kyupinの日記 気が向けば更新

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kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)
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2025-03-20 01:31:53

ジプレキサ筋注製剤を誤って静注するとどのようになるか?

テーマ:ジプレキサ(オランザピン)

 


 

2013年とかなり古いが、ジプレキサの筋注製剤の記事をアップしている。この記事の中で、以下のように記載している。

 

ジプレキサの筋注製剤は昨年12月(2012年12月)に発売されている。上の画像はジプレキサのバイアルを2.1mlの注射用蒸留水で溶かした写真。このようにビタミンのドリンク剤のごとく、黄色の透明の製剤である。注射をする際の抵抗はかなり少なく、すっと入る感じ。それに比べ、ネオペリドール(ハロマンス)などの粘り気のある筋注製剤はかなり重い。実際、ネオペリドールを注射器に引くだけで、注射針の切れが悪くなる。

 

写真のように筋注製剤にしては量が多いことや、文章の中の「注射をする際の抵抗はかなり少なく、すっと入る感じ」と言う表現もあり、筋注するところをうっかり静注してしまわないか懸念していた。

 

そして、もし誤って静注した場合、どのような事態になるのか調べてみたのである。ちょっと古い資料だが、以下のようであった。

 

日本での報告はないが、海外では何例か事故報告があり、静注した場合、41%に有害事象があり、投与量は不明だが、その多くは「頻脈、低血圧、鎮静」であった。死亡例は2例だったとのことである。

 

この筋注製剤を誤って静注した場合、過量投与に近い状況になるようであった。

 

セレネースやトロペロンは筋注、静注いずれもできる上、実際に筋注ないし静注した時の感覚が掴みやすいので、ジプレキサ筋注より使いやすいと言うのがある。激しい興奮状態では連続で筋注ないし静注可能なのも良い。

 

なお、僕はジプレキサ筋注製剤の効果自体は悪くないという評価をしている。

 

たまにジプレキサを筋注しているが、それでも投与機会が少なすぎて、多くのジプレキサ筋注製剤が期限切れしてしまった。

 

と言うわけで、現在、うちの病院ではジプレキサ筋注製剤の在庫がない。必要な時に購入する予定である。

2025-03-16 02:27:44

精神科医の経験年数と技量の話

テーマ:精神科受診マニュアル

 

 

先日の「転院と出戻りの患者さん」という記事を書いている時、いくつかスピンオフ的なテーマがあると思った。

 

記事の中で患者さんがクリニックに転院を希望する話が出てくる。そのクリニックは、僕が入局した同門ではなく、良く知らない精神科医であった。

 

クリニックのホームページを見て驚いたのは、大学卒後、10年目くらいで開業していることであった。今は研修医制度があるので、卒後10年目でも10年間精神科医をしているわけではなく、実質8年目くらいである。精神科は指定医制度があるので、指定医を取らないまま開業することはほぼないと思うので、研修医を取得してほんの2~3年目と推測される。

 

僕は卒後6~7年目には抗うつ剤治療はほぼ治療戦略が完成していたと思う。それはかなりハードな中核病院で新患を毎日2.5人診ていたと言うこともあったし、夜間の救急外来の患者も診ていたこともある。当時はまだSSRIが発売されていなかったが、旧来の抗うつ剤もそれぞれに特性があり、一朝一夕に治療戦略が完成するまではならない。

 

精神科医にストレートに入局し同じ年数経っても、経歴的に5年とか10年くらいの節目で、同じようなスキルがつくとは限らない。それは経歴的なものも影響するからである。例えば、卒後7年目頃、大学院卒の人は10年目でも全然といって良いほど臨床的なスキルがついていなかった。経歴的にスキルが付く場所がなかったからである。

 

僕が10年目の頃、統合失調症も含めかなり治療手法がより完成し、スマートになっていたと思うが、今と比べてどうだったかと言うと、かなり差があると感じる。それは当時は、今より薬が切れてなかったからである。つまり当時はリスパダールさえ発売されてなかったが、今より治療に抗精神病薬の用量を要していた。

 

