【連載】WEB小説 きっびす(11)『ふたつ星』 木佐悠弛 作 | 国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット

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【連載】WEB小説 きっびす(11)
きっびす 木佐悠弛

『ふたつ星』       木佐悠弛


ふたつ星が冬の夜空にポツリと浮かぶ。
すこし小さいほうの星は、はしゃぐように瞬く。
ぼくは三歳になる娘のゆきを肩車しながら、その様子を見上げている。
多摩川の土手で空をふたり占めしているみたいだ。
「もうちょっと、もうちょっとなの」
ゆきは手を高く伸ばしては星をつかもうとしていた。
ゆきの吐く白い息は、ゆきの手よりもずっと高くまでのぼっていく。
先に夜空に届いてしまいそうだ。
気温はとても低いのに、星を見ていると、童心に帰って寒さを忘れられる。
ぼくも子供の頃、七夕の夜に虫とり網で星をつかまえようとしていたらしい。
この子がうまれてから父親に聞かされた。
やっぱり親子なんだな、と思う。
そんなことを考えていると、ゆきは大きな声で言った。
「パパ!」
「どうしたの?」
ぼくも白い息を吐きながらたずねる。
「とったの。おほしさまをとったの」
「えっ?」
驚いたぼくはゆきをそっとおろす。

ちょっと見せて、とすぐに伝えた。
ゆきはパッと手をひらく。
その瞬間、きらりと音が鳴った気がした。
雪の結晶が鮮やかにきらめいている。
手のひらの熱で溶けることなく、たしかに輝きを放っている。
ぼくはまた空を見上げた。
ふたつ星のあたりから、はらはらと雪が舞いはじめていた。
星の結晶が降ってきたのかな、なんて想像してみる。
「帰ろうか」
手をつないで家へと歩きだす。
つかまえた結晶をふたりでとじこめながら。





<作者プロフィール>
木佐悠弛(きさゆうし)
国立市在住
アーティスト、と名乗ってみたい、宇宙の流浪人。
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【連載】きっびす バックナンバー



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