社会学者の上野千鶴子(うえの・ちづこ)さんの言葉。


「人はなぜ不倫をしないのかのほうが不思議です。その前段階として、人はなぜ結婚という守れない約束をするのか、がもっと不思議」


上野さんは結婚を「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって唯一人の異性に譲渡する契約のこと」と定義しています。

つまり結婚とは、生涯ひとりの人としかセックスしませんという約束のことです。どうして人はそんなできもしない約束をするのか。

結婚しなければ不倫は成立しません。なぜ性関係の相手はひとりでなくてはいけないのか、に根本的な疑問を持つ上野さんは、一生ひとりの人を愛し、他には目もくれないという約束=結婚を、なぜ人がしてしまうのかが不思議で仕方ないのです。

「恋愛体質の人は結婚したって恋愛しますよ。なぜ結婚したあとで恋愛しないですんでいるのかがわからない」


上野さんはフェミニズムについてこう語ります。

「私はフェミニズムが男との平等を求める思想である以上に、自由を求める思想だと思っています。平等より、私は自由がほしかった。性的な身体の自由はとりわけ重要なものだと思っています。それを結婚によって手放すなんて、考えただけで恐ろしいくらいです」


結婚という契約をしたからといって、人を好きになる感情を抑えることはできません。感情に鎖はつけられないのです。良し悪しの問題ではありません。

不倫はするなというよりも、「守れない約束」はしないほうがいい、ということですね。


(上野千鶴子さんの発言は、亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』SB新書より)