また、抗精神病薬、抗うつ剤、気分安定化薬、ベンゾジアゼピンの併用のような複雑な処方を変更する際に、ある薬を増減した時の病態変化イメージが、今ほどはできなかった。これは必ずしも正しくイメージできるわけではないが、これができると、どの薬がより重要で、どの薬にはさほど意味がないかわかるため処方がスリムにできる。良くない薬が効率的に中止できるからである。

 

出戻った患者さんを診ていた精神科医はまだクリニックを開業したばかりで、つまり11年目か12年目くらいの技量だったので、あのように難しい患者さんが悪化した際に、治療が迷宮に入るのもやむを得ない。彼が紹介状で「力不足ですいません」と言うのも本心だったったような気がする。

 

さて、では何十年も経験がある精神科医の技量が若い精神科医よりいつも上回るかと言うと決してそうではない。ある一定の年数、例えば25年目くらいで凄く治療が上手くなるかと言うと、そうではないのである。

 

どこの精神科病院に行けばよいかという質問に、結局は病院ではなく、どの医師かであると答えている。どの病院も複数人の精神科医がおり、全ての精神科医が優れているなんてありえないと思うからである。

 

過去ログに以下のような記事がある。この記事は2008年の記事で、紹介してきた心療内科クリニックの医師の僕より15年以上先輩であった。これくらい離れると、同門会に来ない医師だと顔もわからない。

 

 
この記事を見ると、精神科医は年齢を重ねて線形に技量が上がるわけではないことがわかる。
 
今でも、リエゾンで入院患者さんでたまに凄い向精神薬処方を診るので、年寄り精神科医が古臭いとんでもない処方で治療していることも現実にはあるのである。また、凄い処方の処方主は精神科医でしかありえないことも重要だと思う。
 
少ない経験年数で開業する精神科医は、その後、誰からも誤った手法を指摘されないことがある。また、同じ病院内の入院患者の良い経過と、その処方内容の変遷を見る機会がないのも大きい。つまり経験値が上がりにくい。
 
また、心療内科で開業する精神科医は、精神科病院に適応できなかったために開業せざるを得なかった人も一定の割合でいる。
 
この適応できなかった理由も様々で、中核病院で上司が期待するほど論文が書けなかったなど高いレベルの理由のこともあるが、人間関係のストレスの弱さや、コミュニケーション能力が低いなど、病院組織に馴染めなかった医師もいるのである。
 
つまり言い方を替えれば、落ちこぼれである。
 
今は、全く昔にはいなかったタイプ、野心的な理由で早い開業をする人もいそうである。つまり直美の亜型である。
 
 
ただし、ひとこと書いておくが、指定医取得直後に心療内科を開業することは、直美より遥かにマシである。比べることも失礼な話である。
 
精神科医が将来的に上手くなるかどうかは、経歴的なものが大いに関係しており、それが少ない精神科医が心療内科クリニックを開業して、更に上積みできるかはかなり微妙だと思う。
 
しかし長年精神科医をしている人が、必ずしも上手いとは限らないということも、謎な話である。
 
ベテラン精神科医に下手な人は十分に存在する。
 
参考
 
 
 
 
 
 

 

2025-03-12 11:36:56

アモキサン、遂に販売終了

テーマ:アモキサン

 

 

2025年2月にファイザーからアモキサン販売終了がアナウンスされた。アモキサン販売休止については過去に2つ記事をアップしている。

 

最初の記事は、アモキサンにニトロソアミン化合物が混入していたことにより、アモキサンの販売が休止される話。以下はその記事である。

 

 

上記記事から抜粋。

 

ファイザーは2022年8月、アモキサンカプセル及び細粒に発癌リスクのあるニトロソアミン化合物が検出されたことを受け、他の抗うつ剤への切り替えを要請している。この対象となる薬物は、アモキサンカプセル(10㎎、25㎎、50㎎)及び同細粒の10%である。

 

https://www.pmda.go.jp/files/000248054.pdf

 

ファイザーによれば、このニトロソアミン検出の原因はアモキサンと添加物による反応と言う。しかしながら、急激な中止は精神症状不安定や離脱症状を来すため、しばらく出荷を継続するらしい。しかし2023年2月から自主回収が開始され、それまでにアモキサンを他の抗うつ剤に変更しなくてはならない。猶予期間は約6カ月である。ニトロソアミンについてはアモキサンに限らず薬物に混入していることがあるため、数年前からいくつかの処方薬が自主回収になっている。

