元常務秘書が何も考えずに

旅するミュージカル劇団に

入ってしまったあの頃…の話。








制作部、公演班、

劇団員合わせて
だいたい100人くらいいた頃…

この先三年間日本中を巡演していく
新作ミュージカルの配役発表。


その場にいた100人くらい全員が
内心



「…え…‼️❓…マジで⁉️
マジで⁉️…えーー!
これで行くか?⁉️新作⁉️」


「まず。こいつで大丈夫なのか⁉️」

「日本中でまわしていけるような
作品にするには装子ではダメだろう」


「まず、こいつ、やれるのか⁉️…
〇〇がやったの方がいいんじゃないか⁉️」


「え⁉️なんでこの役、
△△△じゃないの⁉️」


「この役は◇◇◇が
やるべきだろうよ‼️」


「この役のキャラクターは
◆◆◆ちゃんにピッタリ。
なんで装子なんだ?!」


「あー…また、はじまったよ、
作演出家のよくわからない
ワンマン判断…!」



などなど
思ったに違いない。


実際
後に作曲担当のテラさんには

「オレはそーこよりも
〇〇〇がやった方がいいと思ったよ‼️
これは〇〇〇のキャラクターの
役だ、ってオレは正直反対だった」



と言われた。




そんな悪い意味での
衝撃の配役発表と本読みが終わり。


休憩になった時


一階事務所から
地下稽古場に内線電話があり

外線だと呼ばれた。


電話に出ると


母が泣きじゃくっていた。

「ノブが…ノブが…」




…弟の名前を言っている。



「ノブが…、冬休みから
あの後もずっと熱が下がらなくて…
今日、年明けだからって
国立病院に連れて行ったら…
その場でバターン!!と倒れて
意識不明になって…
そのまま
集中治療室に入って…

ヘルペスウィルスが
脊髄から脳に入ったらしくて
このまま意識が戻らず
死んじゃう可能性は約7割、
仮に意識が戻っても
植物人間になる可能性が
高いって…」






……


呆然と電話を切った後、

「弟が死んじゃう!
弟が!弟が死んじゃう!
弟が死んじゃう!」


コンクリートむき出しの階段に
泣き崩れたような…
気がする…


…そのアタマの上で

さっきまで本読みをしてた
女優であり作演出家の片腕でもある
No.2のAさんが

「ダメよ。
大阪なんかには
帰れないわよ。
だってこの子、
主役だもん」

と言ったのが聞こえた。
















四国の海…?

いや、新潟…かな