HSP/HSC プロデューサー 皆川公美子です。
幸福の国とはイコール安心がある国、だと感じます。
HSP協会理事長のアティナさんは
そんな「安心」を存在すべてで体現しているような方でした。
今日はプログラムにご参加くださいました、キャリアカウンセラー 西原栄美さんのレポートを転載させていただきます。
以下転載。
1 デンマークでの HSP の状況を教えてください。
HSP の定義はアメリカと同じ。(HSP= (highly sensitive person),HSC= (highly sensitive child)) デンマークでの認知度は、この 5~10 年で上がってきている。
2008 年に「The Highly Sensitive Person」が デンマークで翻訳され、2013 年にはアティナさんが全国 50 か所くらいでワークショップを行ったことの影響が大き い。 特に保育園・幼稚園・ペタゴーはコースで勉強している場合が多く、認知度が高い。
一方、一般社会の人 達、リーダー、そして小中学校の教師、そして、ペタゴーや心理学者などのスペシャリストの中でも認識に大きなズ レがあり、中には「特別扱いされたいだけなのでは」というような意見もあるとのこと。
書籍は多いが、コース・ワークシ ョップが少ない。
HSP に対する勘違いも多く、「敏感であるのは個性」だが、ストレスと関連づけて済ませる人も多い。実際は、敏 感さは個性なので、ストレスがなくなれば問題がなくなるわけではない。対応方法やコツが分かれば、あまり感じなくなることはある。
HSP の人達が個性を生かしていくためには、家庭・職場・学校・友達とのかかわりなどで、自分に 合う環境や方法を見つけることが大切。
しかし、それ以前に当事者本人が“認める”ことが重要だが、それが難しい。
アティナさんがサポートしている人はすべて敏感さを持っているが、本人がなかなかそれを受け入れない。
なぜならば、 社会の中で自分が劣っていると感じたり、自分に何か足りない・ダメなところがあると思ってしまうためである。
例え ば、他の人は仕事をした後、週末にパーティーに行ったり活動したりしているのに、自分は疲れてしまって何もでき ず、ダメだと感じてしまう。
こういったことを、個性の一つと考え、できることとできないことがあると認めて、コツを見つ けたら楽になる。
2 日本の現状との比較を交えて
-1.日本では、光・音・臭いなどへの敏感さに加えて、人の感情を読みすぎる/感じ取りすぎる 傾向があるが デンマークではどうでしょうか。
HSP には、敏感だという個性・特性があるが、ワークポイント(自分がやらなければならないこと、社会で使える 仕事ポイントのこと)とギフトの両方がある。
大切なことは、『アンテナの半分を自分の内側に向けること』 他の人をサポートすることも大切だが、それと同じだけ『自分をサポートすること』がとても必要。 自分の責任、やることを決めて、意識してそれに従う。自分がやらなくていいことまで抱えようとしないこと。
デンマークで、ストレスで仕事ができなくなったり、長期で仕事を離れることがある。HSP/non HSP いずれにも いるが、HSP には多い。休職後の就労調整などのサポートがある。
-2.日本では、「特性である」と精神科医が明言しており、診断・支援の対象となっていない。 そのことに加えて、認知度が低いため、サポート体制がないがデンマークではどうでしょうか。
デンマークでも HSP としてはサポートを受けることはできない。しかし、診断はつかないが、明らかに“問題”や”難 しさ“があり、政府からのサポートが必要な場合には、ケースワーカーが手続き・手伝いをしてくれる。
そうしてスタ ンプがもらえれば、(もらうまでは大変だが)サポートが受けられて楽になる。
例えば、子どもなら政府に申請して、学校に補助金が下りて一人に一人の先生がつくなどの支援が受けられる。 また、感覚過敏のストレスで仕事ができない場合などは、35 時間/週 から 15 時間/週の仕事に変える人、 年金を早めにもらう人もいる。
-3.感覚的なことを伝えるときの難しさにはどのような対応をしているか
一番大きな問題で難しいことですね。
アプローチ法としては
1例え話を使う
2具体的に説明する ことなどが有効。
2019.08.29(木)