 

この記事の中で以下のように今後、販売が中止になるのでは?と記載している。

 

最も懸念される問題は、フィイザーがアモキサンをいったん自主回収した後、果たして再発売するのか?であろう。

 

今回のように化合物と添加物との反応で有害物質が生じた場合、他の異なる製造ラインで生産し再発売することは、現在、アモキサンがあまり処方されていないことや薬価が安いことなどから利益的に見合わない。

 

 

これはアモキサンから他の抗うつ剤に変更した時の顛末記である。

 

予想していたとしても、このアナウンスは悲しすぎる。今、僕の患者さんにアモキサンの再発売を待っていた人はいないが、難治性うつ病の患者さんを治療している時、

 

こういう時に「アモキサンがあれば展開も変わっていただろうに」と思うことはある。

 

なぜなら難治性のうつ病を治療する際、選択肢としてアモキサンの順番は早いからである。アモキサンはパワー型の抗うつ剤ということも大きい。

 

つまり、最近のうつ病の患者さんの治療選択肢を狭くしているのである。

 

最初のアナウンスのパンフには面白いことに、代替薬として、アナフラニールとトフラニールを挙げている。「古い3環系抗うつ剤でも出しておけ!」という意味だと思う。

 

アモキサンとアナフラニール、トフラニールは似ていないし、効き方もかなり違う。ひとつ言えるのは、アモキサンの方が内服薬として、この2剤よりはるかに服用しやすいこと。専門性のカケラもない無責任な推奨だと思った。

 

ファイザーは新型コロナワクチンで莫大な利益が出ているはずで、アモキサンくらい赤字でも慈善事業として再発売してもバチは当たらないのに、と内心思っている。

 

やはり外資系は商業的過ぎるところがある。なぜなら、赤字でも製造するという企業行動が、資本主義に反していて、まずくするとCEOが更迭されかねないからである。

 

 

2025-03-08 14:18:14

避妊手術を受けたばかりのネコ

テーマ:動物(旅行以外)

 

この辺りのノラネコは、ネコおばさん達に避妊手術を受けさせられる。大抵、半年を過ぎたくらいで犬猫病院に連れていかれる。最近、春分の日が近づき朝夕が明るくなって来て、ネコたちも明るく撮れるようになった。

 

 

このネコは左耳がカットされているのでメス猫である。不思議なのは仔猫たちの親猫がいつも見当たらないこと。少なくとも親猫と一緒にいるのを見ることがない。ネコおばさんによると、親の雄ネコはミャーらしいが、出産したメスネコはよくわからないらしい。

 

 

ミャーはぶちなのだが、仔猫は3匹いて、ぶちは1匹だけ。あまりにも野良猫が多過ぎて、仔猫の模様だけで親猫が特定できない。

 

 

このネコ、もう少し小さい時は、なんとなく人を避ける風もあったが、今はしっかり地域猫している。よく見ると、このネコは上のネコの姉妹だった。お口の周りの模様が違う。ちょっと豹柄っぽいし。

 

 

サクラ耳カットだが、深爪というか、あまりにも深くカットされているネコもいる。このネコのカットはそこそこである。

 

親猫のミャーだが、3匹も子供を作り、間髪を入れずネコおばさんに避妊手術に連れていかれた。そもそも、この辺りはサクラ耳カットされていないネコの方が稀で、ネコおばさん達は良い仕事していると思う。

 

ミャーは避妊手術を受けたあと、性格が穏やかになったそうである。

 

しかし、避妊手術が遅過ぎたのは間違いなく、この辺りのネコにはミャーの子孫が相当にいるはずである。

 

2025-03-05 14:16:24

転院と出戻りの患者さん

テーマ:内因性の正体

僕はわりあい患者さんの要請に応じるタイプの精神科医で、例えば、「○○という薬を処方してほしい」と希望した際に、強く拒絶することは滅多にない。ただ、その薬を服薬した際の見通しは助言することが多い。

 

例えば「貴方は忍容性が低いのでその薬を服用し続けることは難しいでしょう」といった感じである。なお、患者さんは「忍容性」なる用語は知らないので、わかりやすく「貴方は副作用に弱いので変更しても継続するのは厳しい」くらいに言う。それでも服用したいというものを強く禁ずることは稀でとりあえず処方することが多い。

