名車列伝、第三回目はもう一度現代に復活して欲しい車、いすゞのFFジェミニをピックアップします。


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↑上:セダン、下:ハッチバック

 写真は初期型で、目元が少し変わる「中期」「最終期」の3世代が生産されました。

 当初は1500ccのガソリンとディーゼルターボの二種類で販売していましたが

 1500ccガソリンにターボを搭載したホットモデル「イルムシャー」や英国ロータスが

 足回りを味付けした1600cc「ハンドリング・バイ・ロータス」という仕様まで作られました



<何故に「FF」がついたのか?>
 いすゞ史上最も売れた乗用車「FFジェミニ」は、かつていすゞと資本提携関係であった米国ゼネラル・モーターズの意向により先代のジェミニが小型車サイズだったものを大衆車サイズ(いすゞには先に小型車として「アスカ(これもGMの世界戦略車)」があったため)にダウンサイジングし発売しました。いすゞはFFジェミニの発売と並行してこれまでのジェミニも発売するために、新型ジェミニを区別させるために、初代を売り切る間「FF」をつけて発売することとなりました。


 これまでの通例なら、元のモデルよりも小さくなった車は売れないとされていましたが、いすゞはFFジェミニのコンセプトを「クオリティ・コンパクト」として、乗る人に必要な機能を磨きこみ、凝縮することで質感の高いコンパクトカーとして、評価が高い車でした。



<今でも色あせないデザイン>
 FFジェミニの完成度の高さを物語るものとして、そのデザインも取り上げ無くてはいけない。小さいけれどヨーロピアン感覚のおしゃれでキビキビとした感じのキャラクタをFFジェミニは表現することに成功している。


 この存在感の高いデザインは、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインの手によるもので、ジウジアーロといすゞの関係は、氏が独立する前のカロッツェリア・ギア時代に手がけた117クーペからで、80年初頭に同社のスポーツクーペ「ピアッツァ」を手がけています。そういえば車のラインなど、FFジェミニのハッチバックにピアッツァの面影が残っているように感じます。



<街の遊撃手>
 FFジェミニが売れた理由に、コマーシャルがあります。


 「街の遊撃手」のコピーでパリの市街地を踊るように走る2台のジェミニ、一糸乱れぬ編隊走行や奇抜なジャンプ、パリの地下鉄駅を駆け抜けるCMを見ている方も多いかもしれません。




↑ジェミニ「街の遊撃手」シリーズのCM各種と、その後発売された3代目ジェミニCM

 「街の遊撃手」シリーズはCG一切なし、ドライバーのテクニックだけであの妙技を

 お茶の間に見せ付けました。


 このCMは007シリーズのスタントなどでも有名な「レミー・ジュリアンアクションチーム」によるもので。早朝パリの市街地を封鎖(撮影するために日光などの関係から)して撮影をする。それだけにラッシュ時に周辺は大渋滞となり、パリ警察が交通整理に全面協力するなど、撮影には苦労が多かったそうです。


 さらには、1986年の正月三が日に放送した「オー・シャンゼリゼ」編では、パリの地下鉄を駆け抜けるジェミニの撮影時には、クルマがどうしても通り抜けられない通路を地下鉄公団の担当者が「現状復帰してもらえるなら壁をぶち抜いても結構です」と言うほどで、これには担当者も仰天したというエピソードがありました。


 そして、この「オー・シャンゼリゼ」編を放送した後に行われたいすゞの初売りで、FFジェミニを見てみたいと過去に無いお客が来店したと、このコマーシャル企画は予想以上の反響を呼び、実に190万台のFFジェミニを世に出し、愛されたわけです。


 その後、モデルチェンジを行い二代目になったFFジェミニ、初代FFよりも売れることなく、後にいすゞは乗用車生産から撤退してしまいます。残念なことですが、このコンパクトカーというパッケージをもう一度見直す必要があるのではないかと思います。


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