HSP Foreningen 理事長 アティナ・デルスコフさん(Athina Delskov)と皆川公美子さんの対談
西原 栄美
1. 施設説明・概要
<HSP Foreningen (association)とは>
デンマーク国内の HSP をもつ人達の周知活動およびネットワークを構築している協会。
HSP 協会は 2005 年に Linda Skougaard さんと Johnni Jakobsen さんによって設立され、2011 年 1 月に 再編成された。アティナさんは 2012 年に協会のトップに就任。 最盛期は全国に約 1100 名、現在は約 400 名 の会員と 16 の地方支部を有する。地方支部では、繊細な特性について情報を提供し、全国の敏感な人々のため のネットワークを作成するなどの活動をしている。 協会の目的の一つは、社会の敏感な人たちの条件を改善すること。そのために協会は、保育所や学校、企業や自 治体に対して、講演・講義やワークショップの開催、自治グループを作るなどさまざまな取り組みを行っている。 最近 では、労働生活での敏感さを考慮する方法に関して情報を提供するなど、適切なワーキングライフ研究に率先して 取り組んでいる。(協会 HP より抜粋)
<アティナ・デルスコフさんの著書>
『食と感受性』 2013 年
『Sensitive børn(訳:繊細な子ども)』 2014 年
『Sensitive børn(訳:繊細な子ども)要約版』 2014 年 『Sensitive unge(訳:繊細な若者』 2015 年
2)アティナさんのプロフィールと経歴
現在77歳。 67歳の時にアーロン博士の著書を読んで、自分自身がHSPと気づいた。「なるほどそういう ことだったんだ。」と思ったとのこと。
戦略を使って感情面や出来ることで自分を守ってきたから、それまでの人生あまり困らなかった。
長年にわたって IT 業界で企業のサポートの仕事をしてきた。その後、50 歳で心理カウンセラーの資格をとり、 2002 年以来、私は敏感な人々(摂食障害/自傷行為)の治療を行ってきた。
67 歳で自分が HSP と 気づき、2009 年から敏感な人のためのセラピー、カウンセリング、グループ、ワークショップなどを行ってきた。
そして、2011 年 1 月、HSP 協会の再編成にかかわり、2012 年から HSP 協会の役員を務めている。 サポートする中で、「何らかの理由で食事をとりたがらない人」に何らかの敏感さがあることを知り、アーロン博士 の本を読み、理論がその人たちに役立つと思い HSP にかかわり始めた。そして、2013 年に「食べることと敏感 さ」に関して書籍を出した。その後、子どもに関して理論とケースまとめた。それがぶ厚かったので、イントロダクショ ンのように薄くした。4 冊目に若者達のことを記したが、最近ここに関する依頼が増えている。 協会については、HP へのアクセスも多く、増えてきているので続けていきたい。一方で認知度が上がってきたの で、他にフォーカスしたいことに取り組んでいこうと考えている。
今後は、HSP の人達のためになる頃ができるプラットフォームづくりをしていきたい。
Zoom を使って全国的に対話していきたいとも考えている。(これなら日本でもできるのでは?との声あり)
アティナさんが講演や対応で気をつけていること
講演では、HSP のいいところ/強いところから話してはじめる。そして、グループに個人の経験をよく聞く。
<メリット>
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⚫ 深く考えたり、理由を探る。
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⚫ 適当にするのではなく、真面目に物事に取り組む。
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⚫ 感情、感覚が豊かで、音楽や自然、動物とのかかわり、友達との関係などいい気持ちを強く、充実して感
じる。
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⚫ 相手のことが伝わってくるので、親切である。他の人が元気になったりいい気分になることができる。
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⚫ みんなが居やすい環境を作ることができる。
