舞台「MyWay」を応援してくれた

全ての方々に感謝の気持ちを込めて

各キャストを振り返る5人目は

 

ジャズシンガーの道を諦め

芸人の妻として

柏木金三を支える道を選んだ

女性

柏木千穂を演じた

香取佑奈さん

 
 

 
劇中で素敵な芝居と歌を
魅せてくれた佑奈との出逢いは
実はちょっと面白くて
今井雅之さんが
作演出主演の
舞台「ウインズオブゴッド」が
映画版の宣伝の為に復活したのが
2005年で
そこから映画の公開が伸びたので
引き続き2006年も全国ツアーを行い
もうウインズはやらないと
2007年はフジテレビと組んで
「産隆大學應援團」の舞台ツアーを行いました。
今井さん産隆好きやったんで
ずっとやるつもりでしたが
色々な権利やなんやらの関係があって
2008年に今一度ウインズを復活させると。
これはリスさん(松本匠)も
豊さん(田中豊)も
吃驚したんとちゃうかな。
全国ツアーの劇場押さえたり
準備は公演の一年以上前から
進めてるので
急に演目変わったからって
キャンセルできない大人の事情もあり
またメンバーを再集結してやったんですが
2009年はもう自分ではやらず
演出だけしてこの戯曲を
若い世代にちゃんと伝えていきたいと。
それでオーディションを開催し
そこで宮下千穂役を
勝ち取ったのが
香取佑奈でした。
 
 
 
今井組の特徴なんですが
同じ演目を長年やってても
その時その時の座組の強い絆は
他の年とはお互い比べる事が
出来ない独特の輪が出来上がります。
 
それは僕もそうで
2006年の映画THE WINDS OF GOD
2007年の産隆大學應援團
2012年2013年の
其々のウインズオブゴッド
(やっぱウインズはキンタ役が変わると雰囲気も色も変わります)
2014年の手をつないでかえろうよ
そして
2015年最後のウインズオブゴッド
 
それぞれ数名メンバーが被ってても
違う独特の輪があって
そこには他の年の人が中々入れない
不思議な関係性が出来上がります。
(演出主演の今井さんは全く変わらないのに不思議ですね)
 
なので今井さんの誕生日等で
色々な年代の座組が集まると
そりゃ大盛り上がりなんですが
年代が遡っていく程
強烈な灰汁の強さと言いますか(笑)
2009年仙川ウインズのメンバーは
僕らの強烈でズカズカと
土足で入り込んでくる恐い先輩たちは
ほんま迷惑やし嫌やったと思います(笑)
 
 
 
面白い話が
今井さんの呼び方でどの年代か
大凡判るのです。
 
今井雅之さんの事を
 
「Masayuki」
と呼ぶのは
奈良橋陽子さんや
川平慈英さん達
今井さんがファミリーと
カテゴリー分けしてた年代。
 
「今井さん」
「アニキ」
舞台から映画へと続く
ウインズオブゴッドの面々。
 アニキと呼ぶ人が多いのは
ミレニアム世代が多いかなと。
宮川大輔さんや44北川さんたちの
世代。
映画で出逢ったメンバーは
「監督」と
今でも呼んでる人もいます。
 
そして今井さんの誕生会の時に
仙川メンバーと初めて一緒になったんですが
 
「パパ」
 
って呼び方聞いて
僕と44北川さんは
思わず呑んでたビールを吹き出し
「パ パ パパって お前らなんじゃい!」
と猛ツッコミ!(笑)
 
そこに
何が悪いんですか?
私たちはこういう輪で
やってますが!
と先輩たちにドンと構えて
自分の仲間を守ろうとした
佑奈が居てました。
 
海賊みたいに騒ぐ僕らに
時折厳しい眼差しを送ってたな(笑)
 
これはというかこの時から
香取佑奈という女優の
信念といいましょうか
後に共演して彼女の
本当の気持ちが
理解できたのですが
兎に角
いま自分が向き合い
ええ芝居を作る為に
切磋琢磨してる仲間に対して
相手が有名だろうが
えらいさんだろうが
先輩だろうが
佑奈にとっては関係ないんですね。
自分が家族だと思ってやってる
仲間に何言うとんねん!って
気持ち。
家族や仲間を自分が盾になってでも
守る!
ってそんな一本気なとこがあるんです。
だから彼女の芝居は
どこか心強くも
温かい気持ちになれるんだなと
それは観たお客さんが一番
感じたんではないでしょうか。
 
 
 
大好きでお世話になった
今井雅之さんが病に倒れ
降板した時の全国ツアーでも
気丈に振舞って宮下千穂を
いつものように演じましたが
最後の沖縄公演直前に
今井さんが旅立たれ
その後僕たちは
沖縄行きの為
葬儀に参列出来ず
今井さんの出棺を
機上からお祈りして
そこからの最終公演。
 
今井さんの代わりに
僕たちを演出してくれた
奈良橋陽子さんが
僕たちがやってる
「裏芝居」
幕が上がった表舞台と同時進行で
自分のシーンの前に
舞台裏で台本はなく
エチュードで
自分の出演シーンに繋がる
芝居を一度行ってから
表に出ていく様を
 
