リンカラ ~ 皆川公美子です。
情熱のピアニスト、マルタ・アルゲリッチを、三女ステファニーが撮った映像でドキュメンタリーに仕立ててある作品でした。
アルゲリッチの家族にだけ見せる顔。
そこから見える世界はかなり真実の表情を伝えていると思われます。
アルゲリッチ。
カラスの濡れた羽のような黒くて豊かな髪。
強い光の視線。
エスニックな肌。
私の記憶の中の姿はこれです。
1965年にショパンコンクールで優勝し、それからは世界を股にかけての演奏家。
恋多き女としても有名でしたが、
3回、結婚・離婚を繰り返しました。
お相手はいずれも音楽家で
一番目の夫は中国人音楽家ロバート・チェン。
一番目の夫は中国人音楽家ロバート・チェン。
二番目の夫はシャルル・デュトワ。
(デュトワは日本へもとてもよく来ていたし、N響の音楽監督だったときもあったと記憶しています。)
この映画の作者ステファニーのお父さんはピアニスト、スティーブン・コヴィセヴィッチです。
(デュトワは日本へもとてもよく来ていたし、N響の音楽監督だったときもあったと記憶しています。)
この映画の作者ステファニーのお父さんはピアニスト、スティーブン・コヴィセヴィッチです。
娘たちはそれぞれ違ったキャラクターで、違った人生を歩みます。
長女は「誘拐された」形で連れて行かれたし、父親との距離の取り方も繊細な問題で、平穏な家庭生活とは程遠いものだったことでしょう。
そういう中での、家族。
アルゲリッチは、まさに感性の人です。
「今、難しい問題に直面しているわ。とても深い問題よ。でもそれがなんだか分からない。どう言ったらいいの?わからないのよ。でもとても重要な問題なのよ」
そう言いながら歩き回る、ということは、どうやらしょっちゅうあるような。
「妊娠しているときは音楽が変わった?」
という問いに、
「いつも私の演奏は、こう、、横なのね。でも妊娠しているときは縦だった。なんていうのかしらね、こう、縦、であって、逆の横でもないの。」
この言葉の感性を、説明するのは野暮でしょう。音楽の流れ、スピード感、地球とのグラウンディング、そういうことを感じなごら演奏している人の感性です。
感じて、それを言葉に翻訳せずに、そのままダイレクトな音楽に載せる人の感性です。
彼女が音楽のことを語るシーンはあまりありませんでしたが、
シューマンについて語る部分がありました。
シューマンが一番好きだと。
意外に感じました。
ショパンで有名になり、情熱のピアニストとしてあがめられた女神。
恋愛も華やかだし、彼女と共演した演奏家はみな口をそろえて
「気分が高揚し、自分の音楽が熱くなっていく」と語るそうです。
シューマンはとても内向的な作曲家だと感じています。
人の心の機微を誰より深く繊細に表す作曲家ではないかと・・・・・
アルゲリッチはもっと華やかなものを好むのかと思っていた。
私のお気に入りのシーンはね。
芝生の上で、娘たち3人とともにマニキュアを足に塗るシーンがあります。
ここが赤では?
いや、親指は赤はダメ。
じゃあオレンジにしましょ。
あら、その色素敵ね。あなたその色似合うわ。
などとたわいもない会話をしながら、3人の娘と戯れる、アルゲリッチの姿は、
自分の外界に翻弄された繊細さんではもはやなく(重い鬱にもなりました)
いま、ここで、
人生の美しさを謳歌する女性。
映画の中のラヴェル:水の戯れ がとても良かった。
ああ。美しい。
私も言葉を失いました。
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