まいすけ塾のワンシーン | ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

成長するまでに封印したキャラをやりたいことに合わせてごっこ遊びで開放するキャラメイキングのお手伝い
漫画好き

まいすけ塾は、2人以上で、
自己解放ワークをやっています。
その1シーンを小説にしました。


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●言葉と会話●

黄色いぬいぐるみを渡され、
ペアになってくださいと指示された。

マンションの一室、隠れ家のような
コワーキングスペース「ぴこす」の中、
椅子と机を端に寄せた空間は、
何かの施設というより、
友達の家にいるような感覚になる。

私は、戸惑いながら、相手と向き合った。

「『助けて』という言葉を
言いながら、ぬいぐるみを
渡すことを交互にやってください。
気持ちをぬいぐるみに込めてくださいね」

相手は、30代ぐらいの女性で、
今日初めて会った知らない人だ。

私は「気持ちを込める」が分らないまま
「助けて」と言ってみたが、
何かスカスカしたような
間の抜けた声になった。

―こんなことして
何の意味があるんだろう。

そんな考えがよぎったが、
「言うこと」と「渡すこと」で
せいいっぱいで、
その気持ちを感じる暇がない。

「助けて」という言葉と一緒に
ぬいぐるみを相手の手に渡した。

相手の女性は、
大きな目で微笑んでくれた。

「いいんだよ」とその目は
言ってくれていて、
ああ、やさしいな、と思った。

その途端、なぜか心が少し軽くなった。
「助けて」が返ってくる。
私も心で「いいよ」と思わず答えていた。


何度も繰り返すと、二人の間の空気が
変わっていた。
「助けて」が許される世界。


「助けて」なんて、口に出してはいけない言葉のはずなのに、

限界が来るまで自分でやるべき、
と思って生きてきたのに、

簡単に口に出してみただけで、
こんなに心が喜ぶのか、と思った。


指示通り、
「うれしい」
「かなしい」
「うっとうしい」
いろんな言葉を回転させると、
錆びついていた私の心は、
上がったり下がったり、
いそがしく駆け回る。

終わると、テンションが上がった自分が残った。


「これが、会話の基礎なんですよ。
会話っていうのは本来
楽しいものなんです」


これが、会話だというなら、
今まで私がしてきたものは何だったのか…
周りの空気を読み、
自分の立場を守るため言葉を選び続ける。
そんな会話しか知らなかった。

「いままで感じたことのない気持ちを
持って帰ってください。
これが、世界が変わるってことです。
あなたの頭に、新しいものが
生まれた瞬間です」

教室が終了し、
心の壁が少し崩れて、
無邪気になった自分が、
ひさしぶりに私を支配していく。


慣れない感情の起伏が落ち着くと、
ひどく眠くなってきた。
心地よい疲れが襲ってくる。

電車の揺れが心地よく私の体を揺らす。

もう少し、楽に生きれるかもしれない。
もっと世界は単純で、
もっと世界はやさしいのかもしれない。

窓から差し込む夕日が、
私をやさしく包みこんでいた。



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