「これをちゃんと記録に残さないと!」と
スタッフに指示して
千秋楽で初めて本編上演中の
舞台裏での裏芝居にカメラが入ったのです。
 
 
 
 
カメラを回したのは
ボランティアで手伝いをしてくれた方だったので
撮影のプロではありませんが
記録として残すならそれでもええかと思ってました。
カメラさんが
「皆さんいつ来るのですか?」と
部屋で待機する僕に訪ねてきましたが
基本はそれぞれ役者にタイミングを
任せていますのでと
お答えしてから
僕は部屋でじっといつきてもいいように
待ってました。
その集中してる姿が
誰も見てないとこでこんな事してるんだと
カメラさんが
圧倒されたそうで(後程聞くと)
カメラずっと回すのですよ。
僕はここは撮らなくてええと言うたんですけど回してはりました。
 
役者が入って来る前
ドアをノックする前に
気配でなんとなく来るのが
分かるので
僕が合図したら回して下さいと
お願いしてる最中に
まさかのバッテリーチェンジ(苦笑)
多分もうそろそろ来るので
早く準備して下さいよと
お願いしてカメラさんが出て行って
すぐでした。
 
僕はあぁ来たな!
間に合わんけどカメラさん
待とうかどうしようかと
考えたすぐ後に
 
「コンコン」
 
ドアをノックする音が。
 
 
 
 
「どうぞ」
と返事をして入ってきた
佑奈の姿に
すぐにカメラの事は忘れ
彼女との最初の面会シーンの
芝居に入りました。
 
出征した許婚福本貴士が
特攻に出撃したが
機体の故障で失敗し
奇跡的に体は無事に帰還した報を受け
深夜汽車に飛び乗って鹿児島まで
やってきた女性
宮下千穂さんがそこにいました。
 
もうこうなったらカメラがあろうがなかろうが
客が居ようが居まいが関係ないですもんね。
 
分隊長から福本少尉は頭を強く打ち
記憶障害がある旨の話を聞きながらも
大戦中は特攻に選ばれるのは
名誉である時代
作戦に失敗し生きて戻ってくる事を
人前で喜ぼうもんなら
非国民とみなされ憲兵に
連れていかれる時代の女性なので
分隊長からその話を聞いても
一切喜ばず
目の奥からじわっと溢れる涙を
ぐっと堪え
最後に「福本君に会って励ましてあげて下さい」と
聞いて
初めて
「ありがとうございます」と
深々とお辞儀をして
分隊長室から去っていく
千穂さんの姿。
 
これを記録に納めないで
どないすんねん!
僕らの芝居に圧倒され
入ってこれなかったカメラさんに
スタンバイしてもらい
佑奈の楽屋まで走っていきました。
 
 
 
佑奈の楽屋の扉をノックし
「佑奈集中してるとこ悪いけどちょっとええかな?」
 
ドアを少し開け
事情を説明し
まだ時間が十分あるので
佑奈の気持ちさえ大丈夫なら
ちゃんとカメラに収めるために
もう一度やろうか?と。
 
佑奈が静かに
そっと涙を浮かべ
 
「あの気持ち何度も作れないから
もういいですよ」
 
わかったとドアを閉めながら
本当に申し訳ない事したなと。
 
そりゃ大好きな今井さんが
亡くなった直後で
気丈に振舞っていても
相当な心の負担の中で
でも最後の舞台を
ちゃんとやり抜こうと
押し通し
堪え忍ぶ
の気持ちで目の前の芝居に
向き合ってるんやもんな。
 
この時に香取佑奈という人は
本当に大切な人を
心から想い
嘘偽りのない気持ちで
真っ直ぐ貫く人なんだなと
感心しました。
 
 
そんな佑奈に
今井さんへのオマージュ作品を
一緒に最後を迎えた
ウインズオブゴッドの30周年に
やりたいのだが
どうだろうか?と声をかけたのが
舞台「My Way」を上演する事を
決めて少ししてからの事。
 
今井組で他にも魅力ある
女優さん沢山居てます。
けどね
あの2015年の香取佑奈の姿を見てるから
この人しかあの役が出来る人は居ないなと。
 
今井さんをモデルにした
漫才師のアニキ役の嫁。
他におるかな?
佑奈以外いないですよね。
 
二つ返事でオファーを受けてくれました。
結果はご覧の通り素晴らしい
熱演でした。
 
2年前の再演の時
佑奈がまたオファーを
受けてくれるなら
是非彼女の武器である
「歌」をステージ上で歌って欲しいと
リスさんに台本の改訂をお願いし
あの歌からのプロポーズの
回想シーンが生まれました。
 
その間佑奈は結婚し
出産した直後。
まだ赤ちゃんの娘を
東京に残しての
大阪公演の芝居は
本当に素晴らしかったが
主宰としては佑奈に
辛い気持ちを持たせたまま
本番をやらせてしまい
照明青木大輔の妻であるので
夫婦揃って
大切な娘から
3泊も引き離してしまって
ほんまに申し訳ない気持ちになりました。
 
