愛怨峡 | 品田誠ブログ

品田誠ブログ

1992年3月2日生まれ
俳優やってます。
品田誠

ずっと見たかった映画が配信サイトで配信されているのを見つけた。

色んなお店のレンタルDVDを探しても見つからなかった記憶が蘇り、「こんなに簡単に見れてよいのか」と一瞬戸惑う。
その頃はどんな作品か知りたくて、原案になっているというトルストイの『復活』を読み、どう映画にしたのかと想像を膨らませていたり。

そうして念願叶って見ることが出来た『愛怨峡』(溝口健二監督,1937)。

その膨らんでいた期待を超えてくる力強さに、久しぶりに映画についてのブログを書かされている。

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溝口健二監督の映画はどうしてこうも力強いのだろう。

「あんたみたいなおぼっちゃんにはわからない、苦労したものにしかわからない情けがあるのよ」

現実は時に様々なものを覆い隠し、仮の姿を提示してみせる。
「これが賢くて正しい選択だよ」とばかりに、真実の皮を被って。

だけどその下にあるものには、本当に深く根を張って存在しているものには、苦労して自ら手を伸ばすことでしか触れようがないのだと思う。

見て元気が湧いてくる映画は、ひょっとしたらそういうところに苦労して触れようとしている映画なのかもしれない。

自分もそういう表現を一つでも積み重ねていけたらいいな、と考える。
隙を見せたら厳しく覆い被さってくる現実、目先のことで精一杯になりそうな。
その奥にある魂に触れられる表現を。

『愛怨峡』のフィルムはかなり傷んでノイズだらけ、見づらいところもあったけれど、苦労して残ってくれた映画なんだな、こうして自分のところまで残ってくれたんだな、とその痛みすら味わいに感じる。

「グッドじゃだめだ、観客はエクセレントが見たいんだよ!」と昔演技の師の一人に言われた言葉を思い出す。

製作者、俳優のみなさん。
未曾有の大変な時期、苦労されてることかと思います。
耐え忍んで、今の人も、何十年後かの未来の誰かも心動かされ、明日を夢見れる作品をきっと作れますよう。
志を共にしていつかご一緒できる日が来ますことを。

やれることがたくさんある。まだまだ果てしなく。

まずは自分の心を動かすところから。
苦労して時間をかけて、精進していきたい。