぎて、返す言葉もなかった。

『何が食べたいかってだけの話やのに、余計なもんまでぐるぐる頭ん中で回してるねん。ほんで自分の本当の声が聞こえへんようになってるんやで』

 
今までこうして自分の内側に意識を向けたことがなかったので、結構衝撃的だった。

 
『イワシから元に戻るにはな、本当の自分を取り戻すことや。これは神様からのありがたい課題やで。そのためにまずはこうして自分の内側に意識を向けることからやで』

「そうなんですね。でも内側に意識を向けると・・・なんだか苦しいというか、つらいというか、見たくないものを見にいく感じがします

『そやろな。まあそれはおいおい楽になっていくわ。ところで内側の自分は何味が食べたいって言うてた?おばちゃんに正直に言うてみ』

「・・・とんこつ・・だと思います。たぶん・・・」

『そうなんや。へぇ~。・・・ゲプッ!』

 
 
・・・ゲプッ!?


ボクが目を開けると、そこには空になったカップが2つ並んでいた。

「り、両方食べたんですか!?ボクが目を閉じている間に」

『いや、だって、おばちゃんお腹ペコペコやったやん?あのままやったらお腹と背中がくっついて死んでまうやん?おばちゃんにここで死なれたらあんたも困るやろ?』


そう言いながら笑い、また『ゲプッ』とゲップをした。

「同じ釜の飯を食べて仲良くなるって話じゃなかったですかー!」

『あれ?そうやったっけ?安心しぃ。おばちゃんの得意技は誰とでもすぐに仲良くなれることやから。がはははは!』


 
 
ああ、この先ボクはいったいどうなるんだろ・・・。

{14764E6D-F1F7-449D-B297-9D1D6C7BA69E}


 
vol.4へつづく