アラビックパーツの読解へのサビアンシンボルの応用(1) PoFを例として | すずきふみよしの「星の音を聴く」

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読むこととはすなわち聴くこと。耳を傾けること。
ホロスコープから「聴いた」ものを、そして感じとったものを、日々丹念に言葉にしていきます。

アラビックパーツと呼ばれる感受点の一群がある。
占星術の起源はバビロニア文明にあるとされるのが定説だが、そのころに用いられていた占星術上の計算から導かれるポイントで、実際に存在する天体ではない。後年西洋で占星術が発展するに伴ってこれらがとり入れられたと解釈されている。

そのアラビックパーツの代表的なものとしてパート・オブ・フォーチューン(PoF)がある。
PoFは現実的な富とその増大する方向を示し、とくに富の贈与のありかを示すとされている。

上述のとおり、実際に存在する天体ではなく計算から導き出されるものだが、その方法は
月+アセンダント-太陽
である。

いったいこれがなぜ富の方向を示すとされているのか。
3つの感受点それぞれの象意を振り返ってみる。
月は最も幼い自分である。個人の人格の基礎となる部分を示している。
アセンダントとは個人が最初に獲得するペルソナである。
太陽は個人がみずから主体的に生きようとした際に自覚すべき〈自己〉である。

PoFの計算式にこれを代入してみれば、
人格の基礎+最初に獲得するペルソナ-主体性をもった〈自己〉
これが富の方向を示すということになる。

成長の過程において他者との関わりをもっていくなかで、資質にペルソナがつけ加えられたのちに、社会性を帯びた公的な自己が形成されていく。
そこから公的な自己を捨て去っていくということ。
いったん便宜的に解釈すれば、そこに富の方向が示されているということになる。
占星術上のラッキーポイントというよりは、かなり自覚的に使わなければ意識できない点なのかも知れないようにおもえる。

天体や感受点の象意という実にぼんやりとしたものを計算式のなかに落とし込んで解釈するというのは、相当に高度なイメージの産出が必要とされる営みである。
こういう場合に、サビアン占星術は大変有効なツールとなり得る。

筆者の例をケーススタディ的にとりあげてみよう。

月:フェイズ29(牡羊29度)天球の音楽
 キーノート「宇宙の秩序に同調すること」
 全体における個の位置の確認。可能性の領域にどのような調和の原則が働いているのかを知る度数。内面の声を聴き周囲の相互作用に耳を傾け、全体のなかでの個の位置を見い出す能力を示す。
アセンダント:フェイズ136(獅子16度)嵐は止み、万物は輝かしい陽の光のなかで歓喜する
 キーノート「重大な危機ののちの生命と愛の急激な高まり」
 解放の喜びと放出への期待。新たなはじまりの喜びと力を実感する度数。
太陽:フェイズ57(牡牛27度)通行人に部族の工芸品を売る年老いたインディアンの女
 キーノート「集団の要求に対する平和的な適応」
 自身をはかない存在と見なすこと。自分を育んだ文化的な背景に内面の充実と精神の安寧を見い出す度数。

まずは月、アセンダント、太陽、それぞれの象意にそれぞれのサビアンシンボルの象意を加味して、パーソナリティを解釈し把握していただきたい。

そしてフェイズ29+136-57=108 これがPoFの位置である。

PoF:フェイズ108(蟹18度)雛の餌を探して土をほじっている雌鶏
 キーノート「奉仕活動を維持するために必要な日々の滋養への実践的な関与」
 安定化と定住に伴う責任。自分の居場所をつくるように周囲の環境を変えて固めていく度数。

ここであらためて〈計算〉である。
上記で把握した月とアセンダントの意味あいから太陽のそれを〈引いてみる〉わけだ。
それがPoFの意味あいにつながっているということ。想像力をじゅうぶんに働かせて、イメージの連関を読みとって欲しい。
もちろん筆者のことをよくご存知の方々は、イメージの補完のうえで個人的な印象を付加していくのも大いに歓迎するところだ。
リーディングの技術向上の一助となれば幸いである。