40年近く東京(関東)で生活してきて

この歳になって、初めて田舎に移住してきた。

都会に比べていろいろ不便さを感じるかなと思っていたけど

そんなことはたいしたことではなかった。

むしろ田舎の方が大きいショッピングモールは充実しているし

車さえあれば行動範囲も広い。

 

それより私が身に染みているのは「孤独」だったのだ。

 

不思議と都会では子供を連れているといろんな人が

話しかけてくれていたように思う。

雰囲気で「都会の人間は冷たい」という人がいるけど

それは絶対に違う。

人間関係が希薄と思われがちな都会だからこそ、

人々は周囲の人間との関係を大切にする。

 

いつも必ず話かけてくれたスーパーのレジのおばちゃん

マンションのエレベーターで会うと必ず世間話をはじめるおばあちゃん

あいさつはしたことがないけれどよくすれ違う名物おじさん

長年私の髪の毛を切ってくれていた美容師さん

毎月凝り固まった私の肩をほぐしてくれたマッサージ師さん

子供が産まれてから何度もお世話になった小児科の先生

いつも郵便物を届けてくれた郵便のおばちゃん

いつ休んでいるのか心配になるくらいいつも働いていたヤマトのおじさん

約束して会うことはなかったけど近所でよく会う親子などなど

 

私は知らず知らずのうちに多くのやさしさに囲まれて生活していたことを思い知る

自分は友達は少ない方だけどこうして日常のあちこちに自分の知っている人のいることが

こんなにも幸せなことだったなんて、そこから離れて初めて思う。

 

今日近くの公園で遊んでいたら娘がずっとぐずっていた。

イヤイヤ期なのだ。最初はがんばってあやしていたけど

途中から疲れてしまって、放置してスマホをいじりはじめてしまった。

その直後まわりの視線にきづいた。

ああ、私は今泣いている娘を放置してスマホをいじる最低な母親なんだろうな。と。

私はスマホをやめ、再度娘をあやすふりをしたけど、娘は泣き止まない。

そしたらその様子をみていた散歩中のおばあちゃんが近寄ってきて

 

「おじょうちゃん、どうしたの?

こういう時期もあるよね。

お母さん、大変だねえ。」

 

そうやさしく話しかけてくれた。

私の中で何かがわきあがってきた。

 

ちょうどぐずる娘を抱っこしていた時だったので

そのおばあちゃんが

 

「大切にしてね。」

 

といったので、娘のことかと思い

 

「はい。ありがとうございます。」と返したら

 

「違うわよ。あなたの身体を壊さないようにね。」と。

 

その瞬間、こらえていた涙があふれだした。

 

いつぶりだろう、こんなに優しい言葉を自分にかけてもらったのは。。

 

私は子供のために気を張っていたけど、ずっと孤独だったのだ。

 

知り合いが一人もいないという状況は想像以上に私を孤独にしていたのだ。

 

東京に帰りたい。

 

田舎に引っ越してきて、初めてそう思った。

 

人のやさしさに触れたくなった。

 

自分がこんなにも東京のことを好きだったなんて

 

今更思い知った。住んでいたときは文句ばかり言っていたけど。

 

本当に人間はないものねだりばかりでだめだよねえ。

 

もっと現在(いま)を大切に生きなきゃ。

 

だからこそ私はこの田舎でがんばって生きていかないといけないのだ。