 

それどころか、患者さん本人が全ての処方薬を決めてほしいくらいである。

 

これも統合失調症や双極性障害などの内因性疾患の場合は話は別である。長期的に安定している処方を変更し、増悪することそのものが予後を悪化させるため、処方は変えない方が良いと助言する。

 

異なるタイプの非定型抗精神病薬や定型抗精神病薬への変更であれば、その方が良いケースもあり得るので変更するケースが増える。一度、体験してもらった方が、今後良いことも多いからである。

 

ただし、慢性期の統合失調症の患者さんは自分の処方に関して無関心なことが多く、薬について言及することは少ない。

 

真に病識がない統合失調症の入院患者さんは、人にもよるが「自分は統合失調症ではないので薬を止めてほしい」などと言う。なぜ、本人の薬が統合失調症に対する薬がわかるかと言うと、スマホで調べるからである。結局、本人が統合失調症でないと思っている以上、本人から他の抗精神病薬への変更を希望することはない。

 

薬の変更を希望する人々は統合失調症の人は相対的に少なく、神経症やASDやADHDの人たちが多くなる。ここで変更を容認することが多いと書いたが、コンサータなどの特別な向精神薬はまた別である。

 

なぜ今日の記事でこのようなことを記載したかと言うと、患者さんによれば、精神科医には処方変更に全く応じない医師もいるという話だからである。そのようなことを聴くと、僕はかなり柔軟な対応をしている方だと感じた。

 

転院に関してもそうである。患者さんから、「友人が○○クリニックに行って良くなったから転院したい」という希望をされる。このような際、どこに行っても変わらないような人は意外に少なく、転院しても悪い結果しか起こりそうにない人が、そのように希望することが多い。これは悲しいことである。

 

しかし、これもほぼ応じる。ただし意見は言う。例えば、「貴方は入院歴が多いので、クリニックでは悪化した際、どこに入院するかなど面倒なことになるので、転院するなら単科精神科病院が良いでしょう」などである。本人は噂だけでそのクリニックに惚れ込んでいる様子なので、その助言は受け入れられない。

 

あと「これは良くないと思ったら戻って来て良い」とも伝える。僕は本人の希望で転院する時、出戻りは問題ないのである。これだと患者さんも転院しやすい。

 

このような経過で、何度も出戻りした患者さんがいる。僕の診たてでは、最高に良い経過にいると思うが、何か本人に不満な点が残っていて、友人の誘いで転院してみようかと思うのであろう。

 

僕は既に25年くらい院長をしているので、転院したクリニックの医師が僕より臨床経験が多いということはまずない。また経験だけでなく、技量的な面でも上回ることはほぼないと思われる。

 

従って、時間が経ち、即座に入院すべき病態で戻ってくる。

 

この時の紹介状の文面に、「力不足ですみません」などとクリニック医師が記載しているので、おそらくこちらの技量がわかっているのでは?と思ったりする。なぜ、その医師がそう思うかと言えば、僕の紹介状の内容から推し量れるのだと思う。過去ログに神田橋先生からほめられた話が出てくる。

 

 
クリニックの紹介状の経過をみると、悪くなりそうな場面で、適切な対処ができていないと感じる。この薬だけは中止すべきではないとか、この薬からこの薬に変更してもうまくいくわけがないといった変更があるからである。
 
そのような経過をとった患者さんが、時間が経ち、再び他のクリニックに転院を希望することは不思議なことだ。そして、再入院で戻ってくる(この繰り返し)。その患者さんは非定型精神病で、頑固で言い出したら他の人の助言を聴かないタイプの性格なのである。
 
入院中の転院も家族や本人の希望があれば受け入れる。一般に入院中で、しばしば隔離されるレベルの患者さんは転院そのものが困難だし、受ける方も嫌がることが多い。しかし、うちの病院では選択できない治療法が可能なら、転院して治療するだけの価値がある。例えば、クロザリルによる治療である。詳細な病歴を記載し、「なんとかご配慮お願いします」くらいに書くと受けてくれることが多い。
 
僕は、その患者さんが良くなるのであれば、どこで治療しても問題ないというスタンスなのである。
 
 

 

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