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⚫ 解決策を見つける。
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⚫ 質に敏感。物事がきちんとできていることを感じることができる。 ⇔完璧主義、独裁者
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⚫ 責任を取ってくれる ⇔すべての責任を背負ったり、取ろうとしない。
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⚫ 想像力があり、創り上げることが得意。クリエイティブ ⇔問題を全部想像して心配性になる
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⚫ 倫理的、物事が平等であるか否か、など正義感が強い。 ⇔行き過ぎるとなにもできない。苦しい。
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⚫ 他の人が見えないことが見える。感じないことを感じる。ヒーリングができる人も多い。(Spiritual) (以前は Spiritual な面を一切話さないようにしていたが、最近は話していても問題なくなってきたと感じている。)
※ 行き過ぎないように気を付けて、バランスをとると強みになる。
人はそれぞれ違うので、あえて特別な対応は必要ないと考えている。 ただし、自分に合う仕事を見つけることは大切。それぞれに合う仕事を見つけることが大切。 外向型=News Seeking (新しい物探し、新しい経験)
:デンマークでは、新しい経験をたくさんほしいが処理できずに困る。 “アクセルとブレーキを同時に踏んでいる感じ”と説明。
自分で、これくらいで OK、自分でどうにかするしかない。
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4) 外向型(30%)と内向型について協会としての考えはあるのか
5)質疑応答
-1 Q当事者のバランスのとり方
A:経験ももちろん大事だが、自分で意識して、“あえて”自分でルールを作ることは大切。
ex.「ここまで責任を取る必要はあるか」
「自分がやらなかったらどうなるの? その人は自分でできないの?」
と自問自答する。
-2 Q摂食障害(拒食・過食)との関連
A:好き嫌いではなく、摂食障害は病気に近いもの。感覚に鋭い HSP につながっていることが多い。 触感、味に敏感な点を持ち、他の人が大丈夫でも HSP の人はダメな場合などがある
-3 Q協会の目指すこと、社会のどんな問題が解決すれば、次のステージにいけるか
A:“私“のことばかり考えるのではなく、社会全体が考えていくことが大切。
心で考える。 今いろいろな移行期で、価値観も大きく変わるのではないかと考えており、
正義・平等なども一つ一つ考えていくことが大切。そういったことを、先に感じて考えている HSP がいて、100 年後は変わっていくのではないか、と考えている。
-4 Qみんなと違うことを親は肯定的に受け止め育てているが、社会的にプレッシャーが高い。対応策はあるか
A:不登校児には 1一般的な学校 2私立 3家庭 での教育の選択肢がある。(デンマーク)
自分に合う方法で学びながら次に進む。
成功しているときは、家で学んでいることが多い。
なるべく早い時期・段階からかかわることが重要。(年齢が低い、問題がわかってから早い時期) 「ちょっとだけ変えれば OK」になることも多い。
プログラムを作って、学校と一緒にかかわることが大切。 デンマークには柔軟性があるが、「社会に柔軟性がある」ことが大切。
和、団体主義も大切だが、たまには個人のために、自分のためにがんばる。
ないのなら、ルールを、学校を、社会を、自分達で作る。 日本の社会・文化が現実に目覚める必要がある。 ex.)芸能人、文化人などを起用
-5 Q 他者の気持ちや五感に敏感なだけでなく、自分自身の感情・考えにも敏感な HSP は孤独感を大きく感 じて孤独に押しつぶされそうになることがあるが、孤独との付き合い方など何かアドバイス、ヒントがあれば。
