精神疾患と生命保険について(その1) | kyupinの日記 気が向けば更新

精神疾患と生命保険について(その1)

精神疾患のため入院をした場合、入院期間に応じて1日あたりいくらという感じで保険金がおりる。これは当然のことなのであるが、ずっと以前はそうではなかった。1985~1986年頃は、生命保険で支払われる病名で精神疾患は除外疾患になっていた。当時ようやく、疾患対象によっては支払われるようになっていたような状況で、例えば「うつ病」だと支払われないが、「抑うつ神経症」なら支払われていたような記憶がある。


支払われない理由だが生命保険の言い分は、「精神疾患は遺伝病だから」ぐらいだったと思う。つまり、その素因を持たない人に比べ、元から素因を持つ人に支払うのは公平を欠くという見解だった。かなり変な理由ではあった。なぜならその当時既に、すべての病気は遺伝子に由来するという考えが浸透し始めていたからだ。上で、抑うつ神経症なら支払われるが、うつ病ならダメという考え方も、統合失調症とうつ病は内因性精神病であり、それに比べ抑うつ神経症は環境や後天的な要素が大きいと判断されたからあろう。


その後日本にバブル期が訪れ(1986~1990年)、土地、株などの値上がりで生命保険会社が大変儲かった時期がある。含み資産が膨大になり、生命保険会社の経営はかなり余裕があった。当時、日本精神病院協会などが生命保険会社に働きかけて、精神疾患でも保険金が受けられるようにしてもらったという。(という話。細かいところは自信なし) その後、デフレなど予想もしないような経済的苦境に日本経済は陥ったので、本当に良い時期にルールを変更してもらったと言えた。生命保険会社がいくつか潰れるような不況が長期間に続いたから。


生命保険会社が精神疾患に対し保険を支払い始めてからも、規定があって支払われない疾患があった。それは、覚醒剤、麻薬による後遺障害などの精神疾患と、アルコール依存症である。これは、明らかに本人の落ち度があると考えられる疾患であり、麻薬・覚醒剤にかかわるものは現在でも支払われない。これは当然といえる。しかし、アルコール依存症は比較的長く例外になっていたが次第に考え方が変わり、近年では支払われるようになっているらしい。(実は当院はアルコール依存症は扱わない方針で、そんな人が入院することがなく、僕はアルコール依存症の生命保険金診断書を書いたことがないのだ)


支払われない理由の本人の落ち度だが、アルコール依存症の場合、一概に本人の落ち度のみといえない面がある。まあ、ある程度、依存症の要素があるにしても、アルコール依存症の人はうつ状態などをしばしば合併しているので、それをメインに書けば診断書としては良いような気がする。紆余曲折を経て、統合失調症とうつ病の2大疾患は保険金を受けられるようになったのである。