楽譜が好きだ。ここに音楽が詰まっている。解読すればあの音楽が、自分の指で再現できる。

小学校にあがった頃のことだ。レコードが擦り切れるほど繰り返し聴いた、大好きだったドビュッシーの1小節目を、レコード台の下に並んでいた古い譜面群の中から探し出し、教室で教わった通りに譜読みをし、その通りに弾いたら月の光がピアノから放たれた。驚いた。

もちろん全然上手には弾けない。でも練習すれば必ず弾けるようになる。そう信じられていたし、今も信じているのは先生のおかげだろう。

初めてその曲の譜面を追う時、月光が放たれたあの感動が、毎回蘇る。譜面を目にする。早く弾きたい。でも最初の音を抑えるのがもったいないような。このワクワクをどう表現すれば良いのか。

今はどんな曲でも安易に楽譜がダウンロードできるようになった。耳コピーやコード譜にも慣れた。和音の勉強もし、譜面がないと弾けない、という落とし穴も、一生を捧げるつもりで乗り越え中である。
しかし大切に製本され綴じられたぶ厚い楽譜は、禁断の魔法の書であるかのように大切に抱えてしまう。特に何百年も受け継がれてきたクラシック音楽は古文書のようなものだ。おかげさまで私にとっては、日本のそれよりは早く読める書物だ。

久しぶりに開けて改めて感じる、ドビュッシーの譜面は本当に美しいなぁ。

{11F5DD9F-C449-4C87-9D1B-EC0667A1606C}