A:まずは、自分が悪い・間違っているわけではないということを意識する、認めること。 ありのままでいいと自分で信じること、人はそれぞれ違うということを意識すること。
そして、自分の信頼できる人に気持ちを話す、伝える。 伝えることで自分の気持ちが明確になることや、フィードバックをもらえて気がつくこともある。 話すことに勇気が必要かもしれないが、きっと大丈夫だと思う。
-6 Q最初にHSPを知った時にどのようなことを伝えていきたいと感じていたか
A:人が、自分で自分に賛成できること。
自分を否定するのではなく、HSP の枠で自分のことを理解し、 今まで判らなかったことが分かるようになればいい。できる/出来ない、得意/不得意がわかった時点 でこれからの人生に進めるようになればいい。 最初のころのワークショップで、自分が人と違うと感じている人との質問に、森のごとく手が上がり、 確信をした。
アティナさんの HP より : ~私は、あらゆる年齢の人々が、彼らにとって自然な最も深いレベルで自分自身になり、 それに基づいて豊かな生活を創造するのを助けたいです。~ (翻訳機による訳文)
3. 西原栄美さんから見た、印象深いこと・言葉、気づき・学び
約2時間の対談を通して、アティナさんの取り組み、デンマークの状況、HSP への理解が深まりました。 お話にはデンマークにおける HSP の先駆者だからこその重みを感じ、ひと言一言に深く納得させられました。
私は対談の間アティナさんの人としての佇まい、在り方、気配、に関してずっと考え、感じとっていました。姿勢も表 情も声もすべてが柔らかく、静かにそこに腰かけていらっしゃる。
身長は高いが大きさや威圧感など全く感じない。ど こまでも堅さのない力の抜けた自然な在りように、包容力や優しさが溢れていました。しかし、質問者の話、通訳 のソーレンさんの話を聞く時のまっすぐなまなざしと、言葉を選びながら誠実にお話をされる姿には、1本の揺るぎ ない軸が通っていることを感じました。
『本物』
最初に浮かんだ言葉は『本物』でした。支援者として、人に寄り添うものとしての在りよう。 どれほどの深い悲しみや苦しみに寄り添ってきたのだろうか。
どれほど心を砕き、頭と身体を使い、クライアントに寄り 添ってきたのだろうか。
話を聞くときのその眼は、こちらを見ているがもっともっと先の深い部分を見つめている感じ。 何をどう取り繕っても、すべて見通されている気持ちになる。
その前に座ると気負いも見栄も外れて、素直な気持 ちになり、話してしまう。ただただ大きくて暖かいものに包まれ、全身の緊張がほぐれていくのを感じる。
きっと、真摯に誠意をもってサポートしているのに、自分にできることを尽くしているのに、何かが足りない、手ごたえ が感じられない。目の前のこの人の力になることができていない感じ。どうしたらこの人に笑顔が浮かぶのだろうか。 今までのやり方、知識ではあともう一歩進めない、何かそんな歯がゆさのようなものを感じていた時に出会ったもの が 「繊細さ」、「HSP」だったのではないだろうか、そのようなことを思いました。
自身が HSP と気づき、「なるほどそういうことだったんだ。」と思ったことが、HSP に取り組む動機の一つであると思 いますが、何よりも支援している人達に次の一歩が見えたことが、一番のモチベーションだったのではないかと思いま す。
HSP が万能薬ではないことはわかっているが、わかりやすく、取り組みやすいツールとして、効果が大きいと実 感したのではないでしょうか。 だからこそ、協会やポジションなどに関係なく、HSP の次のステージを考えられるのだ と思うのです。
しかし、それすらも超えて、ただただ、ひたすらに目の前のこの人に寄り添っているのだと思います。 と、かなり情緒的な感想になっていますが、つたないながらも多様な人生に寄り添ってきた私が、アティナさんを目 の前にして感じたこと。そして、私も支援者としてこのように在りたいと感じたこと、でした。
転載以上
西原栄美さん、詳細なレポートありがとうございました!
11月9日(日)サンクチュアリ出版さんにてデンマーク報告会&ドキュメンタリー映像
『デンマークの幸せを 言葉と体感ワークでシェアする教育視察プログラム〜報告会』
を開催します。
来年もきっとプログラム開催しますので
デンマークに一度は行ってみたいかも!という方
どうぞ楽しみにいらしてくださいね!