雑賀克郎さん | 品田誠ブログ

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1992年3月2日生まれ
俳優やってます。
品田誠

オムニバス映画『THEATERS』の一篇、中村公彦監督「シネマコンプレックス」で共演した、主演の雑賀克郎さんが亡くなったとSNSで知った。49歳。

最初にそのことを示す投稿を読んでから数日間、真偽がわからず確かめるのが億劫で、悪い冗談であってくれという気持ちでいたけれど、残念ながら事実のようで、雑賀さんという俳優がいたことを何か残さなくてはという気がしてこのブログを書くに至る。

最初に会った日、確か沖正人さんとの飲みの席だったように思う。
その帰り、雑賀さんと同じ電車を待ちながらホームで色々なことを話した。
当時の僕は20代の前半、2周り近く歳の離れた僕に一切侮るような態度がなく、よく聞いて、時間をかけて会話のキャッチボールを返してくれた。
饒舌になにかを語るというより、酔いもある中、懸命に言葉を選ぶように。
雑賀さんの人柄が滲み出ていて印象的だった。

数年を経て、「シネマコンプレックス」で共演することになった。
主演が雑賀さんだった。映画を愛し、映画を守ろうとする過激な主人公の男。

久しぶりに会う、それも現場で。
以前と同じような柔らかい雰囲気は感じつつも、別人と会ってるようにも思った。ちょっと恐さを感じたというか。

そうだ、現場での雑賀さんは本気だった。
対峙した時の圧が忘れられない。
もしかしたら雑賀さんの中に秘めている感情は、雑賀さんが言葉にしていない生のものは、これだけ熱くて激しいものなのかもな、とその時思った。

僕がもし雑賀さんだったら、なんとかこの映画を見て欲しいと願うだろうと思う。
そのぐらい強烈に雑賀さんの魂が刻まれてる映画だったから。

なんだかこう書くと出演作の宣伝みたいになってないかと一瞬気が引けてくるも、雑賀さんの最後のSNSの投稿はこの『THEATERS』の宣伝だった。

雑賀さんはもう主演張った映画の宣伝をどれだけしたくてもできないんだな。
宣伝するのが供養じゃないかと思い直す。
あの強烈なエネルギーが観客にどう届くか、見届けたかっただろうな。

今強烈に「シネマコンプレックス」が見たい。
見てもらいたい。
今年、公開予定です。
(写真は中村公彦監督の投稿から拝借)

人として俳優として、見せてくれた背中を忘れません。
雑賀さん、どうか安らかにお眠りください。