自分は独身で子供もいないもんですから
大変やと想像はなんとなくしてましたが
楽屋で子供の写真を見ながら集中する佑奈の姿を見て
また心に負担かける芝居の
環境を作ってしまったなと
終わってから独り反省しました。
 
なので違う役でも出れましたが
去年のマイウェイ続編は
その時の作演出の
中島透さんも全く同じ意見で
オファーしませんでした。
 
今回の再演も
オファーする時に
少し躊躇しました。
成長したとはいえ
まだまだママが恋しい娘ちゃんがいて
東京だけの公演とは言え
芝居の稽古が終盤になり
本番が始まると
ママに会いたくても
会えない時間がどうしてもでき
娘ちゃんに寂しい思いさせてしまう。
 
帰宅が遅くなってしまった時も
娘ちゃんは我慢して
起きてママを待ってたと
ブログで見て
こんな思いまでさせて
ええ作品ができんようなら
Mcompanyなんて
今井さんのオマージュなんて
やるもんやないなと。
 
だけどもね
香取佑奈の柏木千穂は
3度目の再演にして
更に深く分厚く
時に繊細に
進化しパワーアップしてました。
 
素晴らしいお芝居でした。
アンケートもほぼ殆どの方が
千穂さんの歌に感動し
芝居から勇気を頂きましたと。
 
読んで嬉しかったし
改めて柏木千穂は
香取佑奈にしか出来ない役だなと。
 
そりゃあれだけ妥協せず
芝居に対して真剣に挑んでいるんやから
今回こそ舞台袖で
集中する彼女の姿を記録して
決して演劇学校では習う事の出来ない
プロの役者ってこういうことなんだよってのを
後進の役者の為に残しておけば良かったかなと
千秋楽が終わって少し落ち着いてから
撮る事を指示してなかった
自分の詰めの甘さに
少し後悔しました。
 
 
 
今公演が終わって打ち上げで
佑奈と少し話しました。
「My Way」はシリーズ化していくのを
目標にやっていくけど
佑奈は千穂役以外では
考えられないから違う役では
オファーしないです。
だけども香取佑奈は
いつか必ずまた柏木千穂として
My Wayに帰ってきてもらいますと。
 
なのでもう佑奈は年齢云々関係なく
今は子育てに比重の重きをおいても
ずっとこれからも舞台に立ち続けて
欲しい事も伝えました。
何故なら素晴らしい女優だから。
子供が大きくなって
50代になった佑奈の芝居も
観てみたいしその先も。
 
香取佑奈
 
ちゃみのblog

 

 

最後に稽古場での事を。

 

稽古場前に子連れの家族が

遊具で遊んだり虫取りが

出来る公園があって

稽古も最終に向かってきたある日

演出のリスさんから

1stシーンを一度実際の公園の

ベンチでやってみませんかと?

佑奈と顔を見合わせて

「勿論!宜しくお願いします」

と3人で外へ。

炎天下

だけどその時間だけ涼やかな風も吹き

蝉が鳴く中

リスさんに指定されたベンチで

通天閣と新今宮駅、西成警察署の

位置だけ軽く打ち合わせして

佑奈が椅子に座ったとこで

芝居に入りました。

 

舞台で僕が登場するまでの

「間」はこの時の椅子に座る

千穂さんの表情を見て

定まりました。

 

千穂さんが最後去っていくときの

「なんかあったら今雅商店街においで!

けどお金だけはないからなぁ」

までちゃんとやりました。

公園で遊んでる子供がキョトンとして

ずっと観てたな(笑)

 

シーンが終わってリスさんから

「映画の1場面を見てるようで本当に素敵なシーンになりました」

本番この感じでいければ大丈夫と

言った後に

「いやぁ思わず見惚れてしまって

今のカメラ回しとけば良かった」と。

 

今日改めて振り返って思い出しましたが

佑奈はいつも撮影時

タイミング合えへんよな(笑)

 

だからこそじゃないけど

やっぱ香取佑奈の芝居は

生の舞台で観るべきなんだなと。

子育てしながらも

板の上に立ち続ける

舞台女優香取佑奈の芝居を

今後とも応援よろしくお願いします。

 

佑奈のお父さんお母さん

大ちゃんのお父さんお母さん

いつも温かい心からの

サポート本当にありがとうございます。

 

 

 
 
 
さて毎回次は短く簡潔に書きますと
宣言しておいて
毎回長すぎて
全キャスト紹介するのに
何日かかっとんねんって
感じですよね。
今井さんと一緒の時のエピソード
振り返ると
これでもまだ削った方で(笑)
 
もう次は長文書かない!と
毎回アップする前に思うのです。
誤字脱字のチェックも
ちゃんとせんまま
アップして
そこから時間ある時に読み返して
発見したら修正の繰り返しですから。
手間と時間がかかりすぎますねん(涙)
次こそは短く簡潔にと思うのですが・・・
次は妹の紹介なんです。
ちょっと長くなるかもですな(笑)
 
押忍!
 
Mcompany
松本勝